曲の間に小林克也のDJが入って曲がすすんでいくこのアルバムは、実は3作目。1作目が登場したときは、当時の若者たちを虜にしたらしい。
小林克也のDJはなんかアメリカンだし、きっと昔のアメリカのラジオからはこんな感じで流れていたんだろうな。
70年代のカフェで、もしくは家のテラスで椅子に座りながらアメリカのラジオをひとりで聴く感じ。どこかで見たような風景が浮かぶ、そんなアルバムだ。
そのアルバム中から紹介するのは、「さよなら夏の日」。
山下達郎「さよなら夏の日」
「さよなら夏の日
いつまでも忘れないよ
雨に濡れながら
僕等は大人に
なって行くよ」
山下が高校時代の思い出をもとに描いた詩だという。どんなシチュエーションだったのだろう。
夏休みに出会った女の子とひと夏の恋を経験したのだろうか。その恋は実っていなかったような気がする。勝手な思い込みだけど。
誰にでも忘れられない夏の日はきっとある。その気持ちをストレートで表現してくれる詞。
この曲を聴けば、遠い昔の切ない季節が戻ってくる。
明日からの毎日にパワーをくれる人生応援ソングでもある「さよなら夏の日」
「一番素敵な季節が
もうすぐ終わる
「時が止まればいい」」
大人になって何度、夏が過ぎ去っていこうとも、忘れられない夏の日はあるはず。
恋をしていた夏、悲しい別れをした夏、思い出したくないような夏や、この曲を聴くまでは忘れていた夏、ずっと心の奥底にしまっていたおもい…、全部がふわっとよみがえってきてしまった。
そんなにキュンとした思い出なんかないぜ、という人も、この曲が流れてきたら思い出がないのに、キュンとしてしまうに違いない…、そんな曲なんだな。山下達郎の曲は。
でも実はこの曲は、今日の日は戻ってこないし、淡い思い出の日も戻ってこないけど、本当は、明日から別の道が待っているから、頑張って生きていこう、進んでいこう、後ろを振り向きながらの人生はもう終わりにしよう、っていう人生応援ソングなんじゃないかな、って感じてしまう。
夏真っ盛りの「海」「青い空」「恋」「バカンス」っているパワー全開の曲も大好きだけど、秋の足音がきこえはじめたころに似合う、夏終わりの曲もいいものなんだよなぁ。
TEXT:tommy.Y