Queenを深くご存知じゃない方は、まずは、下記の特集からどうぞ!
【特集】心をゆさぶり、世界をゆるがし続けるQUEENの魅力
そもそも、ボヘミアン・ラプソディとはいったい何を意味しているのでしょうか?まずは、曲タイトルにある単語の意味を調べてみました。
「ボヘミアン」は放浪し、自由な生活を送る人を指し、ラプソディは、いらゆる狂詩曲と言われ自由奔放な形で描かれ表現される楽曲を指します。
つまりは、自由に表現された楽曲だというのは歌詞タイトルの意味からわかりますね。でも、それにしてもこの楽曲には謎めいた意味を持つ単語がたくさんあるんです。
今回は、そんな「謎めいた単語」にフォーカスをあててご紹介してみたいと思います。
クイーンの名曲「ボヘミアン・ラプソディ」
クイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」には英語という感じのしない耳慣れない言葉がいくつか登場します。スカラムーシュってなに。ガリレオ何回いうねん。
ひょっとしたら、この特異な世界観を形作る重要なキーワードなのかもしれません。
そんな謎な単語群をこの機会にあたってちょっと調べてみました。
オペラ文化圏の言葉たち
I see a little silhouetto of a man
(Scaramouch, Sacaramouch will you do the Fandango)
Thunderbolt and lightning very very
frightenning me
Gallileo (Gallileo)
Gallileo (Gallileo)
Gallileo Figaro-
(Magnifico)
小さな男の影がみえる
(スカラムーシュ、スカラムーシュ、ファンダンゴを踊ってくれないか)
雷と稲妻が
僕をひどく怯えさせる
ガリレオ(ガリレオ)
ガリレオ(ガリレオ)
ガリレオ・フィガロ
(マグニフィコ)
スカラムーシュとは古いイタリア歌劇で、からいばりする道化役者のこと。
転じて、からいばりする臆病者やホラ吹きのやくざ者などの意味を持つようです。
ガリレオは17世紀前後に活動した著名なイタリア人天文・物理学者、ガリレオ・ガリレイの名です。
フィガロの意味
一方、フィガロという単語は床屋や当たり屋などの意味を含んでいますが、ここではモーツァルトによるスペイン・セビリアを舞台にした歌劇『フィガロの結婚』の主人公、元理髪師フィガロを思い浮かべるのが妥当でしょう。「ガリレオ・フィガロ」でひとつの名前になっている、あるいは「ガリレオ理髪師」といった解釈にすると深みにハマりますのでここでは採用しません。
次に出て来るマグニフィコはベネチアの貴族といった意味。
ここまでの単語から、イタリアやスペインなどのオペラ文化圏の香りを感じさせるものばかりという共通点が見いだせます。
少なくともこれら「オペラっぽい単語」の羅列は、このヴァース(詩歌)のオペラ感をさらに高めているのは間違いありません。
こうした効果以外とくに意味をなしていないというのが個人的見解ですが、それはさておき。
過剰なまでの演劇性
(Bismillah!) No we will not let you go
(Let him go)
(ビスミッラー!)いや、我々はお前を行かせはしないぞ
(行かせてやれ)
ここでは逃げたい主人公を(悪魔?冥府の?)声が阻み、それに抗議する(天の?)声との掛け合いが繰り返されます。
ビスミッラーとは「アッラーの名のもとに」という意味。
イスラム教徒が用いるフレーズです。
Oh mama mia, mama mia mama mia, let me go
Beelzebub has a devil put aside for me
for me, for me
おおママミア、ママミア、ママミア、行かせておくれよ
ベルゼブブは僕のために悪魔を集めている
僕のために、僕のために
ママミアはイタリア語で直訳すれば「僕の母さん」ですが、英語の"Oh my God"のような間投詞でもあり、いずれにせよふたたびオペラ風味が出てきました。
次に登場するベルゼブブは、新約聖書に登場する悪霊の君主の名前です。
主人公が生死の境界で助けを求めるシチュエーション自体が歌劇的でもあり宗教的でもあります。
作者のフレディ・マーキュリーはその上で、さらにオペラ風味の単語や宗教的な単語を盛ることに躊躇しません。
この場面の演劇性が過剰なまでに高まることを選んだのです。
いずれにせよ風は吹く
フレディ・マーキュリーの両親はペルシア系インド人で、敬虔なゾロアスター教徒でありました。
ゾロアスター教はかつてペルシアで隆盛を極めましたが、イスラム教の侵入によりインドへと逃げ延びたという歴史的背景を持ちます。
ここにフレディがイスラム教に対する特別な感情があったとみて、ビスミッラーという言葉を用いたとする向きもあります。
しかしフレディがどの程度ゾロアスター教に傾倒していたのかは、本人の言及もなく定かではありません。
Nothing really matters to me
(Anyway the wind blows・・・)
僕には問題なんてなにもないのさ
(いずれにせよ風は吹く・・・)
なにがあっても風が吹くことはやまない。
だから問題なんてないようなものなのさ、とでもいうようにこの曲は幕を閉じます。
主人公の魂は風に吹かれていったのでしょうか。
ところでゾロアスター教の伝統的な葬送は鳥葬、もしくは風葬だそうです。
もしかしたらフレディ・マーキュリーにとって風とは、死を想起させるものであったのかもしれません。
ちなみに彼自身の葬儀はゾロアスターの葬礼に則っておこなわれました。
彼の遺体は遺族によって風の中に散骨されたといいます。
Bohemian Rhapsody 歌詞
TEXT:quenjiro