やっぱ、タイトルは『ALIVE』しかない
アルバム『ALIVE』
──最新アルバム『ALIVE』に据えたのが、「生きる」。そのテーマは、アルバム制作へ入るときには決めていたことだったのでしょうか?
伴 都美子(以下、伴):今回のプロジェクトは、「サウンドプロデューサー澤野弘之さんのプロデュースのもとで一度作品を作ってみよう」という構想のもと、まずはシングル『Alive』の制作から始まったのですが、その時点ですでに「澤野さんと一緒にアルバム作りを行おう」という意識があったと思います……、いや、『Alive』のときは、まだそこまでの視野は持っていなかったよね。
大渡 亮(以下、大渡):あの時点では、まだそこまで明確には定まっていなかったね。
伴:あのときはまだ、「まずは澤野さんと作品を一枚作ってみよう」「その手応え次第で、アルバムまで作れたらいいね」という形でした。
──シングル『Alive』を作ったときに手応えがあったからこそ、そこから具体的に制作への道筋が繋がったわけだ。
伴:そうですね。『Alive』に綴った想いやテーマが、結果的に『ALIVE』というアルバムタイトルへ繋がった面はありました。タイトルを決めたのは一番最後でしたが、アルバムが出来上がったとき、「やっぱり、この言葉しかないんじゃない」と思えましたからね。
大渡:じつは、澤野さんと一緒に楽曲制作へ取りかかる前に、「今後どのような活動をしようか」という話をDo As Infinityチーム全体でしていました。というのも、今回の制作へ入る前まで、Do As Infinityの活動に少しインターバルを置いていたんですね。それもあって、「これから、どうやって新しいDo As Infinityを描こうか」という話しあいから始めて、動き出すまでに何度もディスカッションを重ねました。その話し合いの過程の中、「澤野さんをサウンドプロデューサーに迎え、アルバムまで統一して作り上げるのはどうか」という話や、「一つのストーリーを考え、そのストーリーをコンセプトアルバムのようにまで発展させられたらいいね」というアイデアが出てきました。
ただし、完全に「物語を作る」という縛りで動いてしまうと自由度が制限されることから、「あくまでも一つのテーマとなる物語があり、それをいろんな角度から見た楽曲を集めたり、そうじゃない視点もあったうえで、結果的に統一性を持てるアルバムになれたら」という理想を掲げ、アルバム制作を進め始めました。
──それが、結果的に良い繋がりを持った作品になったわけですね。
大渡:そうなりましたね。制作する当事者としても、一つの軸が見えることで作業が見えやすかったですし、2017年の活動のモチベーションにも上手く反映させられた感覚がありましたからね。
今自分らしい演奏を一筆書きで描き出せる
──シングル作品を個別に聴いていたときにはそこまで強く意識していませんでしたが、既発の曲たちも含め、改めてアルバムという一つの流れを持って聞いたとき、じつはすべての想いが繋がっていたんだなと実感させられました。シングル作品を重ねていく中でも、「生きる」というテーマ性を、お二人とも気持ちの根底に持っていたのでしょうか?伴:つねに頭の片隅に置いてはいましたね。
大渡:結果的には、そうだったね。『Alive』の歌詞のテーマに据えたのが、ある架空の短編小説なんですけど。当初、それ以外の楽曲に関しては、そこへ縛られることなく制作しいていこうと決めていました。
──そこに縛られすぎてしまうと、どうしても制作面での制約が多くなってしまうからですか?
大渡:そうなんです。と言いながらも、頭の片隅にはその小説の世界観も感じ続けていたように、それだけ強烈な印象があったんでしょうね。
──お二人か作詩をした楽曲の歌詞にも、『Alive』から派生した想いが投影されていますよね。
伴:結果的には、そうなりましたね。『Alive』との関連性として語るなら、
『~ prologue ~』と『Alive』は、澤野さんいわく「繋がりを持って」作られています。
──冒頭を飾った『~ prologue ~』へは、澤野さんが構築したデジタルな世界観へ、亮さんの生々しいブルージーなギターが生命の脈動を与えてゆく印象も受けました。
大渡:ここまでデジタルサウンドが進化した中、エレキギターは唯一無二の人間らしさを封じ込める楽器なんでね。『~ prologue ~』と『~ epilogue ~』の2曲に関しては、先に澤野さんが構築した音の中、唯一空けていただいたトラックの中へ、僕が一発勝負で演奏し、最終的な彩りを描き加えました。
──まさに、ギターの一筆書きを投影した形だ。
大渡: そうなんです。デビュー当時は、自分なりに描いたストーリーを1トラックで一気に描くことはなかなか難しかったですけど。さすがに18年経過した経験もあって、今は自分らしい演奏を一筆書きで描き出せるようになれたというか。そう描くことを楽しみながら、今回は自分の個性やセンスを楽曲へ投影できた気がします。
──『~ prologue ~』から『Alive』の流れが、とてもスリリングかつドラマチックで耳惹かれました。
大渡:伴ちゃんも言ってたように、澤野さんは『~ prologue ~』と『Alive』を繋がる一つの楽曲として考えてくださっていました。ということは、アルバムも
『~ prologue ~』から『ALIVE』という流れで始まることはあらかじめ決められていたわけで…。そこを踏まえ、その後の曲順をどうしていくかを、僕らで考えていきました。
──澤野さんは、曲順には関わっていなかったんですね。
大渡:あくまでも「『~ prologue ~』から『Alive』という流れで作りました」と澤野さんに言われただけで、他の楽曲に関しては、僕らのほうで楽曲のキーや歌詞のテーマ性を上手く考慮しながら、今回の流れを構築した形でした。
──個別の楽曲制作に関しては、澤野さんが持ってきた楽曲に対して、お二人がどう染め上げてゆくかという形で進んでいたのでしょうか?
伴:事前に「こういうのをやりたい」「こういうのを歌いたい」という提案を澤野さんへしたこともあれば、先に澤野さんが「どうですか」と作ってきた楽曲を示して頂いたこともあり、そこは両方ですね。中には、リクエストした結果、「こういう表情になったんだ」という嬉しい感動もありました。
アルバム制作を澤野さんと一緒に取り組むこともそうでしたけど、今回はすべてに於いてチャレンジだったなという意識があれば、作り終えた今は、チャレンジして良かったという安堵感や達成感もありますからね。
昨年は「生きてて良かった」と思った経験がたくさん
──収録した楽曲のどの歌詞からも、とても力強く前向きな意識というか、抑圧された環境から立ち上がってゆく強い意思を感じさせられました。それらのメッセージを吐き出したうえで、最後に『唯一の真実』という連綿と繋がってゆく命の大切さを綴った歌が流れることで、先に投影したすべての想いを、『唯一の真実』が全部抱きしめ包み込んでくれた印象も覚えました。伴:『唯一の真実』を、この位置に据えて良かったです。
──最初、シングル用に『唯一の真実』の歌詞を書いたときは、アルバムに収録した曲たちをすべて抱きしめる歌詞にしようという意識までは持っていませんでしたよね。
伴:書いているときは、単に『唯一の真実』という歌詞に投影したい想いのみへ集中していたように、その時点では、アルバムの最後を飾る楽曲になるとは想像していませんでしたね。
──『唯一の真実』は命の繋がりを歌った楽曲でしたよね。
伴:そうです、命の尊さというか…。
──『唯一の真実』に込めた想いが、結果的に『ALIVE』というアルバム全体を貫いたテーマ性を集約した想いとして胸に響いたのも嬉しかったことなんです。
伴:出産が大きなきっかけなのか本当のところはわかんないですけど、ここ2-3年は「生きる」ことを常々考えることが多く、昨年は「生きてて良かった」と思った経験がたくさんありました。同時に、「どうやって生きていこう」「10年後や20年後はどうしてるんだろう」と、日々そういうことを考えながら過ごしていた気もします。それが、結果的にアルバムの世界観にも繋がりましたからね。「生きるってこんなに大変なのか」って…。
──「生きる」と口で言うのは簡単ですけど…。
伴:言葉にすると重たいんですよね。だけど、「生きる」って素晴らしいことだという気持ちも、同時に感じるんです。
昨年は南米ツアーにも行ければ、地球の真裏に、あんなに待ってくれている人たちがいるんだと実感できた経験も、とても大きな感動でした。
──年齢や経験を重ねるごとに、「生きる」ことの大切さや重要性を感じることが多くなりますよね。
伴:なりますよねぇ。わたしも年齢を重ねたせいか、白髪だって出てくるし(笑)。それも、生きてることの証拠のように、別にマイナスに捉えなくても良いこと。考え方次第では、しんどいことも逞しくなるための勉強として捉えていけるように、何事も昔よりもポジティブになれている気がします。
伴 都美子(Vo.)、大渡 亮(Gt.&Vo.)からなるロックバンド。 1999年結成。 デビュー前から渋谷ハチ公前を中心に100回以上路上ライブを行い、同年9月29日、シングル「Tangerine Dream」でavex traxよりデビュー。 2005年11月25日に日本武道館でラストライブをもって6年間の活動を終了したが···