つまり、キスマイの5周年以降の姿勢というものは、“ここからまだまだ攻めていく”そのための地盤づくりのような、こんなこともできる、こういうところも俺らの強さだよね、といったキスマイの強みの再確認でもあり、“ファンが求めるキスマイ”に徹底的に向き合い、ファンと本当に盛り上がれるライブを見据えた楽曲のみで構成されていることに、奇抜なコンセプトを持たなくとも、キスマイ本体の強さだけで十分戦えてしまうポテンシャルの高さを浮き彫りにした。
Kis-My-Ft2「EXPLODE」
まさにコンサートの幕開けに相応しい。徐々に高まりを促すイントロ。
こういったキスマイと言えば、のギラオラ曲のハマリようはいわずもがなだが、ジャニーズには多くある方向性のようで、実はこの路線を地でいけるグループとなるとやはりキスマイが先頭に立っている。
それはキスマイに「攻め」の体制が整っているからで、しっかり歌だけでも聴かせられるレベルのメインボーカルが北山・藤ヶ谷と二人もいるところが大きい。
この二人が先陣を切って曲に核心を与え、横尾・宮田がそこに必死さを持って食らいつく。
そして二階堂・千賀のパンチラインが加わり、玉森が声質の面でも存在感でも7人のバランスをとっている。
こうしてみると層が厚く隙がない。それでいてバラバラの個性によってグループに立体感と奥行きがでているのが伺える。
これからはこの7人の総力戦。その爆発力で道を切り開く。それがこの曲がリード曲となっているその意味だ。
Kis-My-Ft2「いいね!」
ギラオラ感からは正反対に位置するアットホームなキスマイの良さが溢れている。
SNSの「いいね」をつけるようなテンションで老若男女に向けたハッピーな応援ソング。
路線的には「Thank you じゃん!」のように、誰の日常にも寄り添える、“気さくな近所のお兄ちゃん”的な親しみやすいスタンスで、キスマイ持ち前のサービス精神が発揮できている。
この曲があることで、キスマイが攻めていくという意味はギラオラ感だけではなく、逆に振り切ってハッピーにだって特化できる。
どんな方向でも行けるんだというその手中の持ち札への自信が伺える。
「いいね」の言い方一つとっても7人それぞれの人間味がにじみでていて1曲を通して飽きさせない。
ファン受けももちろんだが、例えば娘にコンサートに連れてこられたお父さんでも、楽しめそうなところまで考えてあるのが、エンターテイナーとしてのプロ精神を感じさせる。
Kis-My-Ft2「キスしちゃうぞ」
メンバーごとのセリフが楽しいハピネスフルな1曲。
冠を務めるテレビ番組キスブサ(現・キスマイ超 BUSAIKU !?)をそのまま1曲に落としこんだような胸キュンソング。
5周年を超えても、まだしっかりザ・アイドル路線をやりきる。
そこには段々とアーティスト寄りになっていくアイドルグループが多い中で、“ファンのみたいもの”そこから逃げない、カッコつけないカッコよさがある。
ついてきてくれるファンを幸せにする。アイドルを本気でやっていく。その決意のようなものがこの曲を入れてきたことに滲み出ている。
実際の年齢感から言えば幼い世界観は、やりきっていなければ浮いてしまう危うさのあるラインではあるが、リスナーと向き合う姿勢がブレていないため、ファンの目線にしっかり合わせにいく、なるべく近くへと歩み寄ろうというような優しさを醸し出すことに成功している。
終盤間奏のメンバーが歌い繋いでいく「NaNaNa…」の部分はそれぞれの声色の特徴がはっきりと分かり、歌詞のない部分でもキャラを乗せていけるほど7人7様の存在感が際立っているのにも注目してほしい。
Kis-My-Ft2「Bang! Bang! BURN!」
コンサートの盛り上がりに不可欠なロックなテンアゲナンバー。印象的なのが1番のBメロで見せる玉森のソロパート。
普段メインボーカルでは北山・藤ヶ谷がリードしているのが定型だが、実は玉森のボーカルも着実に成長を遂げている。
声質は一番アイドルらしく甘さを含み、高く張ることでかなりエモーショナルに訴えかける事ができる。
そんなに力んでいるようにはみえないが自分のパートをしっかり弾けさせる。
この玉森のアピールによってキスマイの打ち出せる世界観の幅が圧倒的に広がっている。
そしてラップでの二階堂・千賀の完璧に自分のものにしてくるクールなフロウが普段のキャラとのギャップとあいまってさらにスパイスとなり刺さってくる。
このようにメインボーカル以外が確変を見せ始めたことで、これからのキスマイへの期待はさらに高まらざるをえない。
あえてテーマを設けず様々なジャンルで新曲を作ったことで、これからのキスマイの新たなワンステップにあらゆる可能性を示した今作。
今までよりもさらに7人全員が前線へと繰り出す総力戦の様相を呈している。
7人というのはいざ一丸となれば圧倒的な破壊力を打ち出せる数字だ。
それより多ければ一体感を生むのは難しいし、それより少なければ切り出せる手札は狭まり迫力に欠けてしまう。
仲良しで売っているグループではないが音楽の上でこの7人が一体となって進むことに意味がある。
その個性が、声質が、存在感が、アンサンブルとなったときに生み出せる何通りものカレイドスコープのような模様がこの「MUSIC COLOSSEUM」に収められたひとつひとつの楽曲に宿る重要な意義だ。
そしてその可能性が今回形になったのはまだほんの一部である。次の一手でさらなる躍進を遂げることはもはや必然である。
TEXT:阿璃守
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