共感を得る清水依与吏の歌詞
どちらかと言えば、back numberが今まで世に出してきた曲は、片思いや失恋を描いた作品が多く、清水依与吏が綴る恋愛下手な歌詞に多くの人々の共感を得ている。そこがback numberが大人気バンドに登りつめた1つの武器でもある。
誰かに恋をした時の溢れ出す想いや止まらない妄想に心躍らせたり、ふとしたときに一人で悩んで落ち込んだり。
そういう事をカッコつけることなく代弁してきた。
「瞬き」でみせた新たな一面
そんなback numberの新境地となったのが「瞬き」である。沢山のタイアップ曲を担当してきている中でも、この楽曲のような恋愛観は今までにない。“大切な人“に対する溢れる愛情が込められている。
平凡な生活の中での幸せを見つけるのは、私たちが考えているよりも実は簡単なことなのだ!ということを、この曲を聴いて再認識させられた。
果たして、たった数回しか経験のない“キラキラ”している事が幸せと呼べるのか?....
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幸せとは 星が降る夜と眩しい朝が
繰り返すようなものじゃなく
大切な人に降りかかった雨に傘を差せる事だ
≪瞬き 歌詞より抜粋≫
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幸せとは何か…?答えが無数にあるこの問いに対し、一曲を通して“自分なりの答え”を導いていくという流れの元、曲が進んでいく構成となっている。
それを踏まえた上で、映画の内容に寄り添いながら掘り下げてみる。
病に倒れ昏睡状態に陥り、いつ目を覚ますかもわからない花嫁が奇跡的に回復を遂げた実話を描いた作品がテーマとなっている「瞬き」の歌詞の中で、このフレーズが何回も登場してくる。
私たちは普通の生活が突然奪われたとき、不幸せだと思ってしまいがちである。
大切な人が、日に日に自由を奪われていく姿を目の当たりにして、なんて運が悪いんだ!と自分を攻めるしか無くなったとき、あなたならどう気持ちを落ち着かせますか?
そういう極地に立たされた時に、特別な事を一切捨ててみると、大切な人とのたわいも無い時間と相手を守ることが一番の幸せだったということに気づくことができる。
瞼の内側でも瞼の向こう側でも、大切な人の側に居る事ができたなら、こんなに幸せなことは無い。
新境地を開拓した名曲
“守っているはずが、いつの間にか相手に守られている僕。そんな情けないことでも許してくれる君のそばに居れることがいちばんの幸せだ。“というところに、いつ大切な人を失うかわからない恐怖の中に差し込む希望の光が見えてくる。
一度は守る事が幸せだと決心しても、どこか不安で、結局は守られる立場になってしまっているというところに、“清水依与吏らしさ“が散りばめられている。
自信を持ってもいいはずなのに踏み切れないといった、どこか憎めない人物像に愛おしさを感じるのだ。
今作の「瞬き」は、奇跡の実話を元に、目の前にある愛情を歌っているという、新しい一面を覗かせた。
この曲でback numberの曲の幅が確実に広がり、新たなファンを獲得したと言っても過言ではない程、今後のback numberに期待を持てる曲の一つとなった。
恋をしたら聴きたくなる
どちらかと言えば、実際に経験した恋愛遍歴や妄想がそのまま歌詞となり、失恋をテーマの歌詞が多い中、なぜ人を好きになった時にback numberが聴きたくなるのだろうか…。きっとそれは、恋愛の苦さも代弁してくれる“かっこ悪い歌詞”と、キラキラとしたメロディが映える”かっこ良いサウンド“が見事にマッチングしているからなのだ。
TEXT:松下ゆっこ
Vocal & Guitar : 清水依与吏(シミズイヨリ) Bass : 小島和也(コジマカズヤ) Drums : 栗原寿(クリハラヒサシ) 2004年、群馬にて清水依与吏を中心に結成。 幾度かのメンバーチェンジを経て、2007年現在のメンバーとなる。 デビュー直前にiTunesが選ぶ2011年最もブレイクが期待でき···