木島ユタカ最新シングル「鈍感な人になりたい」
──4月4日「鈍感な人になりたい」のリリースおめでとうございます。
木島ユタカ:ありがとうございます。
──前作「10年経てば」に続いてのリリースですが、この作品は木島さんにとってどのような位置づけになるんでしょうか?
木島ユタカ:去年一年は海外の民謡というところをブラッシュアップしてやらしていただいたのですが、「10年経てば」は自分の中でも三味線シンガーとしての入り口になる曲、自己紹介のような、皆さんにこういうシンガーですと知っていただく曲だった思っています。
「鈍感な人になりたい」は、より自分がやってきた歌という部分にスポットを当てて、歌いあげるようなものにしたいなって思ってたので、メロディも含め、自分のシンガーという部分をより知っていただける曲ですね。
──そうなんですね。以前ライブで聴いた時も三味線のイメージがすごくありましたが、「鈍感な人になりたい」を聴くと、三味線は最初のイントロのところで耳に入って来ますが、そこから歌が主張してくる感じがすごくします。こちらは原曲が…
木島ユタカ:Shenandoah。
──ありがとうございます。そう、Shenandoahですね。聞き覚えのあるメロディーですね。アメリカではヴォーカルを聴かせる方が結構歌われていて、歌の力がすごく問われる曲だと思いましたが、いかがでしたか?
木島ユタカ:そうですね。結構レンジも広く、音域も広いので、そういう意味では地声、低いところからファルセットの部分までしっかり使える曲です。僕自身、やっぱり元々シンガーでやってきたので、そういう面ではすごくシンガーとして歌いたくなる1曲だなと思います。
──タイトル「鈍感な人になりたい」の中にある「鈍感な人」にはいろいろな意味が含まれていると思いますが、木島さんはどうですか?
木島ユタカ:僕は敏感になったと思います(笑)。地元の兵庫の伊丹で過ごしてた幼少期とかは鈍感だったなとすごく思うんですけども、やっぱり現代を生きる上でというか(笑)、どうしても敏感じゃないとついていけない部分というのもすごくあるというのは、ひしひしと感じてますしね。
アメリカ民謡のリノベーション
──カップリングが「遠いふたり」ですね。こちらのメロディのほうも、また聞き覚えがありました。エルビス・プレスリーの「love me tender」の原曲となった「Aura Lee」ですね。プレスリーの初期のほうの曲なので、どちらかというとロックの神様の曲というよりはカントリーという感じが残った曲ですよね。誰もが知る曲のカバーとも言えるのですが、そういった楽曲を歌う時の気持ちを教えてください。
木島ユタカ:そこはあんまり意識はしていないんです(笑)抵抗も全然ないです。それは、日本語のオリジナル詞を付けていただいてるので、すごく曲が生まれ変わってるというか、メロディも一つ自分で作曲して足して、リノベーションという形で今回出させていただいてるので、新しい曲として。でも、昔の良さも感じてもらいながら、リスナーの人には聴いていただきたいと思います。
──木島さん、民謡がルーツということですが、昔から歌われている民謡が現代の音楽と繋がっているとご自分の中で感じる事はありますか?
木島ユタカ:結構最近バンドの方たちとかでも、和の音階というか、そういうものを使われている方、すごく増えてきてるなと思います。
例えば、サカナクションさんだと和の音階が結構組み込まれたり、ライブのスタイルもそういう和の部分があったりするなと思っています。
そういうところで民謡が今の音楽に繋がってきているというのはあるんじゃないかなとは思います。僕自身は歌い方というところで、こぶしをポップスというかオリジナルに混ぜてるっていうところが一番民謡をやってきた流れですね。
──和の音階というのは?
木島ユタカ:ヨナ抜きっていって、4度と7度が抜けているような、4個目の音と7個目の音が抜けるような感じの音階が、いわゆる和物っぽいって感じられるといわれています。でも結構海外の民謡もそれに近いような感じのものもあったりとか、独特のシンプルなメロディで流れるような感じとか、そういったのがありますね。
──そういうところを木島さんも意識されるっていうのは、やはりそれが日本人にスッと入りやすいということなんでしょうか。
木島ユタカ:そうですね。なんか、こうスッと入ってくるような感覚はあるんじゃないかなと。意識せずなんですけども、ほんとに耳から入ってスーッと心まで届くような、そういう音階なんじゃないかと思います。
「鈍感な人になりたい」の好きな歌詞とは?
──UtaTenは歌詞も掲載させていただいているサイトなので、歌詞のこともお聞きしたいのですが、今回の楽曲では歌詞をオリジナルでのせられていますが、その中で好きなフレーズがあれば教えてください。木島ユタカ:そうですね。「僕らはそうやっていつしか年をとる たいせつな誰かの幸せだけを願いながら」っていうフレーズがあるんですが、このフレーズはすごく好きです。自分のためだけじゃなくというか、誰かを思ってその思いを、次、またその次の世代に繋げていくというのが、すごく生きるということに繋がってる気がします。
──木島さんが年をとっていく姿ってどういうイメージなんでしょう?
木島ユタカ:なんかどこまで行ったら大人になるんかなってすごい思いますけど、若くはありたいなと思います。若作りという若さじゃなく、常にちゃんとチャレンジし続けたいという若い気持ちは保っていたいと思うので。外見は渋くなっていけばいいと思うんですが。しわと白髪の似合うような(笑)。
──男ってなかなか落ち着かないところがありますよね。
木島ユタカ:やっぱりいつも女性のほうがしっかりしてるというか、同世代はもちろんなんですけど、ちょっと下の子とかでも、この子のほうが”大人やな”と思ったりとかすることってたくさんあります。
──男はみんなそう感じていますよ。ちなみに、音楽的に大人になりたい部分などありますか?
木島ユタカ:音楽的には、でもやっぱりルーツの民謡というところは、しっかり歌い継いでいきたいとこでもあるので、最終的にはそこに帰っていくのかなと思っています。今やらせてもらってるものがいろんな経験を経て、晩期というか自分が年を取った時に、民謡をさらにやっていって、その中でそこまで培ってきた洋楽だったりとか、三味線シンガーの部分だったりとかも一緒に出せたらいいなと思います。
──今回の楽曲「鈍感な人になりたい」は、どういうリスナー層に聴いて欲しいとかはございますか?
木島ユタカ:今回の「鈍感な人になりたい」でいうと、どちらかというとご年配の方に受け入れてくれているんですが、若い子たちのほうが歌詞にあるようなことを感じている人が多いんじゃないかって最近は思っています。生まれた時から既に便利な時代・・・敏感でなきゃいけない中で生まれて、だからこそ鈍感ということに関して、すごく興味を持ってもらえるんじゃないでしょうか。やはり人間のパーソナルな部分とか、郷里を思う気持ちだったりとかを歌っていけたらいいかなとは思っています。
──先ほど三味線の話が出たのですが、今後三味線をどういうふうに使ってパフォーマンスしていきたいとか、挑戦していきたいと思っていらっしゃいますか?
木島ユタカ:そうですね。やっぱり洋楽を三味線で弾くというところはもっともっとトライしていきたいと思っています。もちろん昔の曲もそうなんですけども、最近の曲も三味線を使って、オケにも三味線を足しつつ、重ねつつ、やってみると新しいサウンドというのがまた見えてくるんじゃないかなと思っています。
──三味線の音色は、日本人にはすごく耳障りが良くてスッと入ってくると思うのですが、逆に海外の人にはどう映ったりしているのでしょうか。
木島ユタカ:物珍しいかもしれませんね。Instagramとかやってると海外の人からのフォローが結構多いんです。今海外の人も津軽三味線とかをやってる方、相当多いと思うのですが、逆にそういう方は三味線を持つと和なことをやりたがるので、三味線を使って洋楽をやるというのは、盲点のような気はしてます。
──すごく楽しみですね。知っている曲がどんな風にアレンジされて聴こえてくるのか。
木島ユタカ:そうですね。海外の民謡なんかも結構テンポアップしたりすると、まったく別のものに聴こえたり、アレンジによって全然変わってくるので、そういうところは楽しみです。