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哀しみの空に浮かんだ”孤独という名の雲”の上から、手放した愛情を地上に降らせる『さよならエレジー』。

最終回をむかえた『トドメの接吻』の主題歌としても話題となったの「さよならエレジー」は、同ドラマにも出演していた菅田将暉が歌っている。日本トップの若手実力派俳優という名誉ある肩書きの持ち主である彼が、今度はシンガーとして感情を爆発させる。
人気俳優や人気女優が歌手としてCDデビューするという流れは日本の芸能界ではごく当たり前のことで珍しいことではない。

役者業よりも音楽業で後にトップシンガーに登りつめた有名人もいるほどだ。

今、菅田将暉はこの2つの業界でトップになりつつある。

俳優や女優がCDデビューすることに対して、世間体では厳しい意見もたくさん飛び交う中、菅田将暉はどちらに対しても絶大な指示を受けているのは何故なのか。

菅田将暉が歌っている曲を聴いてみると、ヤラセ感やビジネス要素が無い。

それはデビュー曲「見たことも無い景色」を聴いたときにそう感じさせられた。

歌わされているのでは無く、本人の意思で歌う無骨な姿勢に、シンガーとしての菅田将暉の可能性を見いだすことができるのだ。

菅田将暉「さよならエレジー」



さよならエレジー」は菅田自身が元からファンであり、交流の深い石崎ひゅーいが楽曲提供をしている。

米津玄師とのコラボとはうって変わった刺々しいギターロックだ。

『トドメの接吻』で菅田は路上ミュージシャン役を演じ、MVでも演じた役の姿で出演している。

何かを見据えた眼光でアコースティックギターを爪弾く姿はどこか悲しげに見え、曲のイメージを見事に表現するのはさすが役者だと言えるところである。



「孤独という名の雲」に込められた気持ち

僕が愛を信じても きっといなくなるんだろう?
それならいらない 哀しすぎるから
さようならさえも 上手く言えなさそうだから
手を振る代わりに抱きしめてみたよ


曲の全体像に悲壮感が漂い、地面に足をつくことさえも出来ない程に衰弱している気持ちを“孤独という名の雲”という歌詞に当てはめられている。

自らの手で手放した愛でありながらも、本当は無念な気持ちでいっぱい。

一人になって気が付いた相手への思いが溢れ、大粒の雨を振らせる。

この後悔だけは心に虹を描くことはできなかった。

そんな風に冒頭から読み取ることができる。

捨てきれない愛情を必死に追いかけ、言葉より行動が先行し思わず抱きしめる。

そこには、二人が交わす言葉は存在しないし、女性も存在しない。

どこかへ行ってしまった未練だけが残り、心の奥がジンジンと痛くなってくるのがわかる程、聴き手の感情を揺さぶってくるのだ。

菅田将暉の飾らない姿が垣間見られる一曲

愛が僕に噛み付いて 離さないというけれど
さみしさのカタチは変わらないみたいだ
舞い上がって行け いつか夜の向こう側
うんざりするほど 光れ君の歌


一方で曲の中盤からラストにかけては、後悔を引きづりながらも半ば強制的だが前向きになっているのがわかる。

それが逆に胸を痛くさせてくる。忘れれば楽になれるかもしれないが、今も頭の片隅に残る君の姿が離してくれない。

“さみしさのカタチ”はそう簡単に変わっていかないのなら、いっそのこと思い出にしてしまいたい。

僕の未来は明るくなるように願うことしかできなくても、君の未来はうんざりするほどに応援し続けてやる。

この哀しい曲にさよならと手を振りながら、「傷つけることからも傷つくことからも卒業しよう。」という僕なりの結論へと最終的に至るのだ。

石崎ひゅーいという最高の刺客を迎え、飾らない菅田将暉を見せてくれた「さよならエレジー」。

今まで多彩な役をこなしてきた彼にしかできない曲になったと言うことが出来る。

歌詞に感情をぶつける部分は、音楽だけをやってきた人とは違うものを持ち、それを強みとしながら、私たちが“見たことも無い景色”をこの先もさらにみせてくれると大いに期待に胸が膨らむ。

シンガー・菅田将暉が役者・菅田将暉にどう影響されていくのか、今後のアーティスト活動が非常に楽しみである。

TEXT:松下 ゆっこ

1993年2月21日大阪府生まれ。 2009年『仮面ライダーW』でデビュー。 『共喰い』で第37回日本アカデミー賞新人俳優賞、『あゝ、荒野』で第41回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞などを受賞。 同作により2017年度の映画賞を総なめし、若手実力派俳優として多方面で活動中。 また、同年の···

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