日本の国の事を日本人の気持ちで歌いたいなって
──メジャーだなって感じる瞬間ってありますか?寿君:テレビとかに自分が表れるときですかね。風呂上りの深夜に、髪の毛ふきながらテレビをパッとつけたらちょうど俺が出ていたりとか。自分が歌っているのを目の当たりにして「すげー!ちょー出てる!」ってなりますもん。
──寿君はゴリゴリのレゲエではないと思いますが、それはメジャーの為に意識されていたりもしますか?
寿君:基本、僕は前からそうなんですよ。むちゃくちゃゴリゴリやるタイプじゃないんですけど、毎年ジャマイカには行っていて。日本の人はあまりジャマイカには行かないと思うけど、俺はレゲエアーティストだからもっと勉強せなあかんなって。実際にジャマイカに行って曲とかを作って、日本で出すけど求められていない部分もある。『LONG DISTANCE』っていうラブソングが、7年前くらいに出したんですけど、それが原因で今の仕事に繋がったんですよ。今までゴリゴリの曲をバイトをしながら歌っていたけど、意外に初めて書いたラブソングがぱーんってヒットして、地方からやたら呼ばれるようになったり。その歌を歌うまでは、全然盛り上がらなかったけど、『LONG DISTANCE』をかけたら「待ってました!」みたいな反応をしてくれたから、この曲がきっかけで好きになってくれる人が多いなって思ったんです。
そういうのが最初から意識していた部分でもあるので、おかんとかも凄く俺を応援してくれてるんですよ。「ファミマであんたの曲流れてたわ~」って言ってくれて、おかんも喜んでくれるような音楽を作りたいなって思って、レゲエ知らん子も一発で「寿君だ!」って思うような奴になりたかったんです。僕が入口になって、レゲエってこんな奴もあんな奴もいて、ジャマイカっていう国があって、俺らはその音楽を好きになって日本でやってんねん!っていう。ジャマイカの俺らが好きになったスターは、ジャマイカ人に対してジャマイカの国の事を歌っている。だから俺らも日本でレゲエをやるなら、ジャマイカの真似して日本でレゲエ!ってやるんじゃなくて、日本人の気持ちを考えて、日本の国の事を日本人の気持ちで歌いたいなって思ってて。それをやっていたらゴリゴリのレゲエ音楽ではなくなりました。
──そうだったんですね!
寿君:でも俺、ゴリゴリな感じもできますよ。クラブなどノリを求められる所でやるときは、『一人じゃない』とか聞かせる歌は逆に歌いづらいですからね。なんでゴリゴリ系をやったりもしますし。実際そこで求めてもらっているものは、そういう音楽なんちゃうかなって思います。
昔Twitterで、寿君って入れて検索をしていたんですよ。そしたら「西野カナちゃんとAK-69さんとAAAと寿君が大好きです!」みたいな事を書いていた子がいて、「ふり幅やば!ここに俺!?」ってなったし(笑)どういう括りなんやろう?って思って。それを同じジャンルに「俺ってレゲエじゃない?って思われるんかな?」って相談していたんですけど、「そんなん、絶対気にする事じゃないで。お前みたいな奴がおるから、レゲエ聴かん子が寿君を見にくる。絶対良い歯車だし!もっともっとそういう風になって欲しい」って言われて、じゃあ頑張るぞって思えたんです。
──その現場のお話し面白いですね。「レゲエじゃない!」とか言われるんだと思っていました。
寿君:でも、言う人もいますよ。「J-POPばっか歌いやがって」みたいに言われて、俺もムカってするけど、そういう時はフルパトワ語で喋りかけますよ(笑)日本人でパトワ語喋れる子もいるので、よく話したりもしますね。アンチとかに振り回されず胸張って日本の歌手としてやりたいです。ジャマイカだとレゲエやっている奴が、一番お金持っていて、そいつらの家の道路とかをお金出して引くんですよ。ガタガタの道とかあっても、アーティストが5,6人、若い奴を呼んできて、「あそこの道路ガタガタやろ。セメント買って穴を埋めてこい」って言って、お金渡してセメント引いて直させたりとかしていて。
そのおかげで、俺が通るときに道がすげー綺麗になっているんですよ。そういうのを見ると、アーティストってすげー偉大やなって思って。そういった事がメジャー行く理由なんですよ。インディーズでやると、ローンとかも通りにくいし(笑)国として受け入れられているんかな?って思っていて。俺の好きなジャマイカのアーティストは、国にも街にも貢献しているのに、自分は日本にいて見た目悪いチャラチャラした兄ちゃんで終わってまうんかなーって思うのもいややったし。ジャマイカの友達とも、インスタグラムで繋がっていて「お前のインスタの投稿みたよ!あれ、お前のライブなん?すげー人おるな。ジェネラル!」って言ってくれたりも。
──ジェネラルってどういう意味なんですか?
寿君:ジェネラルは将軍っていう意味なんですけど、武将っぽい奴の事をすぐジェネラルって言うんですよね。出来る奴の事とか!俺もよく使っていたし、おちょくったらあかんやろって思う人に、「ジェネラル!」っていうと「おおいいぞ」ってなったりもするし。(笑)そういう呼び名いうか、スラングって毎年変わっていくんですよ。そういうのをキャッチしに、ジャマイカに行ったりもしますね。それが曲になったりもするので。
──ジャマイカのレゲエシーンでも流行りみたいなものもあるんでしょうか?そういうのは他のジャンルの影響を受けていますか?
寿君:絶対他ジャンルをリファレンスにしていますよ。ジャパニーズレゲエの人は、EDMを凄く嫌うんですよ。僕は逆に可能性を感じている方で。今、EDMは凄く流行ってきてるけど、日本人は固定概念があるから毛嫌いしているだけかなって。ジャマイカでアヴィーチーとかを聴かせると「ビートめっちゃいいやんけ」ってなるし。俺らって後ろで流れている定番のリズムの上に5人ぐらいアーティストがのるんですよ、そういう文化がある。でも、ジャマイカで、俺の『一人じゃない』をレゲエで出すってなったら、同じリズムで同じカラオケで違う人が違う歌を4人ぐらいで歌ってるって感じでリリースされる事が多い、それがセグメントリリースっていうんですけど。昔ながらの定番のリズムみたいなものを今の日本人は使いたがる。だからもっと今風にオシャレしようぜって思うし、EDMテイストをを取り入れてリメイクをしているアーティストもいるから、日本ももっとそういう風になってほしいです。
──ダンスホールというジャンルは、それに近い形なんでしょうか?
寿君:そうですね。レゲエってカルチャーのイメージがありますけど、俺はカルチャーのレゲエとは全く別物だと思っているんですよ。俺はダンスホールの方が好きですね。ジャマイカも、ダンスホールでみんなパーティーしています。それにジャマイカ人って、普段貧しいのに、夜になると「どこでそんな服ゲットしたん?」っていうようなオシャレな服を着てきたりもするし(笑)みんなダンスホールに命かけてますよ。
──今作にもゴリゴリな感じの楽曲がいくつかありますね。
寿君:ありますね。『Winner』とか『GENERAL』『マンマ・ミーア』はダンスホールテイストですね。『マンマ・ミーア』をやってくれたのは、RED SPIDERっていうプロデューサーなんですけど、自分が初めてクラブ行ったときに、回していた人でその人が“寿君”っていう名前を付けてくれたんですよ。凄い尊敬している先輩なんです。『GENERAL』は、『Dr.BEATZコレクション』を作ってくれたDr.BEATZが制作をしてくれましたし、『LONG DISTANCE』もそう。僕のファーストアルバムって一人の人がリズムを作って制作しているんですよね。
リリックには元三木道三のDOZAN11にも見ていただいたり。実は、DOZANさんって俺の地元の先輩なんで、小学校からの知り合いなんですよ。だからこうしてお仕事をご一緒する事が出来て嬉しいです。レゲエ界の中で厳選した最強プロデューサー陣ですね!メジャーデビュー作品としては、俺が出せるベストを出したつもりです。
「世界が敵に感じたり自分だけ取り残されるような孤独を感じてしまう日も」
──『一人じゃない』からお気に入りフレーズを教えてください。寿君:「世界が敵に感じたり自分だけ取り残されるような孤独を感じてしまう日も」ですね。味方がここにいる事を忘れないで!君は一人じゃないっていう事がギュッと詰め込まれているんですよ。
──レゲエって歌詞が明るいものが多いんですね。言葉を選ぶときに自分にとっての決めごととかはありますか?
寿君:そうですね。自分の言葉を極力使うようにしています。関西弁とかも入れていきたいとも思うし。わかるわーって共感もしてもらいたいから、わざとダンスホール、ミラーボール、でっかいスピーカーとかを入れないんですよ。「でっかいスピーカーから流れる爆音にのってみんなで踊ろうぜ!」って歌ってしまうと、iPhoneで聴いてる奴は共感が出来ないんですよ。俺たちは当たり前のように、でっかいスピーカーで聴いてるけど、iPhoneで聴いてる奴はどういう意味?って思われるし。Dr.BEATZが最初俺に教えてくれたんですけど、「桜とか、この道とか、景色とかは何年も使えるけど、iPhoneはまじ辞めた方がいいで。俺昔ポケベルが鳴らなくてって歌めっちゃ好きやったんや。でもお前響かんやろ?」って言われて、確かにわかんないなって。そのときにみんなに共感してもらうんだったら、みんなの知らないような言葉は使わない方がいいと思いましたね。
──最後にUtaTenの読者にメッセージをお願いします!
寿君:リリース記念に豪華ゲストを招いて東名阪ツーマンツアーを行います。今後集まるかどうかわからない方々と、この日にしか味わえない日をお届けするので、ぜひ来てほしいです!!
TEXT:愛香
PHOTO:橋本美波
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