スタッフの気持ちに答えてあげたいという想い
──高橋さんの歌詞には、前向きさが強く伝わるものが多いと思いました。高橋さん自身常に前向きな考えを持ちながら日常を過ごされているのでしょうか?高橋優:いや全然です。むしろ歌っている事と真逆に悩んだり、どうしていいかわかんなくなってしまったりする事の方が多いです。
──そこから自分で見つけ出した答えを曲に綴るのですか?
高橋優:そうですね。デビュー当時とかは悩んで怒っていたりする感情を、そのまま垂れ流しにするような歌を歌っていた事もあったんですが、最近はそういう怒ったりする嫌な感情をこういう風にしたら良いとか、こういう風にしたら良くなるとかそういう事を提案するように書いていきました。なので、前向きみたいだと思っていただける曲が増えたんだと思います。
──歌詞とメロディーが合わさるおかげで、音楽は成立すると思うのですが、高橋さんは、曲と歌詞が同時に出てくるタイプでしょうか?
高橋優:『プライド』に関しては割と一緒でしたね。でも、曲が先に出来る事もありますし、歌詞が先に出来る事もあるので、結構まちまちかもしれません。
──2012年にリリースされた『昨日の涙と、今日のハミング』のアコースティックバージョンが収録されていますが、歌詞が変わってきたなとご自身でも実感されるのでしょうか?
高橋優:変わった部分もありますね。この曲はスタッフが「また改めて録ってみない?」と提案してくれていたんです。普段スタッフが提案してくれた事を「そうですね!やりましょう!」っていう事は少ないんですけど、そのスタッフから凄い長いLINEが送られてきたんです。この曲を今改めて届けたいというスタッフの想いが強く伝わる内容が書かれていて。
内容を話すとこの曲は『僕らの平成ロックンロール』というアルバムに入っていたんですけど、もうすぐ平成は終わるじゃないですか?それに今の時代って昔の曲が流れる度に「昭和だね~」とか言われたりもしていると思うんですが、僕等が今聴いている曲も、何年後かしたら「平成っぽい」って過去になってしまうんですよ。その過去になっていく中で、「昨日の涙」という言葉が入っているのと、昨日と今日の事を歌っているこの曲って今このタイミングで歌う事が大事なんじゃないか?という想いをスタッフが送ってきてくれたんです。曲を書く人間としては、作った自分よりもその曲を好きになってくれるという事がめちゃくちゃ幸せなんですよ。なので、そのスタッフの気持ちに答えてあげたいという想いから、3曲目に収録しました。
──高橋さんご本人よりも、ファンの方や周りの方が更に楽曲を好きでいてくれるんですね。
高橋優:胸を張って言える事ではないんですけど、ライブの時に歌詞が飛んでしまったりとか、噛んでしまったりとかもするんですよ。だけど僕より大声で曲を歌ったりしてくれる人とかもいるんですよね。全然僕より年上の男性だったりするんですけど、そういう人を見ると自分の曲というより、あの人の曲かもしれないなって思う事もありますね。
──ライブに来られる方は、高橋さんと同世代の男性が多いのでしょうか?
高橋優:多いですね。最近はさらに増えたと思います。去年甲子園の楽曲を歌わせて頂いたんですけど、あのあたりから男子が増えた気がしますね。
──それまでは女性のファンの方が多かったのですか?
高橋優:最初は、女性が多かったですね。去年『映画クレヨンしんちゃん「襲来!! 宇宙人シリリ」』の主題歌をロードムービーって楽曲で歌わせてもらってツアーをやったら子供のファンが増えました。
──子供の頃から高橋さんの楽曲を聴いていたら、教育に良さそうですね(笑)!
高橋優:そうですか?どうなんだろう(笑)しんちゃんの曲はまだ良いんですけど、たまに際どい言葉を曲にいれたりもするので、お母さんの影響で歌ったりしてくる子もいるんですよ。その曲覚えなくていいよ(笑)って思ったりもするんですよね。嬉しいですけど。
心のどこかにまだやれるという人が最後まで聴いてくれるんじゃないか
──タイトル曲の『プライド』とカップリング曲の『僕の幸せ』は、テーマ性が共通するような所もあったりしたと思いました。どちらかに寄せたりされたんでしょうか?
高橋優:『僕の幸せ』と『プライド』に関してのテーマ性は、そんなに意識はしなかったです。どっちも最近出来た曲なので、自分のメンタルが割とそっち方向に向いていたのかもしれないです。
──『プライド』は、アニメ『メジャーセカンド』エンディングテーマですが、楽曲が出来てからタイアップが決まったのでしょうか?
高橋優:アニメのお話を頂いてから、漫画も読ませて頂き、曲を作りました。
──アニメの主人公と自分を重ねるような所は、やはりあったのでしょうか?
高橋優:ありましたね。
──楽曲の主人公は会社に勤める人のようにも感じました。
高橋優:『メジャーセカンド』のお話しを頂いたんですが、野球って9人で行うじゃないですか?そして部員って9人だけではないから、「君はレギュラーじゃないんだよごめんなさい」って言われる子たちもいると思うし、『メジャーセカンド』の中で言うと、主人公の大吾くんの親が超天才野球プレイヤーなので、その子供だから絶対野球が出来るよね?って期待されているんですが、あんまり出来ないんですよ。
そういう期待外れのレッテルを張られる人って、親の七光りじゃなくても日常生活でもあるかなって思うんです。僕も言われた事があるし、今の新生活で言うならば就職率何%で、面接で途中から興味を失くされていく感じとかもわかる。最初は「なんでこの会社を志望したのですか?」ってキラキラしたように話しかけてくるんだけど、だんだん「了解です、もういいですよ」みたいになっていくんです。選ばれる方より、選ばれない人の方が多いのかな?って考えたら君ではダメって言われてしまう事って、会社以外でもあてはまるかなって思いました。
──「そんな言葉を本当だと思うのか?」という力強いフレーズが書かれていますが、この部分はどのような想いが込められているのでしょうか?
高橋優:今そこにフォーカスをあてて頂いている事が、ほぼ答えだと思います。そんな事が本当だと思っているって完全に思っている人は、そこに反応しないと思うんですよ。だって言われたんだもんって思っていたり、そこに少しでも悔しさがあるのならその次のフレーズに続けていけると思うんです。「まだやれるのにチキショーと叫ぶ心はあるか?」とかね。完全に投げやりになっていたら、その言葉に引っかからないはず。心のどこかにまだやれるという人が、この曲を最後まで聴いてくれるんじゃないかと思います。
──「誰にも期待されてないくらいが丁度いいのさ」という歌詞がありますが、ご自身でそう思われた体験はありましたか?
高橋優:僕の場合は、ライブにも沢山の人が来てくれたりするからこういう事を言うと罰当たりなんですけど、常日頃思っています。
──CDが売れたり、お客さんが沢山来てくれると天狗になったりすると思うのですが、高橋さんにはそういった瞬間だったり、感情というのは出てきませんか?
高橋優:天狗になった方がカッコ良い人っていると思うんですよ。カリスマだったり、イケメンだったりね。天狗になっていて希望を与えられる人もいると思うんですけど、僕の場合は、絶対そういうタイプの人間じゃないんです。自分が天狗になってしまったら終わる気がします。まだまだ見せていない部分とかもあると思うし。それに「高橋 優?へえ…」みたいな感じに言われている事が、肌に感じてすぐわかる。そこで自分を諦めちゃったらもう思い通りだと思うんですよ。
僕、よく例えで話すんですけど、日本で初めてコーラっていう飲み物が来たときに、日本人はこんなに黒くてじゅわじゅわしたモノを毒だと思い込んで、ベーってやったんですって。でも、すごくカッコいい俳優さんが映画でそれを美味しそうに飲んでいるシーンがTVで放送された瞬間に、みんな手のひらを返して飲むようになっていったんですよ。
その変化というのは、じわじわと起こっていき今やコーラと言ったら当たり前のように世界中の人が飲んでいるじゃないですか?その変化が起こる前と、起こった後の時代があると思うんです。だから誰かがその変化を起こすための努力を、めちゃくちゃしたはずなんですよ。なので僕はその変化をどんどん起こしていきたいって今も思っているから、まだまだ悔しいままで終わらせたくないって思っています。
──周りの意見に対して自分がどうあるか?を歌われていると思うんですけど、サビにある「その真逆を煽る風が吹いているとしても」という所に関しては、きっと他人だけではなくて、自分のマイナス思考のような考えが風だったりする事もあると感じます。
高橋優:真逆の風は自分の中に吹いていると思っています。曲の中でも、受け取り方次第ですね。