今日を精一杯やるっていうのが、諦めたくない人にはやって欲しい
──逆にマイナス思考になってしまう瞬間って高橋さんにはありませんか?高橋優:いやいや、常日頃ありますよ。高橋チームの誰よりもマイナス思考だと思います。ただマイナス思考の一点張りはつまらないと思うんですよ。面白くないじゃないですか?マイナス思考しか喋らない人って。でもそこで思考をストップさせないのが面白いなって思います。マイナス思考なりの次のステップの見つけ方みたいなものは絶対あって、ただただプラス思考だけの奴は絶対つまらないと思う。「100%上手くいきます」って言われても、それを受け付けられない自分もいたりとかして。
『明日はきっといい日になる』っていう曲があるんですけど、この曲って今日の事どうなっている?っていう話なんですよ。今日がいい日じゃない人が、明日はきっといい日になるって言い出すんだと思うんです。そういうネガティブだけにしない、ポジティブっていう所が面白いかなって思っていますね。
──ポジティブな人って、この曲をどう捉えるのでしょう…
高橋優:例えば歌詞で言うと、「なにもかも叶えにいこう」、「そしてまた笑い合おう」っていう所は字面だけ見ると物凄く前向きで、楽観的な言葉だと思うんですよ。そういう言葉を出来るだけ持っていくようにしているんですけど、曲の終わり方も「君ではダメと言われてしまったか?」となっているので、この曲のどの部分で抽出してくるかによって、その人の選ぶ所が見えてくるのが、面白いなって思います。
──ポジティブな所をサビに持ってこられるのは、どの曲でも意識されている点なのでしょうか?
高橋優:意識したい部分もあります。強い言葉ってネガティブな方が断然強いんですよ。言葉で歌ったときは更に。例えばポジティブな言葉を、AメロBメロに持ってきて、サビでネガティブな言葉を歌うと、やっぱりサビに持っていかれちゃうんですよ。「生きる」とか「愛し合おう」とかはありきたりな言葉だったりしますけど、それをサビに持ってくる事で、バランスが取れるのかなって思ったパターンですね。そうしない時もあります。
──最後に「君ではダメだと言われてしまったか?」から始まるフレーズが再び入ってきますが、ここは狙われた所ですか?
高橋優:迷ったんですけど、狙ってやったっていうよりはこの曲の終わり方みたいなものが、サビで終わるっていうよりは、一回我に返るのが欲しいような気持ちになったんですよ。だからAメロを持っていきました。そのまま終わるでもないので、少し形は変えているんですけどね。綺麗に終わるというよりは、少し歪に終わりたかったのかもしれないです。
──卑屈になって前向きになれない人や、“諦めないで頑張ることこそ美徳”というような風潮によって何処まで夢を追いかけ続ければいいのだろう?と思ってしまう人に、何かかける言葉をお願いします。
高橋優:諦めることが先行している人は、諦めた方が良いと思います。諦めるのも勇気じゃないですか?別に一つの事に執着してやることはないと思っていて。その人の人生が充実したものになるのが最優先だから、自分が田舎で作ったアクセサリーを路肩で売るとかでも幸せだと思う。誰かが決めた幸せの型にハマる方が、絶対に居心地が悪い場合ってあるんですよ。だから諦めたいと思った人は、即座に諦めた方が良いと思う。でも諦めたくないのに、周りから冷たい風が吹いているとかだったらプライドっていうものを持っても良いと思うし。
僕の場合は、明日や明後日の事を考えないようにしていて、今日を出来るだけやりきったーって思うように色んな事をやるんです。今日面白いと思った事をやって、疲れたら寝て、明日これだって感じたものをばーんってやる事の連続だと思います。「世界が終わるとしたら、最後にあなたは何を食べたいですか?」っていう質問がありますが、その答えとして「ラーメン」っていうとするじゃないですか?でも実際、その時になったら「おでん」にしておけば良かったってなるかもしれないんですよ。
それを自分の中で決めつけて、自分の人生をマニュアル化して、この場合はこのパターンって生きると絶対不便だと思う。それより、「世界が終わるとしたら、最後にあなたは何を食べたいですか」って聞かれたら今食べたいものを絶対に答えるんですよ。なんでかっていうと、今終わるかもしれないから。それは何が大事かって、世界が終わる日の事を恐れるよりも、今終わっても良いように今やった方が良い。っていうのが、僕の中ではあるので今日を精一杯やるっていうのが、諦めたくない人にはやって欲しいです。
──タイトルを『プライド』と付けられた理由を教えてください。
高橋優:この曲の全体を通して、めちゃくちゃカッコいいスタイリッシュなモテモテの男子が歌っている歌ではないなって思ったんですね。この曲はどっちかっていうと、ダサい、泥臭い、泥にまみれた傷だらけの奴が自分を誇示している歌。プライドを持っていること自体がカッコ良い事だとはあんまり思わないんですよ。プライドって自尊心じゃないですか?カッコ良い人はもっと広くて余裕で、ふふふ~んってやっていると思うんですけど、この曲で歌われている事は「なにくそ!!」みたいな感じなので、人としてはカッコ悪いと思うんですよ。
だからそのカッコ悪い、でも愛くるしいじゃないけど、嫌いじゃないその感じにぴったりくる言葉を探したときに、『プライド』がしっくりきたんです。『プライド』って字だけみたらカッコいいって思うけど、意味を調べていくと決してカッコいい言葉ではない、自尊心の塊。それに「まだやれるのにチキショー」っていうフレーズは、プライドが高いのに、傷ついていることなのかもしれない。すごくこの曲に似合っている気がして、プライドにしました。
──『プライド』の中からピックアップしたいフレーズを教えてください。
高橋優:「他人の間違いという名の甘い蜜を貪り続けていくことは幸せなんだろうか?」っていう所は、自分の中では面白いかなって思っています。TVつけたりとか、雑誌を読んだりしたときに、誰かの不祥事とか、誰かの不倫騒動とか、ああいうのってなくならないじゃないですか?一方ではああいうのが多すぎるから、「やめてくれ、人のプライベートなんだから!」って言いつつも、ああいうのが報道されるのって見る人がめちゃくちゃ多いからだと思うんですよ。自分の人生で成功するか?失敗しないか?を考えている人って、あんまりそういう事に興味ないんですよね。だけど、一生懸命頑張っている人よりも、一生懸命頑張る事を失くした人が、人の失敗を見てそれにお金を払って笑っているっていう構図が凄く嫌なんだけど、自分にも絶対あてはまっている部分があるなって思いました。そこを後腐れなく歌っているフレーズだなって。
──個人的には心当たりのある感情ですが、やっぱりこの感情は誰にでもあるものなのでしょうか?
高橋優:誰にでもかはわからないけど、桑田佳祐さんの話で、ライブとかでめちゃめちゃに緊張していて、自分の前の出番の人とかが、失敗することを願ってたっていう有名な話があるんですけど、あそこまでの人なのに、緊張して自分のステージの前に、誰かが失敗してくれたら、少しは自分のステージが楽になるんじゃないか?っていう事をおっしゃっていて。
それを言われたら確かに、そうだよなって。自分じゃない人が、失敗したら少しハードルって下がるような気がするじゃないですか?それで、自分の人生が報われたような気持ちになっているっていうのが、人の失敗のおかげで感じる事って多かれ少なかれあると思うんです。僕にはそんな気持ち一切ありません!なんて凄く綺麗ごとを言っている気がする。自分自身、陰険な気持ちって大なり小なりあると思うし。自分自身、陰険な気持ちって大なり小なりあると思う。ただ、『プライド』は、そこの部分ともしっかり向き合って、戦っていきたいと思っている感じです。
僕は対した人間ではないけれど自分が笑うためには、あなたに笑ってもらっていたい
──『僕の幸せ』は幸せをテーマにした壮大な楽曲ですね。この曲もテーマソングが決まってから書き始められたのでしょうか?高橋優:そうですね。全部完成させたのは、テーマソングのお話しを頂いてからなんですけど、モチーフみたいなものは2、3年ぐらい前からありました。
──『ガラスの地球を救え!』と『僕の幸せ』がリンクした所って、どんな部分なんでしょうか?
高橋優:環境省の人とも何度かお話しさせて頂いたんですけど、環境の為に誰かのためにっていう話をすると、必ずそれは偽善だろう?ってなるじゃないですか?そこをもう認めちゃう歌を書きたいなって思ったんです。僕はあなたに幸せになってほしい、僕が幸せになるためには、あなたが笑ってくれていないと無理だから!っていう。それを偽善と言われてしまったらもう偽善でいいや!っていう歌です。
赤信号を渡るのに苦労しているおばあちゃんの事を助けて、みたいな話があるじゃないですか?それはおばあちゃんがやって欲しかったかどうかは聞いたのか?それは正義だと思ってやった自己満足だろうという話を誰かとしたんですけど、そういうのって自己満足で良いじゃんって思うんですよね。それで助かって、通じ合えるものがあったのならいいじゃないかって。地球も一緒で、地球を救った人がちょー嘘つきの偽善者でも良いじゃないかって思うんですよ。この曲が言いたいのは、僕は対した人間ではないけれど自分が笑うためには、あなたに笑ってもらっていたいという事です。
──“そんなの偽善だ、口だけだ”と思って立ち止まらなかった人が、立ち止まってくれるきっかけになりそうですね。
高橋優:『明日はきっといい日になる』という楽曲の中で、席を譲る譲らない問題の話をテーマに歌を書いたんですけど、あれも譲ればいいってもんじゃないっていう考え方も結構あって。立っていたいんだとか。僕もそれわかるんですよ。譲られる年齢ではないですけど。そこで相手の事を考えるという事自体が、余計な事ってやっちゃったら駄目だと思うんです。譲るべきか、譲らないべきか、っていう事を考れる人の方が、面白いと思う。答えはその都度違うし、環境問題も違う。それをこういう事ですから!ってぱちーんってやってしまえば、もうそこで考えは及ばないですし。そこで工夫し続けることが、自己満足だし、その自己満足が相手に届く日が来るかもしれないチャンスにもなる。そのような事を考えて書きました。
──タイアップが決まってから、そこに寄せたフレーズはありましたか?
高橋優:「この命と引き換えに」はまさに、タイアップが決まってからですね。
──「勝手なこと言うけど僕は君の笑顔を守りたい」って自己満足でありながらも、ちゃんとも認めているあたりが良いですね。
高橋優:ありがとうございます。ロクなもんじゃない感っていうのが、あんまりネガティブに伝わりすぎると確かに良くないなとは思っていたので、そういう風にポジティブに受け取ってもらえたら凄く嬉しいと思います。
──『僕の幸せ』の中でピックアップしたフレーズを教えてください。
高橋優:「君が言うような優しさとか真心に程遠い」っていう所ですかね。僕の名前に優っていう漢字が付くんですけど、「優しいですね」って言われたらネタで優しいと書いて優と読みますっていうくだりを色んな所でやっているんです。
実際問題優しいって言われてしっくりきたことが、一度もないんですよ。優しさと思ってやっている事があんまりなくて。どっちかっていうと自分の理の為にやっているというか。押しつけがましいのが大っ嫌いなんですよ。出来るだけそっとしておいて、何か見つかったときに手を差し伸べて、叶って嬉しそうにしていたらゲームがクリアしたみたいな気持ちになっていて。あくまでも喜びが自分なんですよ。その人が本当に喜んでいるかってわからないじゃないですか?出来るだけそこを押しつけがましくなくという事を考えたときに、優しいですよねって言われると僕がやっている事って、優しいに当てはまるのかな?って毎回考えるんですよ。
だから「君が言うような優しさとか真心に程遠い」っていうフレーズを今まで書いてこなかったなって。僕の優っていう名前は、優しい人になって欲しいという親の気持ちで付けられたんですけど、思いっきり名前負けしている自分の人生を「ろくなものじゃないそう僕もただ幸せが欲しいのさ」っていう部分で上手く歌えている気がしています。
──ここにようやく入れられたのですね。
高橋優:そうですね。優しくありたい気持ちで歌ったことはありますけど、負けを認めてしまってるとか、優しいもんじゃないですねって言っちゃったっていうのは今までなかったです。