歌詞ではそうした迷信をいくつか挙げながら、「理解できないものを信じていたら痛い目にあうよ」とサビで諭すという内容です。
ところで、ここで挙げられる迷信の数々は、我々日本人にはどれも馴染みの薄いものばかり。
そこで今回は歌詞にある迷信が、英語圏ではどのように伝えられているのかをみていきます。
「迷信」で歌われる4つの"迷信"
--Very superstitious, writing on the wall--
--まさに迷信、壁に書かれたことば--
英語圏では"see the writing on the wall"で「嫌な予感がする」「不吉な前兆を感じる」といった表現になります。
昔々、傲慢な王が宴をしていたところ、空中から一本の手があらわれ壁に言葉を書きました。
やがて、その王の国は分断され王も死んでしまうという、旧約聖書の故事に由来しています。
--Very superstitious, ladders bout' to fall--
--まさに迷信、今にも倒れそうなはしご--
はしごの下をくぐるのも、英語圏ではタブーの行動です。
これははしごの下の空間が死刑台を連想させるとか、そこをくぐることは神への冒涜を意味するなど、いくつかの説があるようです。
うっかりくぐってしまった場合は、「はしごの段のあいだから三度つばを吐く」「犬を見るまでのあいだ指で十字を組む」などすることで、不運を回避できると言われています。
--Thirteen month old baby, broke the lookin' glass
Seven years of bad luck, the good things in your past--
--13ヶ月の赤ちゃんが、姿鏡を割る
不運の7年間に、いいこともあったろう--
「13」がキリスト教圏で不吉な数字なのはよく知られていますが、鏡を割ることも不幸を呼び込む行為だと信じられて来ました。
その不幸は7年続くと言われますが、たしかにそんな長い期間であればいいことだって少しはあるだろうと思います。
--Very superstitious, wash your face and hands--
--まさに迷信、顔や手を洗うこと--
これに関しては、お清めとか厄落としといった行為のように思えますが、はっきりは分かりませんでした。
ただキリスト教圏では、日曜日の礼拝に行く前に顔や手を洗うという習わしがあるようです。
スティービー・ワンダーの魅力たっぷりの「迷信」
この「迷信」を含むアルバム『トーキング・ブック』もまた、全米チャート1位となる大ヒットを記録しました。まだまだシングル盤に重きを置いていた当時のブラック・ミュージックとしては、空前のヒットと言えるでしょう。
同じくアルバム志向を打ち出していたマーヴィン・ゲイの歴史的名盤『ホワッツ・ゴーイン・オン』でさえ最高6位だったことからも、当時のスティービー・ワンダーの人気ぶりをうかがわせます。
彼はマーヴィン・ゲイとともに、60年代に絶頂を迎えたモータウン・サウンドを、70年代にニュー・ソウルとしてさらなる発展に導いたアーティストです。
特にワンダーは、70年代らしい問題意識を訴える中でも、モータウンらしい軽妙さを忘れませんでした。
最先端でありながらも親しみやすい、当時の彼の人気の理由はこのあたりだと思われます。
因習にとらわれることの滑稽さを、痛烈かつ軽快に批判したこの「迷信」もまた、彼のそんな魅力に満ち溢れている作品だと言えるでしょう。
TEXT:quenjiro
Stevie Wonder(スティービー・ワンダー)は、1950年5月13日生まれ、アメリカの歌手、キーボード奏者。22回のグラミー受賞歴を誇り、もはや説明不要なほど偉大な音楽界の巨匠。ほかにも作曲家、音楽プロデューサーなど音楽家としてマルチに活躍している。 1950年にミシガン州で生まれ、保育器内···