卒業ソングの女王の意外な作曲法
──『compass』は原曲がものすごく印象深いというか、これだけ壮大で感動的な曲をどうするんだろうと思ったら、軽やかになってるみたいな最初はそんな印象でした。川嶋あい:『天使にラブ・ソングを』じゃないけど、黒人の聖歌隊の方々が一緒に歌ってくれるようなそういうビート感を出してみたいなと思ったんですよね。一緒に最後「ラララ」で永遠歌ってられるような世界観の。荘厳とか壮大っていうよりもよりポップなものに近づけたとは思ってますね。
──このアルバム自体、ものすごくジャンルレスですよね。30曲も入ってるのであれですけど、新しい3曲だけでも色々と。今現在川嶋さんがよく聴く音楽はどんな感じですか?
川嶋あい:今だと意外と昔に帰りたくなってくるもので、元々歌謡曲が好きっていうのが自分の音楽のルーツ的にはあるんですけども、70年代80年代の曲をダウンロードして聴いたりしてますね。
80年代の終わりから90年代の初めくらいのアイドルの、松田聖子さんの楽曲もすごく好きですし、90年代前半のJPOPのキラキラ感が出てるメロディーはちょっと懐かしくて好きです。あとテレサ・テンさんも好きなんですけど、女の情念とか歌ってそうだけどメロディーは軽やかなんですよ、お洒落で。そういった曲も聴いたりしてますね。
──新しくこれから作る曲にそういうところが影響してきそうなところもありますか?
川嶋あい:ありますね。聴いて好きになったらこういう世界観のもので次何が書けるかなってイメージしてみたりとかするので、たぶん繋がっていくものだとは思いますね。
──曲を先に書かれるということでしたけど、歌詞の世界観は考えずに曲を書き始める感じになりますか?
川嶋あい:考えないですね。全然考えずにこういう音をまず作ってみようと思って、メロディーを完璧にフルコーラス作ってそれから歌詞を書いていきます。
──どういう歌詞になるか想像しないまま音楽を書き始めるんですね。
川嶋あい:そうなんですよね。メロディー書いてこれ失恋の歌だなとか、これは夢の歌にしてみようとかテーマをそれから決めて書いていくって感じですね。
──卒業ソングに関してもそんな感じですか?
川嶋あい:そうです。『旅立ちの日に…』もそうでした。書いたときに「卒業だ!」と思って。
──へえー!川嶋さんは卒業ソングの女王ってイメージなんですけど(笑)
川嶋あい:いやいや。
──でも、卒業とか学生ってぶっちゃけリアルタイムではなくなってきたじゃないですか、なのに歌詞を書くときにいつまでもその感覚に戻れるのってどうしてだろうって思うんですけど…何かコツのようなものがあるんですか?
川嶋あい:自分自身を別の人間みたいなものに設定して、色んな情景を事細かく設定して構成して脚本家のように決めて考えて書いていきますね。卒業だったら校庭はちょっと狭くて、でもそこに桜の木があってとか、校舎はこんな感じみたいな頭の中にしか描けないんですけどそれをイメージしたときにだんだん言葉に変換されていくんですよね。いかに自分をそこの世界に宿らせるかっていう、そういう感覚がいつもあるかもしれないです。
──なるほど。ご自身の学生時代とか卒業式を思い出して書いてるわけではなかったんですね。
川嶋あい:そうです。リアルはどこかにあるとは思うんですけど、意外とあんまりです。設定して考えちゃいますね。
──映画を作るような感覚ですね。映像ができて、みたいな。
川嶋あい:そうです。一から。
──だから時代に左右されない卒業ソングというかいつの時代も古いと思わない歌詞に出来上がるんですね!
川嶋あい:ありがとうございます。
最新曲『しおり』
──一番最近の曲は『しおり』ですよね。川嶋あい:これも確かに旅立ちの歌ですね。
──自分の学生時代を思い出すのってその当時聞いていた曲に限るかと思っていましたが、『しおり』のMV見てものすごく自分の学生時代を思い出しました。魔法みたいなものを感じました(笑)。
川嶋あい:ありがとうございます(笑)。
──あれはファンの皆さんからの写真を集めたMVですか?
川嶋あい:そうですね。リアルな皆さんの投稿写真で構成させていただいたミュージックビデオになります。出来上がったときは私も不思議な感覚があって、自分がそこの写真の一人になってるかのように。違う教室だし違う学校だと思うんですけど、自分の青春がすぐ戻ってくるようなそれこそキラキラした、でもちょっと切ない感覚もあったりして不思議でした。
──いいなと思ったりもするし。学生の人たちには「今が花だぞ!」て伝えたい(笑)。
川嶋あい:ほんと思いますよね。もっと楽しめみたいな。
──ありましたよね。川嶋さんご自身の学生時代はどういう方だったんですか?文化祭とか体育祭とかって積極的に参加される方でした?
川嶋あい:小学校のときは行事に対しても皆が熱くなってました。先生もそうですし、卒業式も熱くて卒業生なんだけども毎日毎日残されて卒業式に歌う歌を2、3時間は皆で練習して本番に臨むみたいな熱い感じだったんですよ。
でも中学に入ると皆思春期になるからか恰好つけになっちゃって。“頑張るのが恰好悪い”になっちゃうので、運動会は誰も本気で走らないみたいな、そういう学校だったんですよね。学園祭も皆かったるくて来ないみたいな、そんな感じだったからこそ今の子たちに楽しんでもらいたいです、もっと楽しんでればよかったって後悔しかないので。
でも卒業式ライブとか学園祭ライブとかも行かせてもらいますけど、熱い学校がいっぱいあって、皆もこれに命かけてるって実行委員の子たちもいっぱいいるので、うらやましいなって思いはありましたね。
──けっこう頻繁に生の学生の声を聞いてるんですね。
川嶋あい:そうですね。卒業式とかでも毎校違う学校なので。今の学生の印象は、純粋な子たちが多いですね。先生たちも保護者の方も皆が温かくて、子どもたちの成長を喜んでるっていうのをすごく感じる学校が多いと思いました。
──今の子たちってどういう学生生活送ってるんだろうって思っていたのでよかったです。川嶋さんの楽曲が思い出との懸け橋になってくれることと思います。15周年っていう節目を迎えられましたけど次の20周年に向けて、アーティストとしての展望、夢をうかがってもいいですか?
川嶋あい:川嶋あいっていう作品だけじゃなくて、色んな楽曲のプロデュースや楽曲提供もどんどんチャレンジして広げていきたいですね。もちろん今も楽曲提供をさせていただいてはいるんですけど、そこで川嶋あいではできないようなチャレンジをしたいですし、音楽の世界観を広げていけるような学びが提供の中できっと生まれてくると思うので、これからも色んな楽曲をプロデュースして書いてみたいなって思いはありますね。
──ご自身でできないチャレンジっていうのは?
川嶋あい:ロックな曲を書いたりとかしたこともあったんですけど、自分の楽曲だとロックだけどもそこにキラキラ感とかJPOP感を加えて最終的に収録するものが多いので、マジロックじゃないですけど野性的な楽曲を書いてみたり、すごく恥ずかしい10代のもんもんとした恋の歌とか、色んな角度でチャレンジできたらなって思います。
──あんまりそういう曲を川嶋さんが歌われてるイメージはないですけど、楽曲提供としてそういう感じを。
川嶋あい:そうですね。
ピックアップフレーズ
──今後このアルバムを引っ提げてのツアーはされていくんですか?川嶋あい:まだ告知はできないんですけど、たぶんやると思います。
──楽しみにしてます。ベストアルバムなのでベストな曲だけを聴けるってことですもんね、ライブ行ったら。
川嶋あい:そうですね。この30作品、15年間の歴史を感じられるライブになると思います。
──初めて行くっていう人にもベストだと入りやすいんじゃないですか?
川嶋あい:そうですね。入門編として。
──今回のベストアルバムの中のベスト歌詞を選んでいただきたいんですが、1フレーズご紹介いただけますか?
川嶋あい:『見えない翼』から、「世界で一番頑張っている 不器用なあなたが好き 一つの背中に誰にでもある 見えない翼」です。これは書いていたときの感覚を覚えてるんですけど、メロディーができたときにアップテンポの曲にしたいと思ったので、キャッチーな言葉を乗せたくてずっと考えてやっと出てきたのがこの言葉だったんです。
メロディーにはまった感覚がすごく達成感があって、『見えない翼』を聴いてくださった色んな方が、ライブでリクエストをくれる曲なんですよ。何十回歌ってもこの曲のあのフレーズを聴いて元気を出して明日も頑張りたいっていう方が多くて。
うちのスタッフも自己紹介でいきなり『見えない翼』の替え歌を歌い出して。“世界で一番頑張っている 不器用な高橋です”とか言って(笑)。そんな風に色んな人の心境に当てはめてぜひ聴いてほしいなってフレーズなのでこれを選びました。
──確かに「世界で一番頑張っている」って“一番”って認めてくれてるじゃないですか。そう言われちゃったら“世界で一番頑張ろう”って気持ちになりますね。
川嶋あい:そうですね。「不器用」っていうのがポイントですね。
──間違いないです。不器用って分かってくれてるし一番って言ってくれてるし、じゃあ頑張るよ!みたいな。「一つの背中に誰にでもある」って言ってくれてることも勇気が湧きますしね。
川嶋あい:なかなか翼って気づけないというか見えないものですけど。でも必ず歩いていく、夢を叶えていく翼って誰もが持ってると思うんですよ。それを自分で探さないといけないんですけど、必ず見つけていくタイミングはあると思うのでそこまで時間はかかってもいいから歩いていこうって思いを込めたかったですね。
──この歌詞で始まるっていうところもこの曲のポイントですよね。
川嶋あい:そうですね。一番伝えたいことをしっかり。
──改めてですが、30曲もベストと言える曲があるってすごいですね。ぜひ15年前はまだ生まれてなかったって人にも聴いてもらって。当時から聴いてた人ももちろんですけど、たくさんの人に愛されるアルバムになっていただければと思います。
川嶋あい:ぜひお願いします。
──最後に記事を見てくれた皆さんに一言あればお願いします。
川嶋あい:15年間の中で生み出してきた大切な作品たちを収録してあるんですけど、まだ川嶋あいの音に触れたことがないっていう方にもぜひ手に取って聴いていただいて、少しでも皆さんの人生の1ページに寄り添えるような楽曲、歌詞があってくれたらなと思っております。
Text:愛香
Photo:橋本美波/愛香
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