不安を抱えていないか?
アラサーは人生の中でも色々変化が多い時期だ。仕事に慣れてきてバリバリ働いたり、結婚して家族を持ったり、長く続く人生の中で最も充実した時期だろう。
その一方、悩みも尽きないのがこの時期だ。職場での人間関係に翻弄され、家庭では子育てやお金のことで頭を悩まし、将来への不安を時折考えてしまう。「今の自分はこのままで良いのだろうか。」と日々葛藤している人も少なからずいるだろう。つまり、いろいろ大変な時期なのだ。
そんなアラサーの人々への応援ソングが奥田民生の『イージュー★ライダー』。
1996年に発売された6枚目のシングルで奥田民生と言えばこの一曲を挙げる人も多い。もちろん映画「イージーライダー」をかけ合わせているのだが、更にタイトルの「イージュー」とは、音楽業界の用語。
ギターコードのドレミ…はCDEと置き換えられ、3番目だからEが3、そこに10(じゅう)を加えてイージュー(E10)となる。奥田民生が31歳の時にリリースされたことからも、自分自身と同じアラサーへ向けられたメッセージソングと言える。
この曲の魅力は、これぞ奥田民生ワールドの「ゆるさと解放感」が沢山詰まっているところにある。一番の歌詞に次のようなフレーズがある。
イージュー★ライダー
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何もそんな難しい事
引き合いに出されても
知りません全然 だから
気にしないぜ
とにかく行こう Wow…
≪イージュー★ライダー 歌詞より抜粋≫
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働き盛りで俺はこのプロジェクトのキーマンだと思っているサラリーマン諸氏、疲れて家に帰れば子供の小学校の宿題の手伝いが待っている、そんなお父さん達には染みるに違いない。
人生の目的だとか、未来がどうであるだろうかだとか、世間からどう思われているだとか、いろいろ考えてしまうのが人間というもの。
そんな人間に対して「そんなに深く考えないで自分が好きなように生きていこうぜ。」と諭してくれる。それが押しつけがましくなく、すんなり受け入れられるのだ。
そして2番のサビではこの曲で一番伝えたいであろうフレーズが出てくる。
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僕らは自由を
僕らは青春を
気持ちのよい汗を
けして枯れない涙を
幅広い心を
くだらないアイデアを
軽く笑えるユーモアを
うまくやり抜く賢さを
眠らない体を
すべて欲しがる欲望を
大げさに言うのならば
きっと そういう
事なんだろう
≪イージュー★ライダー 歌詞より抜粋≫
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僕らは自由を求めてる
僕らは大人になってきたけれどそれでも本当は自由を求めている。僕らは大人になってきたけれどそれでもまだ青春を求めている。
気持ちの良い汗をかいていたいし、枯れない涙を流しながら生きるピュアな少年の心をずっと持っていたいのさ。利害関係だけで判断しない心と秘密基地を作るくらいくだらないアイデアと、落ち込んでいる人をクスッと笑わせるユーモアも忘れない。
そうそう、時にはうまくやり抜く賢さも必要なのだろう。眠らなくても大丈夫だぜって気合いは今も持っている、自分の欲望はすべて満たしたい野心ももちろんある。
これぞ、男が常にこうありたいという魅力的な要素のオンパレード。きっとオンナにはわからない男からみた男の心構えがここにぎゅっと凝縮されている。
●イージュー★ライダー
ゆるい雰囲気がカッコいい。
でも、奥田民生はそれすら、”大げさに言うのならばきっとそういう事なんだろう”とゆるく結んでしまう。
「まあそんな感じなんじゃないかな。」というマイペースな民生節。伝えていることはすごく全うでストレートな気持ちなのだけれど、それをストレートに伝えるのは少し照れるからゆるい雰囲気を身にまとう。それが只々カッコ良いのだ。
あの笑いの天才松本人志にさえ「大抵の人はええなぁ~、うらやましいなぁ~て絶対言うと思う。余裕があるあの感じ。」と言わしめてしまう存在。
『イージュー★ライダー』はそんな奥田民生からアラサー男子へ向けられたゆるい人生の応援歌なのだ。
TEXT:井本佳孝