命に嫌われているとは?
『命に嫌われている』とはカンザキイオリが初音ミクを使用し作成したボカロ楽曲で、2017年8月6日にニコニコ動画、9月30日にYouTubeにて公開されました。
2020年9月時点でニコニコ動画で253万回再生、YouTubeではなんと1432万回再生された大人気曲で日本国内だけでなく海外からも注目を集めています。
楽曲、歌詞、MVのすべての世界観と、二面性の葛藤が混ざり合い、生きるということについてを深く考えさせられるのではないでしょうか。
作曲者「カンザキイオリ」について
作詞・作曲・編曲はカンザキイオリ。カンザキイオリは初音ミクだけでなく、鏡音リン・レン、IA、琥珀メリーなど様々な楽曲政策ソフトを使用して作曲、編曲を手掛けています。
初投稿の『プロテクト』という楽曲投稿時は「黒柿」という名義で投稿していました。
作風が人に思いを伝えることを重視するのではなく「自分」に重きを置き、苦悩と葛藤が書かれていることが多く、問いかけてくるようなメロディーで多くの若者の共感を得ています。
楽曲、コーラスなどカンザキイオリ自身も歌っている楽曲があります。
しかしそんなシリアスな楽曲を発表するカンザキイオリは生き物大好きで明るい性格の持ち主。
エゴサーチに没頭したりSNSで楽しませてくれる人柄を持っています。
現在はイメージソングの書き下ろしや、Vtuberへの楽曲提供等の活動も積極的に行っていて、幅広く活躍しています。
歌詞には負けていない音の共鳴
この曲の印象的なのはなんといってもスタートから走り出すかのような疾走感溢れる四つ打ちのタイトなリズム、そのリズムは一見心臓の音にも聞こえますよね。
このリズムを引っ張っているのが人の性格を表しているような淡々とした電子ピアノ。
そこにベースが加わり、曲の中盤へ差し掛かると悲壮感を表すかのようなストロングス、控えめにギターが加わると徐々にいろんな感情がぶつかり合っているようです。
後半へ差し掛かると全体で音質を変化させ、音で人を表すかのような表現で、シンプルなように聞こえますが複雑に入り組んでいて、音だけでも歌詞を表しているような音楽性を感じることができるのではないでしょうか。
「命に嫌われている」の歌詞を読み解く
『命に嫌われている』は、なんといってもインパクトが強すぎるほどの歌詞が特徴です。周囲に対しての若くトゲトゲしい否定、その否定を周囲に投げかけ共感を求めるところから始まります。
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「死にたいなんて言うなよ。」
「諦めないで生きろよ。」
そんな歌が正しいなんて馬鹿げてるよな。
実際自分は死んでもよくて周りが死んだら悲しくて
「それが嫌だから」っていうエゴなんです。
≪命に嫌われている。 歌詞より抜粋≫
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少年が青年になるにつれ色々なことに疑問を抱くようになります。
そんな中、綺麗事を歌う歌はエゴイズムだと言い切りますが、これは感情の二面性を表現しているように感じます。
特に「自分は死んでもよくて 周りが死んだら悲しくて」という部分が孤独になりたくない、一人にしないでという心を隠していてかまってほしいという気持ちを表わしていることが隠されているようです。
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他人が生きてもどうでもよくて
誰かを嫌うこともファッションで
それでも「平和に生きよう」
なんて素敵なことでしょう。
画面の先では誰かが死んで
それを嘆いて誰かが歌って
それに感化された少年が
ナイフを持って走った。
≪命に嫌われている。 歌詞より抜粋≫
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自分を着飾ることで注目されたい、他の人を見ないで自分を見て欲しいという感情があるのに対し、現実では自分のことは主張できないで周りに流され、良くない方向行ってしまうのでしょう。
少年時代好きだった子に対して嫌がらせをする行動に似ていますよね。
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価値観もエゴも押し付けていつも誰かを殺したい歌を
簡単に電波で流した。
軽々しく死にたいだとか
軽々しく命を見てる僕らは命に嫌われている。
≪命に嫌われている。 歌詞より抜粋≫
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1番のサビの歌詞の一部です。ネット上で言いたい放題言うこと。それによってどこかで誰かを傷つけているかもしれない、迷惑をかけているかもしれないという後ろめたい劣等感の塊を表しているのでしょうか。
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生きる意味なんて見出せず、無駄を自覚して息をする。
「寂しい」なんて言葉でこの傷が表せていいものか
そんな意地ばかり抱え今日も一人ベッドに眠る
≪命に嫌われている。 歌詞より抜粋≫
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孤独なのにその孤独を認めることができず現実から逃げている劣等感…。そしてこのあとの歌詞と合わせるとベッドに逃げ妄想にふける姿が目に浮かびます。
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幸福も別れも愛情も友情も
滑稽な夢の戯れで全部カネで買える代物。
変わらず誰かがどこかで死ぬ。
夢も明日も何もいらない。
君が生きていたならそれでいい。
そうだ。本当はそういうことが歌いたい。
≪命に嫌われている。 歌詞より抜粋≫
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この曲の重要な部分2分38秒にて楽曲に"ノイズ"が走ります。
ここからは少年が青年に生まれ変わると同時に、いろいろなことに気付きはじめるような歌詞に変わっていきます。
誰でもいいのではなく、ここで自分が伝えたい人を見つけることができ、自分が望んでいるものは大切な人が生きていればそれでいいのだということに気づきます。
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結局いつかは死んでいく。
君だって僕だっていつかは枯れ葉のように朽ちてく。
それでも僕らは必死に生きて
命を必死に抱えて生きて
殺してあがいて笑って抱えて
生きて、生きて、生きて、生きて、生きろ。
≪命に嫌われている。 歌詞より抜粋≫
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最後の部分ですね。ここは大切だと気付いた人と向き合い進んでいくという覚悟が感じられます。そしてそれは自分だけでなく、一緒に頑張ろうという強いメッセージを伝えています。
強いメッセージを伝えていた
一人の青年の成長が伺える『命に嫌われている』という曲はたくさんの視点から世界観を見ることができます。現在の生活に疑問を抱いている人、生きることに疲れた人、落ち込んでいる人にとって、前半で共感を得て後半は励まされ、ポンと背中を押される一曲ではないでしょうか。
この曲は暗いと思われがちな曲ですが、「本当は頑張るんだ。諦めないぞ」という生命力の溢れた楽曲です。
今一度、生について向き合い、聞いてみると違う一面を発見できるかもしれません。
TEXT yone