なぜ『ミミズ』?
──続いて、majikoさんが作詞作曲されている『ミミズ』ですね。これもすごい曲ですね。曲が生まれたきっかけは?majiko:これは、夏らへんに書いた曲で。死んだミミズを見つけて。そこからこのタイトルをつけたんですけど。その前まで、歌詞はできていたんですけど。タイトルは、本当に、夏に死んだミミズを見つけてから、『ミミズ』良いなと思って。
死んだミミズと自分を当てはめているような曲だと思いますな。
──私も、ミミズにしても人にしても、なんで干からびるとわかっていても日向に出てくるんだろうって思うんですよね。だから、本当にこの曲で歌われていることはミミズがぴったりのだなって思いました。
majiko:土の中にいても、出てきても死んじゃうってなあ…、と。
スタッフさんとかに、本当に『ミミズ』でいいの?と言われたりしました。でも、これは、絶対に『ミミズ』じゃないとだめだと思っていて。
──ミミズもこの主人公も、最終的に干からびるとしても足掻く、その意味はどこにあるとmajikoさんは思われますか?
majiko:生きていることじゃないですかね。分かっているけど、でも、そうやって干からびてあがいて傷を負ったとしても、今、生きていることというのはすごく答えになっているというか。今まで生きてきたことを褒めてあげたいと、私は思いますね。だから、一番最後に、めちゃくちゃサビで言っていますけど。これは、自分に言い聞かせるように。だから、「生きてきたから 生きてきたんだ」と2回書いたんですけど。
──その部分、主人公の感覚になれる気がするなあ。「涙、溢れて止まりゃしないや」というところなんか、本当に頑張ったねと言いたくなりますよね。
majiko:そうですね。やっぱり、傷を負っている人って、すごく優しい人だと思うんですよね。優しい人が損をするなんて、絶対にあってはいけないことだなと、私は思っていて。
だから、「痛みを隠すのが強さなら 強い人なんてなれなくていい」と書いていて。「優しい人なんかなれなくていいよ」みたいな。
──素敵。
majiko:ありがとうございます。
──「スピードを上げても 赤になれば止まるんだもんな」というのは、誰かに向けて皮肉で言っているんですか?それとも、自分に対して言っているような?
majiko:「「もういい。」」というのは、完全なる諦めですよね。「もういい。」と言って、車なり、自転車で、点滅している青信号に向かって、轢かれても良いやと思ってスピードを上げるんですけど。赤になるとちゃんと止まる。死にたい死にたいと言っていても、ぜんぜんそんな勇気なんてないくせに、みたいな。
──この人は、自分で分かっているんですね。
majiko:そういう感じですね。
──繰り返し傷ついてきているんでしょうね。
majiko:そうですなあ。
──それでも生きるって、本当に美しいですよね。
majiko:そうですね。傷ついた人って、思慮深くなるし、すごく素敵だなって思います。
──何かあったときもこの曲に助けられそうな気がしますね。
majiko:ありがとうございます。
──しかも『ミミズ』というタイトルで、本当にミミズのことまで愛おしくなってきちゃうようで。虫は嫌いなのに、そういう思いになるような愛に溢れている曲ですね。
majiko:私も虫は嫌いですが。そうですなあ。
──この主人公は「泣きたいときですら誰もいやしない」と思っちゃっている状況ですが。最終的に、「「頑張ったね。」」と言っているのも、きっと自分から自分に言っているんですよね?
majiko:最後の部分は、本当に受け取り手に任せるんですけど、これを書いたとき、過去の自分に言っているという感覚もあったんですよね。
すごく引きこもっていて。これは、本当に、過去の自分って、絶対に今よりも皮肉だと思うし、何を言われてもぜんぜん信じないし、“どうせ”という気持ちがある。当時の自分だったら、「頑張ったね。」って誰に言われても、先生に言われても、親に言われても、“言い慣れたようにしやがって”という皮肉があったと思うんです。
でも、あのときに、「頑張ったね。」って言ってもらえたら、なんか違ったんじゃないかなという思いも今ではありますね。だから、認めることっていうのは、本当に大事なことだなと思っていて。皆、認められたいじゃないですか。
──今、親という立場の人や学校の先生とかに、このインタビューをぜひ見てもらいたいですね!(笑)
majiko:ぜんぜん!(笑)
──私もすごく思うんですよ。「頑張ったね。」って、誰かに認めてもらえていればって。それを人の上に立つ人間にはわかっていてもらいたいなと思うんです!
majiko:本当にそうですよね。やっぱり、言葉にするのは大事ですね。認められないと、自分を卑下する人間になっちゃうじゃないですか。
自分もそうなんですけど、そんな自分を卑下する必要はないなって。…難しいんですけど。
──majikoさんご自身は…
majiko:結局は私も自分でこういう生き方をしちゃっているんですけど。例えば周りが冗談めいて、自分が傷つくような、すれすれのところを突いてくる人っているじゃないですか。それで、一緒になって、自分を防御するために、自分も「そうですよね、自分、こうなんで。」って言っちゃうような。
でも、帰ったあとに、自分にごめんと思って。そんなこと言いたくなかったよね、って。だから、最近は、絶対に自分を貶めないというのが、目標ではあるんですけど。難しいですね。
──あぁ〜〜(泣)!めちゃめちゃmajikoさんが愛おしくなる!!愛したくなりますね。
majiko:愛おしい、ですか(笑)。ありがとうございます(照)。
──この曲はたくさんの人にいっぱい聴いてほしいな。メロディーは暗くなくて、意外と聴きやすいですよね。
majiko:そうなんですよ。ライブでものれるような。でも、私のテイストも入れたような曲をやりたいと思っていて。今回もアレンジをてっちゃん(Gt.木下哲)と一緒に。『声』とか『パラノイア』を一緒にアレンジしてくれた人が、『ミミズ』も一緒にやってくれていて。
“ライブで、1曲目でやりたいね”っていうことでこういうアレンジにしましたね。
──初めて聴いたときは、サビのメロディーと、Dメロの感じとが、曲が変わったかと思うくらいの違うように感じました。
majiko:そうですね。最初のデモの段階から、最後のDメロはガラッと変えようという話になっていました。Dメロの部分は、この主人公にとってはちょっとした革命なので。
──この曲を聴いて、どういうふうに受け取ってもらえたら良いか、どういうときに聴いてもらえたら嬉しいか、っていう思いはmajikoさんの中にありますか?
majiko:音楽って、エフェクトだと思っているんです。こういう曲が欲しいって、誰しもあると思うんですよ。インストだけで良い日とか、人の声で何か革新的なことをついていることが歌いたいなという日もあるし。それぞれの聴きたいときに聴いていただければ良いなと思っています。