「拝啓ドッペルゲンガー」の誕生
前作「敗北の少年」から約4年ぶりとなる、kemuの9作目のボカロ曲である「拝啓ドッペルゲンガー」は、2017年5月31日にニコニコ動画に投稿されました。圧倒的反響から6時間21分という驚異のスピードで殿堂入り(10万再生)を果たし、投稿から7日経った6月7日20時49分、ハーフミリオン(50万再生)達成。
その後、2017年7月21日13時11分頃、kemuの9曲目となるミリオン達成し、全曲ミリオン持ちPの称号を獲得しています。
「拝啓ドッペルゲンガー」とはどんな曲?
「拝啓ドッペルゲンガー」は、ボーカルのメロディがかなり早いテンポと、ボーカロイドの高い声とはギャップがあるほどのヘヴィメタルのようなギター、重低音が響くベースやドラムによる畳み掛けるように重厚なハードロック調の楽曲となっています。ではここで、歌詞の一部を抜粋してご紹介します。
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「どうもこんにちは君の分身です」
何の冗談か目を擦ってみる
影が二つ伸びて
そしてまた幕は上がる
「もう一人自分が居たらとあなたは言いました」
「そんな真摯な願いが僕を呼んだのさ」
そりゃ願ったとも
艱難辛苦 全ての代行者
≪拝啓ドッペルゲンガー 歌詞より抜粋≫
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本来「ドッペルゲンガー」は人生の終わりの前兆だと一般的に解釈されていますが、この曲に出てくるドッペルゲンガーは、そういった前兆ではなく本人に入れ替わろうとしている影だと推測できます。
また「艱難辛苦」は、色々な困難や嫌なこと意味します。
主人公・僕は、困難などのめんどくさい事を自分の代わりにしてくれる誰かが欲しいと考えているようです。
そういった人の甘えや怠慢に漬け込んで、ドッペルゲンガーが主人公に入れ替わろうタイミングを見計らっていると解釈できます。
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拝啓ドッペルゲンガー 君は 君は誰?
拝啓ドッペルゲンガー 誰は 誰は君?
ちょっと待って
知らない昨日 知りもしない言葉
そうやっていつの間にやら影は溶けゆく
僕は何なんだろう
ねえどうか存在を返して
≪拝啓ドッペルゲンガー 歌詞より抜粋≫
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僕がドッペルゲンガーに色々なことを任せているうちに、色々なことが以前よりうまく回っていきます。
友人関係、勉強、全てにおいて僕よりもより良い僕になっていくドッペルゲンガー。
その中で僕は「君は誰?」「僕は誰?」「僕のいる意味は?」と、どんどん自分の存在意義が分からなくなってしまいます。
そして、全部うまくいってたはずなのに、僕が望んだ「結果だけ」が生まれているはずなのに、明らかに周りの人の反応が以前と違うものになっているのです。
僕じゃない僕(ドッペルゲンガー)をみんなが肯定していきます。
ドッペルゲンガーに僕の居場所奪われたことを気づいた瞬間でした。
気づいた時には、僕とドッペルゲンガーの立ち位置は変わっていて、どこに行っても両親、友達ですらみんな僕のことを知らず、本当の僕を覚えている人がいない現実。
僕自身の甘えから、周りから認められる為に頼んだのに、気がついたら本当に僕の全ての代行者になってしまい、僕の存在が消えてしまいました。
僕はドッペルゲンガーに「僕の存在を返して」と叫ぶしかなかったのです。
しかし、ドッペルゲンガーに元の僕を奪われたので、もう元に戻ることはできません。
そこで僕は、元の生きていた世界に戻る為に、ドッペルゲンガーと言う名の影から抜ける為に、前の僕のような自分の代わりを探しているような人を探していくのが、この「拝啓ドッペルゲンガー」なのです。
「拝啓ドッペルゲンガー」は歌い手たちにも影響を与えた神曲
「拝啓ドッペルゲンガー」は現在、多くの歌い手によって「歌ってみた」が投稿されています。これは、「拝啓ドッペルゲンガー」の生みの親、kemuへのリスペクトを込めて歌っているそうです。ではここで、オススメの「歌ってみた」をご紹介します。
オススメその①
拝啓ドッペルゲンガー/まふまふ【歌ってみた】
オススメその②
☪ 拝啓ドッペルゲンガー / 天月-あまつき- 【歌ってみた】
オススメその③
拝啓ドッペルゲンガー 歌った【あらき feat.nqrse】
オススメその④
そらる-拝啓ドッペルゲンガー 【歌ってみた】
それぞれ違った歌声と世界観に惹かれてしまう「歌ってみた」ですが、「拝啓ドッペルゲンガー」の魅力に心を奪われた多くの歌い手がこぞって歌うこの曲を、もっと多くの人に知ってほしいと願います。
TEXT UTAKATA