アニメの世界観とリンクする歌詞
アニメ『BANANA FISH』に登場する主人公のアッシュは、ストリートキッズのボスで、絶世の美貌とIQ200の知能に加えて、卓越した殺人技術の持ち主である。
兄が残した謎の言葉「バナナフィッシュ」を追う中で、才能を駆使し、強大な敵と戦っていく。
共にバナナフィッシュの謎を追い求めるカメラマンの助手・英二の存在が、アッシュにとって唯一の安らぎだった。
望んで持ったわけではない、自分の優れた能力に苦悩するアッシュの姿が歌詞に表現されている。
----------------
生まれ落ちた
その時には
泣き喚いていた
奪われないように
くたばらないように
生きるのが精一杯だ
胸に刺さったナイフを
抜けずにいるの
抜いたその瞬間
飛沫を上げて
涙が噴き出すでしょう?
≪Prayer X 歌詞より抜粋≫
----------------
生まれた時は本能のままに泣き叫べたが、生きていく中で人と上手く付き合っていく為には、本音を押し殺し、本性を隠さなければならないこともある。
私たちも日常生活の中で、人と接する時そういった場面に遭遇することは多々あるので、自分と重ね合わせて、どこか共感できる歌詞になっている。
人には誰でも、忘れたい過去の1つや2つはあるものだろう。その中でも、人にしてしまった悪事は自分の心の中にしこりとなって残る。
容赦なく人の命を奪ってきたアッシュは、自分の犯した罪を悔やんでいることが「胸に刺さったナイフ」という歌詞から読み取れる。
“なぜ生きているのか?”という疑問に対する答えとは
アッシュの心情を中心に、アニメの世界観に忠実に沿った形で作られた歌詞の裏テーマは、“人生観”ではないだろうか。“なぜ生きているのか?”
生きることに対しての、率直な疑問に対する答えが歌詞の中にある。
----------------「自分の居場所」とは“本当の自分”のことを指す。
自分の居場所でさえも
見失っているの
怒りに飲まれて
光に憧れて
今日も空を眺めるのでしょう
≪Prayer X 歌詞より抜粋≫
----------------
人には、自分が何者かを知りたいという欲求が、誰しも少なからずある。
何者であるかが分かることによって自分を肯定でき、生きやすくなるからだ。
しかし、“自分はこういう者だ”と言える人はそんなに多くはない。
この歌詞では、“人は本当の自分を探す為に生きている”ということを言っている。
簡単に言うと、“人生は自分探しの旅”とでもいうところだろうか。
日々を送る中、本当の自分とは何なのかを探し求め、苦悩や葛藤、「光に憧れて」の歌詞から読み取れる希望や喜びといった様々な感情を抱きながら、迷走している様が描かれている。
『Prayer X』のXとは『BANANA FISH』のアッシュのことでもあるが、与えられた命の中で日々懸命に生きる、私たち人間のことでもあるのだ。
TEXT 蓮実 あこ