10回も書き直した『藍』の歌詞
スキマスイッチの3枚目のオリジナルアルバム『夕凪ブレンド』の最初に収録された楽曲『藍』。
ピアノの伴奏から始まる可愛らしいメロディと共に、男の子が難解な問題を前に自問自答しているような歌詞が特徴である。
『藍』は、メロディ制作段階で苦労した楽曲でも知られており、この形になるまでに10回ほど書き直したという。
書き直した末に完成したこの『藍』は聴いた制作関係者スタッフを感動させ、後のファン投票では2位を獲得。ベストアルバムで、再登場を果たすことになる。
この時、1位を獲得したのはストレートに想いを歌った『奏』だ。この楽曲と比べて、遠まわしに想いを歌っている『藍』。この二曲は、時に対比されることもある。
しかし『藍』は、聴いていると想いをあまり口にしない男の子の話を聴いているような気分になってくる。
思わず応援してあげたくなってしまうような、『奏』にも負けぬ良さがあるのだ。
今回は、この『藍』の歌詞に焦点をあて、意味を細かく考えていきたい。
藍
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「愛」どこで誰が創造したもんなんでしょうか 難解なんだね
感情ってどこへ向かうべきもんなんでしょうか そっと教えてよ
飛ぶ鳥は大空を迷うことなく飛べるのに
いったい僕らはどこへ向かうんだろう
≪藍 歌詞より抜粋≫
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恋愛の成功率はね 散々でね いつだって成就しないまま
とはいえ好きになっちゃうんじゃ もう嫌になるよ
どうかいなくなれ こんなんなら存在自体よ消えちまえ
そう思ってどのくらい経つだろう
来週はいつ会えるんだろう
≪藍 歌詞より抜粋≫
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主人公の男の子は考え方が理論派なのか、「感情はどこに向かうものなのだろう」と確かな答えを出そうとしている。
しかし、彼が解こうとしている問題は人の想いの数だけ答えがあって1つに絞ることはできない。
もう好きな人がいる
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恋愛の成功率はね 散々でね いつだって成就しないまま
とはいえ好きになっちゃうんじゃ もう嫌になるよ
≪藍 歌詞より抜粋≫
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主人公も頭であれこれ考えていても、答えがない事はわかっているのだろう。
過去の失恋を確率に当てはめて諦めようとしているが、もう好きな子がいるのは確実である。
けれど、恋をするという事は嬉しくもあり、同時に思いが通じなければ痛みに変わる。“嫌になるよ”と言ってしまうのは、そんな経験をしたことがあるからだ。
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最大の問題点はね 現状じゃね どうしようもない関係だね
≪藍 歌詞より抜粋≫
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その反面で、やっぱり相手を想っている。
ちょっと足りてない積極性
友達の関係が続いていて、その関係を壊すのが怖いのか、それとも友達関係にすらなれていないのか…。
どちらにせよ、これほど客観的に自分を見る事ができているのならば、答えはもうすぐそこにある。
そう。自分が一歩、相手に向かって踏み出すだけだ。ただ、それだけのはずなのだ。
『藍』に足りないのは、積極性だ。自分の気持ちを一方的に押し付けない感じには好感が持てるが、聴いている側としては焦れったくてしょうがない気持ちになる。
結局は、相手を想い大好きだってことだろう?あと一歩踏み出してほしくて仕方がない。
TEXT:空屋まひろ