再開の約束
別々の道を歩む時、人は再会を約束する。時間も場所も決めた約束もあるし、そうでない場合もある。約束のまま終わってしまう事があったとしても、再開を祈る気持ちほど確かなものはない。
BUMP OF CHICKEN通算6枚目のシングル『ロストマン』は、そんな再開の約束をテーマにした楽曲である。
2019年の箱根駅伝で再び注目された。この『ロストマン』は2019年の箱根駅伝のTV中継中にCMとして楽曲が使われると、ネット上をざわつかせた。
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なるほど、歌詞を紐解けば、この曲のメッセージとランナーとに共通するものはたくさんある。それだけのエネルギーを秘めていた訳だ・・・
仮タイトルはシザースソング!?
“切り取った”という歌詞が含まれる事から、仮タイトルで『シザースソング』ともなるはずだった。作詞のみで9ヶ月かかり、ボーカルで作詞作曲も担当する藤原基男も「完成させるのにどうしようもなく時間がかかった」と語っている。
直訳すると失った男となるナンバーだが、そんな男にも再開を約束している相手がいる。
「人によって解釈はそれぞれあっていいが、この曲は“失敗した今の自分”と“失敗しなかった場合の自分”がいつか再開をする曲である」
生みの親でもある藤原が、あるラジオ番組で発言した内容にもあるように、可能性としての自分と再開の約束をしたロストマン。彼は果たして、再開をする事ができるのだろうか?
ロストマン
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状況はどうだい 僕は僕に尋ねる
旅の始まりを 今も 思い出せるかい
選んできた道のりの 正しさを 祈った
≪ロストマン 歌詞より抜粋≫
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(中略)
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破り損なった 手造りの地図
辿った途中の 現在地
動かないコンパス 片手に乗せて
霞んだ目 凝らしている
君を失った この世界で 僕は何を求め続ける
迷子って 気付いていたって 気付かないフリをした
≪ロストマン 歌詞より抜粋≫
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BUMP OF CHICKENは多い時で1年に5曲という場合もある程、楽曲のリリースペースが早いバンド。そう考えても、この楽曲にかけた制作期間は長くファンの間でも有名な話となっている。
彼らの指折りの名曲として知られているからこそなのだが、藤原本人も次の段階に進む為に必要な通過儀礼と思っていたそうだから、バンドにとっても特別な1曲と言える。
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状況はどうだい 僕は僕に尋ねる
旅の始まりを 今も 思い出せるかい
≪ロストマン 歌詞より抜粋≫
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旅をしていると、自問自答が多くなる。一緒に旅をする仲間がいれば話は別だが、主人公は1人旅。自然と尋ねる相手は自分になってくるし、今までの道のりを思い返すことも増えてくる。
旅になぞらえているが、こうして聴いていると人生における選択の岐路を歩いている途中にも思えるのは、選んできた道のりの「正しさ」に重点を置いているからだ。
選択した道を、胸を張って歩けるように
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選んできた道のりの 正しさを 祈った
≪ロストマン 歌詞より抜粋≫
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気まま旅人であれば、地図とコンパスを片手に自由に歩いていけば良い。しかし、責任や自分の人生を左右する選択の道になってくると、失敗をしたくないと考えるのが普通だ。
選んだ道が自分にとって正しかったのか、それは進んでみるまでわからない。
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強く手を振って
あの日の背中に
サヨナラを
告げる現在地
≪ロストマン 歌詞より抜粋≫
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それがわかるのは、“失敗しなかった場合の自分”に再会できた時だ。そうして。改めて向かい合い心からの別れが言えたなら、きっと自分の道をはっきりと信じられるのだろう。
動き出したコンパスは、主人公の時間が進み始めた証なのだから。
迷子になったら、この曲を思い出して
直訳すると失った男となる『ロストマン』だが、本来の意味は迷子。
長い人生の旅路の中で、自分の選択は果たして正しかったのか迷う事もあるだろう。そんな時こそ、この楽曲を聴いて欲しいのだ。
選択されなかった自分がどこかで、再会の時を待っている。
TEXT:空屋まひろ
BUMP OF CHICKENは、トイズファクトリーに所属する4人組のロックバンド。独特な世界観とボーカル藤原の圧倒的歌唱力、更にはドラマの他、アニメやゲームとのタイアップ曲も多く、幅広い年齢層から支持を集めている。 幼稚園時代からの幼馴染であり、1994年、当時中学校の同級生であった4人が、文···