「紅 KURENAI」はYOSHIKIが父への思いを綴った曲?
『紅 KURENAI』は、作者であるYOSHIKIが父親を思って書いた曲とされています。しかし、これに関してYOSHIKI本人は言及していません。ただ、YOSHIKIの父は、YOSHIKIが10才の時に自殺をしてしまいました。それに対し、YOSHIKIは「父に対して、愛、恋しさ、怒りがミックスされている」と語っています。
父への思いが感じ取れる世界観を持つ「紅 KURENAI」
確かに『紅 KURENAI』の歌詞を見てみると、この曲の世界観 は、YOSHIKIが語っている死んだ父に対する思いとマッチしているように感じ取れます。YOSHIKIが父を思って書いた曲というのは、おそらくではありますが、間違いないのではないでしょうか。
「紅 KURENAI」は父親が子を見守る曲
ただ、歌詞のストーリーを見て思ったのですが、ただ単に子が父を偲んでいる曲と簡単に解釈はできませんでした。おそらくこの曲はその逆で、来世に行ってしまった父から、現世に残してきた子を思う気持ちを表現した歌なのではないでしょうか?
つまり、YOSHIKIがあの世にいる父が、どのような気持ちで自分を見守っていてくれるのか、という気持ちを表現しているのではないかと感じられます。
つまり、単なる鎮魂歌ではないのです。
X JAPAN「紅 KURENAI」の歌詞を独自解釈
では、独自解釈となりますが、『紅 KURENAI』の歌詞を見ていきたいと思います。まず、『紅 KURENAI』には日本語と英語の歌詞が混在しています。
曲は全体を通して「俺」の視点となっていますが、英語部分を翻訳してみると、英語の部分だけ「お前」からの視点になっているのではないかと感じました。
その前提で歌詞を見ると、意味のつじつまがかなり合ってきます。
※()和訳です。
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I could not look back, you’d gone away from me
(僕は振り返ることができず、あなたは去って行った)
I felt my heart ache
(僕は心が痛い)
I was afraid of following you
(僕はあなたを追うことが怖い)
When I had looked at the shadows on the wall
(壁に映る影を見たのはいつのことだろう)
I started running into the night to find the truth in me
(夜、真実を見つけるために僕は走り出す)
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前述の通り、日本語部分の「お前」からの視点と解釈しました。
日本語部分の「俺」に対する思いを綴っている内容です。
分かりやすくするため「I」を「僕」と表現しました。
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嵐吹くこの街がお前を抱く
吹き抜ける風にさえ目を閉じる
お前は走りだす何かに追われるよう
俺が見えないのかすぐそばにいるのに
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来世から見た現世は嵐が吹き荒れるように曇っている、という情景が見えます。そして、そこにいる「お前」を見つけます。
「お前」は、風に目をそむけ、何かに追われるように走り出します。
「俺」は「お前」のすぐそばにいるのに「お前」はそれにまったく気づきません。そう、「俺」は来世から来た存在のため、現世の人たちには見えない存在なのです。
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人波に消えて行く記憶の吐息
愛のない一人舞台もう耐えきれない
All of you in my memory is still shining in my heart
(あなたの思い出は全部、僕の心の中で静かに輝いている)
すれ違う心は溢れる涙に濡れ
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現世の人にとって「俺」の思い出は徐々に消えていきます。たった一人取り残された「俺」は、常に孤独でもう耐えられない気持ちです。
しかし「お前」だけは気持ちを理解できます。
「あなたの思い出は全部、僕の心の中で静かに輝いている」。
しかし現世の人間と来世の人間は、接触することはできません。
その感情は常にすれ違ってしまいます。
そして、お互いに涙だけが溢れるだけなのです。
――――
紅に染まったこの俺を慰める奴はもういない
――――
「紅」は「死」「血」「孤独」「絶望」「後悔」などの総称と考えて良いでしょう。
血に染まった自分、つまり、すでに死んでいる自分を慰めてくれる人はもはや誰もいません。
来世から一人孤独に現世を見つめる自分の切ない気持ちが表現された1行です。
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もう二度と届かないこの思い
閉ざされた愛に向かい
叫びつづける
――――
どんな理由でこの世を去ってしまったのでしょうか…。
もはや人を愛することはできても、それを行動で示すことなど一切できません。
ただ、苦悩することしかできないのです…。
『紅 KURENAI』の歌詞はX JAPANの代表曲として恥じない奥深い歌詞
『紅 KURENAI』はX JAPANが初期のインディーズ時代に作った楽曲です。その後、故HIDEが中心となってアレンジが施され、紅白でも演奏されるほどの名曲となりました。
それに恥じない奥深い歌詞を持つ楽曲といえるのです。
TEXT 猫あられ