青い光と夜のしじま
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青い光に置いて行かれるな
考えたって無駄なんだ
どうやったって戻れないな
躊躇いはいつも敵なんだ 嗚呼
青い光に置いて行かれるな
諦めたいなら簡単さ
どうやったって伝えたいな
心の奥が震えている
ほら 夜のしじまに君に届くなら
≪オーバードライブ 歌詞より抜粋≫
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青い光 とは過ぎ去った青春を表している。大人になった自分には、考えたってどうやったって、楽しかったあの頃には戻ることはできないことを嘆いている。と同時に、消極的になってしまった今の自分が、青い光に包まれて、やろうと思えばなんだってできた過去の自分に、置いて行かれることへの躊躇いを歌っている。
夜のしじまというフレーズが青い光と対照的になっていて、このちぐはぐさがこの曲の醍醐味であり、心地よさである。
青春をオーバードライブ
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走っていけ その限界へ
飛んでいけ その瞬間へ
まだこんなんじゃ終わらねーぞって空に吠えたら
息切らして駆け抜けて辿り着いたその白線で
まだこんなんじゃ伝わんねーぞって誰か教えてくれ
≪オーバードライブ 歌詞より抜粋≫
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自分の青春は過ぎ去ってしまったけれど、青春真っ只中の若者たちには、存分に今という一瞬を謳歌してほしいことを力強く歌っている。タイトルにもなっているが、青春を”オーバードライブ”するという意味がサビには特に色濃く表現されている。
心の中に焼き付く青春
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嗚呼 もう光が見えなくなっても
焼き付いたままで消えちゃいなかったな
そうだ 今なら何処でも行けるのに
こんな想いを直ぐ君に伝えたい
≪オーバードライブ 歌詞より抜粋≫
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青春が過ぎ去ってしまっても、思い出が消えたわけではない。心の中にずっと焼き付いていて、取り出そうと思えばその気持ちはいつだって取り出せるはずだ。懐かしい過去や楽しかった青春の日々が、今の自分の背中を押してくれるに違いない。
過去の光り輝いていた自分を思い出して、今の自分に劣等感を抱いていたが、たくさんの経験を心の中に持っている今の自分の方が、圧倒的に強いことに気付く。
今を全力で
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後悔なんか忘れないな
心の奥で泣いたって
どうやったって変わらないな
戸惑いはもう要らないさ
ほら 夜のしじまに飲み込まれるなよ
いつかの夢が君に届くなら まだ
≪オーバードライブ 歌詞より抜粋≫
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後悔したことは忘れない。しかし、泣いても悲しんでも、過去は変わらない。だからこそ、今を全力で生きるのだ。躊躇いも戸惑いも捨てるのだ。
夜のしじまに飲み込まれるのではなく、時折青い光を取り出して、今の自分への活力にすることを歌っている。
二つの視点
前半は、青春を謳歌している中高生に向けての応援歌。後半は、青春を終えた自分への応援歌。二つの視点を用いることで、歌に変化をもたらしている。視点が変わることによってサビのフレーズである”走っていけその限界へ~”からが少し違った聴こえ方をする。これはかなり見事な誘導だと思う。爽やかで耳障りがいいだけではなく、歌詞の構成に一捻り加えられているからこそ、飽きずに聴き続けられる。
対義語
冒頭でも記したが、青い光と夜のしじま。この二つが『オーバードライブ』という曲に深みを持たせていると考える。全般に言えることだが、なんでも、光り輝く表向きの面と、不安や孤独と葛藤する裏向きの面が存在する。青春も然りだ。この二面性があるからこそ物事は面白いし、時には信用に値する。
例えば、なんでも100%汚れを落とせると謳っている洗剤Aと、汚れは大概なんでも落とせるが油性には少し弱いと謳っている洗剤B。信用度が高いのはどちらだろう。賛否両論あるだろうが、私はBの方が正直でいいなと思う。Aはどこか胡散臭い。Aのように断言してしまうより、Bのように少し欠点を言ってくれた方が信用度は高い。
歌も同じだ。キラキラ輝く表向きの青春ばかりを歌うのではなく、暗い裏向きの面も歌っている方が馴染みやすいし、共感しやすいだろう。
爽やかな疾走感が第一印象に残る『オーバードライブ』。それだけではない魅力がこの歌にはたくさん詰まっている。この記事と歌詞をじっくり読んでまた是非聴き直してほしい。
▼歌詞をもう一度読む
TEXT 坂倉花梨