本当の愛とは
愛についてのどこか哲学的な歌詞が心に刺さる。愛とは何か?を探し求める“僕”の心のストーリーが描かれている。
有心論
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どうせいつかは嫌われるなら 愛した人に憎まれるなら
そうなる前に僕の方から嫌った 僕だった
だけどいつかは誰かを求め 愛されたいとそう望むなら
そうなる前に僕の方から
愛してみてよと
≪有心論 歌詞より抜粋≫
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恋愛をして付き合うまでに至った相手のことを、すぐに突き放してしまい、本気で人を愛すことができない“僕”。
それは本当の“僕”を知って、相手の方から愛想付かされることが怖かったからだ。
だけど、ある時気がついた。人に愛されたいのなら、自分も本当の自分を曝け出して、本気で人を愛することが大切だと。
次に人を好きになることがあるならば、嘘つきで見栄っ張りなカッコ悪い自分も、恐れずに出していこうと、そう決心した。
自分を変えてくれた人との出会い
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明日を呪う人間不信者は 明日を夢見る人間信者に
もう昨日を探してた僕はいない いない
君は人間洗浄機 この機会にどのご家庭にも一つは用意して頂きたい
こりゃ買わない手はない 嘘ではない
驚くべき効果を発揮します 新しい自分に出会えます
ただ中毒性がございます 用法・用量をお守りください
≪有心論 歌詞より抜粋≫
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“僕”が新たに恋に落ちた相手は、自分のことよりも人を大切にしてくれるとても心優しい人。困っている人にすぐに手を差し伸べられる人。
そして、全てを受け止めて包み込んでくれるようなその人は、劣等感の塊のような“僕”さえも愛してくれた。
「人間洗浄機」と形容したいぐらいに、一緒にいると自分の心が洗われ、綺麗になっていくように感じるのだ。本気で愛せる人を見つけた“僕”の抑えきれない喜びがこの歌詞で表現されている。
失ったもの、得たもの
自分にとって、探し求めた本当の愛に辿り着き、満ち足りた毎日を送っていた。
しかし、無情にもその日々は終わりを告げる。愛した人は自らの意思で命を絶ったのだ。
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息を止めると心があったよ そこを開くと君がいたんだよ
左心房に君がいるなら問題はない ない ないよね
2秒前までの自殺志願者を 君は永久幸福論者に変えてくれた
そんな君はもういない いない いない いないけど
この心臓に君がいるんだよ 全身に向け脈を打つんだよ
今日も生きて 今日も生きて そして今のままでいてと
白血球、赤血球、その他諸々の愛を僕に送る
≪有心論 歌詞より抜粋≫
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“なぜ死んでしまったのか”そんな疑問だけが脳内を駆け巡る。今思い返せば、優しいばかりに、“僕”の悩みは何でも聞いてくれたけど、自分の悩みを話したことはなかった彼女。
“彼女がいない世界に1人残っても意味がない。いっそ自分も死んでしまおう”そう思った時に気づいたのは彼女からもらった、たくさんの愛。何より、本気で人を愛することを“僕”に教えてくれた。
愛した人は、例え形がなくなってしまってもずっと心の中に居続けるということを悟った“僕”は、彼女が変えてくれた“僕”を大切にして、彼女の分まで、生きていく決心をしたのだった。
TEXT 蓮実 あこ