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SHE’Sが描く、「記憶」という永遠の輝き

次世代ピアノロックバンドSHE'S。今春のツアーではバンド史上最大規模のZepp Tokyoでのライブも決まっている、大注目のバンドである。そんなSHE'Sは昨年、”永遠の輝き”を歌ったシングル『The Everglow』を発売した。

“過去”と“現在”という時間軸


『The Everglow』の歌詞の中には、“過去の自分”と“現在の自分”という、2人の主人公が登場し、別の時空で過ごす彼らがお互いについて問いかけながらストーリーを展開していく、世界観溢れる1曲となっている。

この曲は、そんな“過去”と“現在”という時間をテーマに、それぞれの状況を対比しながら描いている歌詞がいくつかある。その1つが、情景描写を綴った部分である。

The Everglow

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「今夜流星群が空に降る」と
僕ら丘で横たわって
灯り一つもない闇に紛れ
星の海を眺めた

夜空に散らばった星座さえも
眠らない街じゃ霞んで
諦める事も上手くなって
君に笑われそうだな
≪The Everglow 歌詞より抜粋≫
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前者が“過去の自分”が見ている景色、後者が“現在の自分”が見ている景色だ。

“過去の自分”が見ているのは、静かな暗闇にどこまでも広がる美しい景色。そして、広大な景色に純粋に感動している当時の自分。

情景描写を歌うこのフレーズは、作詞作曲を務める井上竜馬が経験した学生時代の出来事を綴っているそうだが、その溢れ出る輝かしい青春感は誰もが覚えのあるような懐かしさを感じる。

一方で、“現在の自分”が見ている情景には寂しさがある。“過去の自分”が見ていた夜空と同じ空であるはずなのに、“現在の自分”がいる都会の街では夜まで光り輝く様々な街灯に埋もれてしまって、星座は霞んでしか見えない。

そして、自分自身を見つめても、無垢で素直に生きていたあの頃と比べて諦めるということが上手くなってしまっている。


「君に笑われそうだな」というフレーズからは、“過去の自分(=君)”にこんな“現在の自分”の姿を見られてしまったら、嘲笑されてしまうのではないか、軽蔑されてしまうのではないか、といった感情が垣間見えるようだ。

大人になるにつれて“楽をすること”や“苦難を避けること”を覚えてしまったことを、“現在の自分”はどこか後ろめたく思っていて、そんな姿を“過去の自分”に見せることに対して罪悪感を抱いているのかもしれない。

そんな“現在の自分”は、サビの歌詞で、“過去の自分”からの「大人になって君はどうしているの」という問いかけにこんな答え方をする。

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あの頃と変わらないものはない
なんて言えないけど
今も色褪せないものは
まだこんなにもあるよ
何も消えちゃいないよ
≪The Everglow 歌詞より抜粋≫
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人は、良くも悪くも変化することで成長してゆくものなのだろう。

だからこそ、全く「あの頃と変わらないものはない」なんて言葉を、“現在の自分”は言い切らなかったのだ。

“大人になるということ“がどういうことなのか、自分が果たして数年間でどれ程変わってしまったのか、そんなことは誰にも分らないのだと思う。分かることは、かといって昔の大切な記憶は思い出として色褪せず残り続けているということ。

そして、生きる中で得たものはあっても、消えたものなんて何一つないのだということ。これは、”現在の自分“が自身に問いかけて見つけた最大限の答えであり、メッセージなのである。

未来へ紡ぐ愛しい記憶


また、こんな歌詞も“現在”から“過去”へ向けた言葉なのかもしれない。

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冷えた心を暖めていくのは
愛しい記憶だから
≪The Everglow 歌詞より抜粋≫
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あの頃の特別な思い出を糧に困難を乗り越えられたり、過去の記憶が突然活きる経験が、誰しも1回はあるのではないか。

辛いとき、苦しいときこそ、疲れ切った心を救ってくれるのは、結局“過去の自分”でしかないのだと思う。そう考えると、“未来の自分”を救えるのも“現在の自分”であるのだから、今をより大切にしようと思える。

書いてはいないが、そんなメッセージまで伝わってくるような、なんとも素敵な言葉であると感じた。

“過去”を背負って進む新たな一歩


最後に、『The Everglow』には、とある仕掛けが隠されていることを紹介したい。

それは、2番サビ後の、大サビへ向かう前の間奏部分。井上竜馬が歌う「何気ない笑い声 この先も永遠に 胸の中 響いていく」という歌詞の裏で流れるフレーズである。

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・catch your voices
・This is long good bye
・love lives in wonder
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これはそれぞれ、SHE’Sがインディーズ時代にリリースしたアルバムに収録されている、『Voice』『Long Goodbye』『Un-science』から抜粋した言葉である。

それを知った上で聴くと、SHE’Sの過去や今までの道のりも重なるようで、思わずエモーショナルな気分になってしまう。この曲にこれらの歌詞を入れたのは、バンドとしても過去を振り返り、これまでの愛しい記憶を糧にSHE’Sはこの先も歩いていくよ、といった意思表示のようにも思えた。

つまり、『The Everglow』でSHE’Sが描いた永遠の輝きは、光り輝く過去の記憶であり、尊い思い出が照らしてくれる、未来に生きるための道しるべなのだ。

TEXT もりしま

聴けば、きっと囚われる。旋律に愛されたメンバー全員大阪出身のピアノロックバンド。 2012年「閃光ライオット」ファイナリストを契機にその高い音楽性が一気に注目を集め、2016年6月にメジャーデビュー。全作品のソングライティングを担う井上竜馬が奏でるピアノをセンターに据え、エモーショナ···

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