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「Forget-me-not」
「Forget-me-not」は尾崎豊十代最後の曲でした。カップリングは皆さんご存知の「OH MY LITTLE GIRL」です。認知度はどちらかというと「OH MY LITTLE GIRL」の方が上のような気がします。
2014年に公開された映画「ホットロード」の主題歌としてそのまま尾崎豊のこの歌が使われました。
尾崎豊のイメージは"社会に対する反発"や"破壊"などではないでしょうか?
そんな破天荒な側面を、若者はカリスマとして支持したのかもしれません。
でも実は、尾崎の作る歌には"愛"をテーマとしたものもとても多いんです。
その代表格がこの「Forget-me-not」です。
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小さな朝の光は
疲れて眠る 愛にこぼれて
流れた時の多さに
うなずく様によりそう二人
≪Forget-me-not 歌詞より抜粋≫
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冒頭の部分です。
尾崎が作る愛の歌に悲恋の歌はありません。
失恋して…傷心で…みたいな歌ではなく、必ずかたわらに"愛しい人"が存在しているのが特徴です。
しかも大事に大事に相手の女性を愛していくんですね。
「Forget-me-not」の意味は勿忘草。
花言葉は"私を忘れないで"です。
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初めて君と
出会った日僕は
ビルのむこうの空を
いつまでもさがしてた
君がおしえてくれた
花の名前は
街にうもれそうな
小さなわすれな草
≪Forget-me-not 歌詞より抜粋≫
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おそらくですが、"私を忘れないで"と言ったのは彼女。
そんな彼女を一生懸命に愛していこう。
この歌はそんな心情を歌っているのでしょう。
これだけ愛されれば女性冥利ですよね♡
「15の夜」
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ストレートに若者の心情を歌った楽曲「15の夜」です。
両A面で、「卒業」のカップリングとなりました。
思春期の危うい気持ち…皆さんも一度は経験して大人になったのではないでしょうか?
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しゃがんでかたまり
背を向けながら
心のひとつも
解りあえない
大人達をにらむ
≪15の夜 ~THE NIGHT~ 歌詞より抜粋≫
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15歳ぐらいの頃って、いつも何かにムシャクシャしていましたよね。
物事を真っすぐに見られないというか…。
そんな思春期の心情を、尾崎は見事に「15の夜」に詰め込んで歌にしてくれたんです。
当時の若者が熱狂するのも分かります。
何に腹を立てているのかも分からない…とにかく"身の置き所がない"んです。
周りの大人はそんな自分をきっと心配してくれているのに、それすら見えなくなってしまうんですよね。
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誰にも縛られたくないと
逃げ込んだ この夜に
自由になれた気がした
15の夜
≪15の夜 ~THE NIGHT~ 歌詞より抜粋≫
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嫌なことから逃げて逃げて…夜の暗闇ならそんなこと見なくて済むし、まず見えない。
若い頃ってそれを自由と"勘違い"してしまうんです。
"子供"と"大人"の狭間で…
器用に生きていくことは簡単なようでとても難しいです。
尾崎豊は26歳という若さで世の中の厳しさを知り、生きていくことを諦めてしまったのかもしれません。
今回は「Forget-me-not」と「15の夜」という対照的な2曲をご紹介しましたが、この2曲だけで彼の葛藤がとても強く感じられます。
こうして彼が残した歌を読み解いていくと分かることは、掲げているテーマは"愛"と"破壊"。
まったく真逆ですよね。
深読みすればするほど、とても切ない気持ちになってしまいます。
尾崎はきっと"子供"と"大人"そして、"愛"と"破壊"の間でもがき苦しんだのではないでしょうか?
尾崎の作る歌詞から生きるためのヒントを考えるとするならば、"肩の力を抜いてもっと器用に"ということに尽きるでしょう。
選択肢は一つではありません。
もっといい意味で"器用に"生きていきたいものです。
尾崎の作品にはこんな歌も…
「ダンスホール」
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尾崎豊の作品の中には、好きな女性に向けた愛の歌でも、何かに反発するでもないこんな歌もあります。
相手は女性なんですが、恋人ではなくとてもライトな関係と解釈できます。
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子猫のような奴で
なまいきな奴
小粋なドラ猫ってとこだよ
おまえはずっと
踊ったね
≪ダンスホール 歌詞より抜粋≫
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この楽曲は、尾崎豊がオーディションのためにカセットテープに吹き込んで当時の所属事務所だったソニーに持ち込んだといわれています。
そして、亡くなる寸前のライブで最後に歌った曲でもあります。
なので、アーティスト尾崎豊にとって"最初と最後"の曲ということになるんですね。
デモテープにしたぐらいですから、まだ迷走や葛藤などない、とてもライトな曲に仕上がっています。
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気どって水割り飲みほして
慣れた手つきで火をつける
気のきいた
流行文句だけに
おまえは小さくうなづいた
≪ダンスホール 歌詞より抜粋≫
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少し顔見知り程度のこの女性。
やっぱり少しワルな部分がある女性のようです。
まだあどけない女性は背伸びして、このダンスホールにやってきたのでしょう。
そもそもダンスホール…今でいう所のクラブですよ。(笑)
子供は入っちゃいけません!
主人公とどうでもいい会話をしながら、ほろ酔い気分の女性がいます。
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あたい グレはじめたのは
ほんの些細なことなの
彼がいかれていたし
でも本当は
あたいの性分ね
≪ダンスホール 歌詞より抜粋≫
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「あたい」とは"わたし"のことですよ!時代ですね~!(笑)
お酒が入って気分が良くなったその女性は、主人公に身の上話を始めるんですね。
これまでで自分はどうやって生きてきたとか、ダラダラと話はじめます。
きっと主人公も同じくほろ酔いでウンウン…って感じで聞いてあげているんでしょう。
ハードな曲ばかりではない!
このように、自分の事でもなく恋人のことでもなくただ「ダンスホール」であった出来事を淡々と歌にしたみたいなものも尾崎の作品には存在するんです。メロディラインもとても優しく、流れるような楽曲となっています。
尾崎豊といえばやはりハードなロックというイメージですが、「ダンスホール」のような穏やかなポップスもあるので、機会があったらぜひ聴いてみてください♪♪
TEXT 時雨