人間の始まりは音楽から
Pop Virus
----------------
音の中で 君を探してる
霧の中で 朽ち果てても彷徨う
闇の中で 君を愛してる
刻む 一拍の永遠を
≪Pop Virus 歌詞より抜粋≫
----------------
人がこの世に生まれたとき、まず初めにすることは何か。それはずばり、心臓を動かすことである。
何を言っているのかと思う人もいるかもしれないが、この楽曲のBメロの歌詞には、このような言葉が綴られている。
----------------
始まりは 炎や
棒きれではなく 音楽だった
≪Pop Virus 歌詞より抜粋≫
----------------
生まれたばかりの赤ちゃんは無垢な存在で、何も知らないし、分からない。けれど、心臓を動かさなければいけないことは分かっている。
心臓は一定のリズムを刻む、立派な楽器であり、人間が奏でる最初の音楽だ。心臓は一度動き始めたら、その先何があろうとも、人生を終えるまで止まることはない。心臓が動いているということはつまり「生きている」ということだ。
人によって歩む人生は違う。それによって価値観も変わるし、性格や、言葉の紡ぎ方だって変わる。
それでも、心臓で大切な一拍を刻んでいるという事実は、永遠に変わらない。その共通していることがあるからこそ、人々は今も昔も助け合って生きていけるのではないだろうか。
当たり前のように感じて、つい忘れてしまいそうな大切なことを、独特な言葉で紡ぐことで気づかせてくれるのが、星野源の歌詞の魅力である。
言葉から溢れ出る、変化を恐れない強さと覚悟
----------------
ふざけた人間なんだ
偏る生活を歌舞いた
そう君の手の平
美しくクルクル返ったんだ
≪Pop Virus 歌詞より抜粋≫
----------------
変遷していく時代の中で、人々の生活や文化も様々な変化をしてきた。音楽にもロックやポップス、ジャズなど多くのジャンルが確立され、今なお幅が広がっている。
星野源はこれまで数々の素晴らしい楽曲を発表してきたが、その中でも、星野源の楽曲のスタイル、雰囲気は様々な変化が感じられる。
『くだらないの中に』のように弾き語りのような穏やかな響きを奏でる楽曲もあれば、『夢の外へ』のようにオーケストラを用いたバンドスタイルを取った楽曲もある。
そして今回の『Pop Virus』では打ち込みによる重みのあるサウンドを奏でる、新たなスタイルに挑戦している。
星野源は今やトップアーティストといっても過言ではない。驕りや偏りがあってもおかしくない状況でありながら、絶えず新しい音楽を追い求め、挑戦していく覚悟が、星野源にはある。
誰もが持つ人の弱い部分と、強い部分、つまりはPOP(大衆が持つ)VIRUS(ウイルス)を優しく受け入れ、愛することのできる世界。
その世界観を紡ぎだす星野源の歌詞に、私たちは魅了されるのだ。
TEXT 夕樹