20歳の誕生日にデビュー!
2015年の12月2日、自身の20歳の誕生日にデビュー・シングル『夢のつぼみ』で、ソロ歌手としてのスタートを切った水瀬いのり。
それ以前にも、キャラクターソングなどで彼女の歌声を聴く機会はありましたが、キャラクターとしてではなく、水瀬いのり自身の歌声は、こちらの想像以上に力強く、確かな存在感を放っていたことに驚かされたのは、個人的にも鮮烈な記憶として残っております。
その後、数枚のシングル・リリースを経て、2017年にはデビュー・アルバムとなった『Innocent flower』を、2018年にはセカンド・アルバム『BLUE COMPASS』を発表しております。
同年には、自身初となるライブ・ツアーも実現。大人気声優として多忙を極める中での、ハイペースな音楽活動には目を見張るものがありますが、彼女の勢いは止まることなく、今年の4月10日に、通算3枚目となる最新作『Catch the Rainbow!』がリリースされました。
アルバム3作目にして到達した、歌手としての確かな成長
Step Up!
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One Two もう一回
So One Two Three Four 走れ
何度転んでも 負けないマインドで
One Two 踏ん張って
So One Two Three Four 向かい風 追い越すよ 行こう
≪Step Up! 歌詞より抜粋≫
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アルバムは彼女の楽曲の中でも定番と言える、疾走系ギター・ロックとピアノの音色が煌びやかなオープニングを演出する、『Step Up!』で幕を開けます。
真っ直ぐな想いをストレートに表現した歌詞を、自信を持って届けようとする歌声が、今まで以上の説得力と共に耳に飛び込んできます。
ココロはMerry-Go-Round
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(シュビデュバ シュビデュバ ココロは Merry-Go-Round
シュビデュバ シュビデュバ ココから 始めよう! Magic to the shine!)
幕が開けば 魔法使いへ Change
≪ココロはMerry-Go-Round 歌詞より抜粋≫
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続く『ココロはMerry-Go-Round』は、ダンサンブルなビートにうねるようなベース、ストリングスに管楽器といった派手なアンサンブルで導かれるサウンドに心も踊る、グル―ヴィーなナンバー。
”シュビデュバ シュビデュバ”というコーラスも、さらりと流すのではなく、しっかりと感情が込められており、声優らしく、様々な場面で演じているような歌い回しが素晴らしいです。
Kitty Cat Adventure
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ドキドキが止まらないよ 君のこと考えるだけで
安全トモダチエリアから 抜け出そうと決めた
初めて飛び込んだ 世界はKaleidoscope
カタっと君が動くだけでほら
お天気も変わるの
≪Kitty Cat Adventure 歌詞より抜粋≫
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そうかと思えば、『Kitty Cat Adventure』では恋する女の子の姿を猫に置き換えて、主人公の奮闘をキュートに歌い上げ、シングル曲の『Wonder Caravan!』に広がるファンタジックな音世界では、物語を読み聞かせるようにメロディを紡いでいきます。
もう1つのシングル曲で、壮大かつドラマティックな『TRUST IN ETERNITY』では、彼女自身が尊敬しているという、水樹奈々を彷彿させる美麗なファルセットを披露しており、全く違うカラーの楽曲を見事に歌い上げる様に、歌手としての確かな成長がはっきりと刻まれているのです。
自分の弱さと真摯に向き合う
私が個人的に気に入った楽曲は、中野領太氏が手掛けた『今を僕らしく生きてくために』です。
時に弱さを見せることも厭わず、不安や葛藤といったネガティブな感情にも逃げることなく、強く生きていこうとする姿に感動します。主語が”僕”になっているところにも、注目して頂きたいです。
今を僕らしく生きてくために
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窮屈に慣れすぎて 目を閉じる
傷ついた心には鈍感で 笑ってる
そんな生き方はもうやめて 自分を愛してもいいんだよ
今を僕らしく生きてくために 何を捨てようかな
未来の不安 過去の悔いも 全部手放していいよ
今を幸せに生きてくために 何をやめようかな
最後のひとつ たったひとつ それだけを大切に抱えた
≪今を僕らしく生きてくために 歌詞より抜粋≫
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この曲は、音域のアップダウンの激しさ、詰め込まれた歌詞から、伸びやかな高音に達するサビ、と極めて歌の難易度が高い楽曲です。ここでの水瀬いのりの見事なヴォーカルは、本作におけるハイライトの1つでありましょう。
新たな挑戦となった、エレクトロ・サウンドとの出会い
約束のアステリズム
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楽しいのはいつも一瞬だった
神様が少しだけ許した時間
嬉しいこと 悲しいことも全部
君に話せたなら良かったな
だから またね
ここで 逢えるように
見えなくなって
何も聞こえなくなっても
君まで届くようにね
≪約束のアステリズム 歌詞より抜粋≫
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Future Seeker
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さあRaise your face!
もっと先まで
Don't look back!
前だけ向いて
まだ知らない明日さえも
信じていこうよほら
Future Seeker
≪Future Seeker 歌詞より抜粋≫
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派手なエレクトロ・サウンドとギター・ロックとが融合した『約束のアステリズム』や、現代的なシンセ・ポップと言える『Future Seeker』は、生の楽器で構成される楽曲を中心に歌ってきた彼女にとっても、新境地と言える楽曲になりました。
前者は藤永龍太郎氏に、後者はkz氏に新規書き下ろしを依頼した曲です。
歌手としての新たな挑戦に、戸惑いや困難もあったかと想像しますが、どのようなジャンルであれど、楽曲の持つフィーリングやグルーヴを感覚的に掴み取る、水瀬いのりの音楽的センスには、本当に驚かされます。
アルバムのラストは、自身が初めて作詞を手掛けたナンバー!
本作のラストを飾る表題曲『Catch the Rainbow!』では、水瀬いのり自身が初めての作詞を手掛けております。
歌手デビュー当時は、本当の自分の歌とは何なのだろうという悩みもあった彼女が、今回見つけた1つの答えを、作詞という形で表現しているのです。
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あぁ 聞こえたのは みんなの声
ずっと探してた わたしの歌を みつけたよ
さぁ! 目を合わせて いっしょに歌おう
ぎゅっと結ばれた 一人じゃないよ
≪Catch the Rainbow! 歌詞より抜粋≫
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自分が歌うことで、聴き手に元気や喜びを届けることができるんだ、ということ。元々、自己発信が得意ではないという彼女の詞は、奇を衒うような表現もなく、シンプルな言葉使いで、ファンへの感謝を伝えるものとなりました。
一番大事なことを知った今、迷いは消えて、歌うことへの喜びに満ち溢れている水瀬いのりの姿が、目に浮かぶようです。
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大切な今を重ね一緒に進もう
両手広げて 抱きしめた景色は 未来になる
胸に浮かぶのは
あの日夢見た 小さな憧れ しあわせ
今をありがとう きみに伝えよう
もっと もっと ずっとそばにいたいよ
ずっと しあわせを 歌おう
≪Catch the Rainbow! 歌詞より抜粋≫
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水瀬いのり自身の言葉で紡がれるハッピーなメロディは、聴く人全てを晴れやかな気持ちにさせることでしょう。
平成最後に生まれた、ガールズ・ポップの名盤
全曲に触れることはできませんでしたが、どの楽曲にもそれぞれの魅力があり、水瀬いのりの歌声の素晴らしさが、七色の虹のように鮮やかに光り輝く作品となっております。
10年代―平成最後の日本の音楽シーンに生まれたガールズ・ポップの名盤として、今後も語り継がれていくに違いありません。
今年の6月には、日本武道館2DAYSという大舞台に臨む水瀬いのり。是非、その輝く才能を体験してみてください。
TEXT KOH-1