忘れたいが、忘れられない過去
人は生まれながらに持っているものもあるが、今の自分を作り上げたのは、今まで歩んできた人生によるものが大きい。
どんな家庭に生まれて、どんな人と出逢い、どのような環境で育ったか、今まで何を成し遂げてきたかということは、少なからずも自分自身に影響を与えているものだ。
その中でも、誰もが1つは思い出したくないような過去の記憶もあるだろう。「あの日心に無理矢理押し込んだ記憶の中を触る」という箇所には、そんな忘れたい過去でも、月日が経ったある時、ふと思い出す様子を表現している。
辛い過去は、思い出すだけでも辛いから、「誰の温もりが残ってる?」と歌っているように、幸せだった頃の思い出も手繰り寄せるように探すのだ。
今の自分が在る根拠を探す
I don’t know
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時折目を刺す手掛かりの残像
しらみつぶしてもそのほとんどが嘘ばかりで
あんなに燃えてた炎は消えたの?
灰になったとしても
あの情熱だけは忘れない
≪I don't know 歌詞より抜粋≫
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今の自分の思考や性格などはどのようにして生まれたのか?
過去の様々な経験が基となって生まれたものもあるので、過去の記憶を自分自身で辿る。他人から嫌われたくないと、自分を偽り、振舞っていたことを「しらみつぶしてもそのほとんどが嘘ばかり」という歌詞で表現している。
中には、何かに情熱を傾け、夢中になって行っていた時期もある。今をただなんとなく生きている自分には、そういった過去の自分が魅力的に感じ、あの頃に戻りたいと思うこともあるだろう。
先のことは自分自身にも分からない
この歌詞中にある「あなた」とは、自分の記憶の中の自分のことだ。
過去のことは、そんなに頻繁に思い出すことはないけれど、また思い出すことがある時に、出会うであろう記憶の中の過去の自分のことを指している。
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わたしは誰かと空に尋ねても答えてくれない
優しいだけの青ばかりで
どこまでも続く 魂の葛藤
いつかまたあなたと会えるのなら
今はI don't know
≪I don't know 歌詞より抜粋≫
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『I don’t know』というタイトルが示しているのは、先の自分はどうなるか分からないということだ。
今まで生きてきた軌跡に、これからの人生で積み上げていく経験がプラスされると、どういった自分になっていくのかは誰にも分からない。
今の自分とさして変わらないかもしれないし、大きく変わることもあるかもしれない。
TEXT 蓮実 あこ
吉井和哉、菊地英昭、廣瀬洋一、菊地英二のラインナップで1989年12月から活動。 グラムロックをルーツに持つ独自のグラマラスなスタイルで人気を博し、1992年5月メジャーデビュー。 ライブの動員、CD売上ともに90年代の日本の音楽シーンを代表するロックバンドとなるも、2001年1月8日東京ド···