大切な人を失ってしまう怖さ
自分より大事だと想える人に出逢えた時、それは幸せなのだろうか。大切な人がいるという事は、それだけで気持ちが満たされる。ずっと一緒にいられれば、この先の人生怖いものなしだ。
しかし、それと同時にいつでも不安が影を落とす。
「失う怖さにどうしようもなく襲われるんだ」
平井堅の29枚目のシングル『いつか離れる日がきても』は、そんな幸せがもたらす見えない不安と大切な人を想う強さが描かれている。ジャネット・リー・ケアリー原作「あの空を覚えてる」が同名タイトルで映画化された時に主題歌として書き下ろされた楽曲でもある。
【みんな泣いて、強くなる】をキャッチコピーに、10歳の男の子:英治を主人公に彼の目線で、事故で亡くなった妹への哀しみから再生していく家族の姿を描いている今作。
映画化の際には舞台を日本に変えての制作が行われ、シーンのほとんどは岐阜県で撮影。一時、岐阜の情報誌ではロケ地巡りが特集されたほどである。
この映画に合わせてか、楽曲のPVも切な目な内容。プライベートでも平井堅と交流のある宮沢りえが出演し、恋人同士という設定で共演を果たした。
宮沢りえが歌手のPVに出演する事、そして平井堅がPVで著名人と共演したのも初めてだった事から、ニュースでも取り上げられている。
いつか離れる日が来ても
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魔法のような笑顔に 何度救われただろう
手をつないだ帰り道 ふと心細くなる
自分より大事なもの 手にするのが幸せだと
教えてくれた君は 僕を強くも弱くもする
「考え過ぎだよ 笑ってよ」僕の頬をつねるけど
このぬくもりに満たされる程
失う怖さにどうしようもなく襲われるんだ
≪いつか離れる日が来ても 歌詞より抜粋≫
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「魔法のような笑顔に 何度救われただろう」
大切な人が笑ってくれるだけ、それだけの事で心が軽くなる。言葉をかけてもらったわけでもないのに、魔法をかけられたように元気になれるのだから本当に不思議である。
手を握ってもらえれば、そこからパワーをもらっているような気さえしてくるのだから。大切な人とは、そんな一緒にいるとプラスになれる人なのだろう。
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自分より大事なもの 手にするのが幸せだと
≪いつか離れる日が来ても 歌詞より抜粋≫
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そう言って教え導いてくれるのなら、何でもできそうな気がしてくるはずだ。しかし、そうして想う気持ちが強くなると考えなくて良い事まで考えてしまう。
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教えてくれた君は 僕を強くも弱くもする
≪いつか離れる日が来ても 歌詞より抜粋≫
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相手を失ってしまったら自分はどうなるのだろう、と。満ち足りて幸せな時間は、長く続くとは限らない。些細なすれ違いで離れてしまうのかもしれないし、永遠に会う事ができなくなってしまう事もある。
何があるかわからない世の中だから、消えない不安とも言えるのだ。
PVでは、平井堅がもらい泣き
PVではラストの宮沢りえが泣いているシーンで平井堅も、もらい泣きをしているそう。フィクションとはいえ役柄の気持ちとシンクロしたのか、演出ではなく自然と涙が零れたようである。
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なぜだろう こんなに君を想うだけで 涙が出るんだ
≪いつか離れる日が来ても 歌詞より抜粋≫
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愛する気持ちも、失う不安も全て本当に相手を想っているからだ。
時として、その強すぎる想いは自分を蝕んでいくのかもしれないが、だからこそ楽曲で確認して欲しい。大切な存在が身近にあるというのは、幸せなことだと。
そして「いつか」の可能性も否定して、その存在をずっと抱きしめていて欲しい。
TEXT:空屋まひろ