処女作を振り返って…
──小説を書いている時間っていうのは、今振り返ってみてどうでした?
KURO:やっぱり楽ではなかったですね。音楽やっている時の方がノウハウがあるので楽でした。
小説はまるっきり素人だし、やり方がわからないので、白い原稿用紙を前に途方にくれる。みたいな(笑)。
──そうだったんですね。
KURO:音楽だとメロディーがあって、はめる言葉の数が決まっているじゃないですか。でも小説は好きなだけ書けてしまうというか、自分次第なので大変でしたし、みんながどう思うだろう?って考えましたね。
書くことは好きだったんですけど、小説を書くのって漠然と50代60代になってからだと思っていたんです。
それがKADOKAWAさんからお話をいただいて調子に乗っちゃったんですよね(照)。
──KADOKAWAさんの方からお話があったんですね!
KURO:書評サイトに投稿をしていたんですけど、そこを見てくださっていたんですね。
音楽以外のことで褒められることなんてなかったので、思い切って「やります!」って言っちゃいました(笑)。
──今回の小説の中では、情景や感情の描写がとても細かく表現されていて感情移入が非常にしやすくなっていますが、こういった書き方をされることにしたのは?
KURO:自分自身が渋谷AXや新木場Studio Coastに立ったことがあるというのが大きかったかもしれないですね。
ステージに立つ側の経験をしているから投影しやすかったり、自分もマイケル・ジャクソンのダンスを真似てみたことがあったので憑依しやすかったというか。
──ITTOさんがマイケルのインパーソネーターとして活動し出す前のシーンも、とてもイメージが湧くものでした。実際にITTOさんの出身地である所沢に足を運んだとのことですが、やはりKUROさん自身に見えたITTOさんの背景ってありました?
KURO:やっぱりその場所に行くと想うことがあるので、楽するために行くというか(照)。
航空公園はこれまで行ったことがなかったですけど、本当に飛行機が(笑)!
当時のことを想像できたというよりは、家に帰ってから思い返して小説を描き進めるにあたって現場の風景が浮かぶのは違ったかなと思います。
──私は所沢が地元なのですが、ITTOさんのような素晴らしい方が所沢出身だなんて勝手に誇らしい気持ちになりました(笑)。
KURO:本当ですね!彼は世界一ですから!日本のインパーソネーターから神様のように思われている存在なので。
──航空公園のステージは私自身立った経験があったので航空公園のステージでのシーンはリアルに想像ができた部分でした。これから小説を読まれる方にも、読まれた方にも、是非リアルな現場に触れてみて欲しいですね。
KURO:そうなんですよ!実際に行ってみて欲しいですね!
シーンを振り返る(ネタバレ注意!)
──内容のお話に触れさせていただいたので、ITTOさんが人前で初めてマイケルのダンスを披露したバイト先での社員旅行のシーン、あの興奮はものすごく入り込んでしまいました(笑)!KUROさんにも重なるご経験が?KURO:嬉しいですね(笑)。実はこのシーンは想像で書いたんですよ。
自分の過去のバイトの経験もそうですし、皆の前で一発芸をしなきゃいけなかったような経験ってある人は多いと思うんですけど、そういった自分の経験もミックスして書きました。
ITTOくんのモデルの方からは、バイト先でマイケルのダンスを披露したという話しか聞いていないんです。
──そこからあそこまで広げて書かれたんですね!
KURO:そうなんです(笑)。多分に自分の想像を広げて、憶測で書きました。
バイト先のお店も、埼玉近郊の店舗を調べて勝手に決めました。
──驚きました!あと、ものすごい臨場感でドキドキしたシーンで言うと、初めてITTOさんが蒲田のダンスパーティーに行くシーン。"ここにいる大人たちがみんなカッコよく見える。僕も早くこんな風に立ち回りたい"と表現されていますが、これはきっと多くのひとが感じたことのある感情なのではないでしょうか!?
KURO:キラキラして見えるんですよね!これは実話だったらしいんですよ。
『Shake Your Body』のリミックスが流れた時に皆踊らなかったらしくて、ITTOくんがフロアを掻き乱したのをきっかけに開花したんですよね。
すごく気持ちよかったでしょうね...。
この章には『Off The Wall』っていうタイトルが付いているんですけど、壁を背にしてポンとフロアに飛び込んでいくあの場面を表現しているんです。
──なるほど!マイケルの曲にも『Off The Wall』というタイトルがありましたよね!?それぞれの章のタイトルもマイケルの楽曲から取られたもの?
KURO:はい、わかる人にはわかるやつですね!『Thriller』はちょうどタチアナと破局を迎えるシーンだったり。
──タチアナさんとの恋はこの小説中で唯一のロマンスだったので、良いスパイスとして楽しめました。
KURO:本当はラブロマンスをもう少し長く書きたかったんです。でも、ITTOくんのモデルの話を聞いていたら結構エグい内容だったので(笑)、さらっとしておきました。
恋愛ものの小説ではないので、結果良かったのかもしれませんけど(笑)。
──タチアナさんがITTOさんの髪の毛を切った感じからすると、まだまだ背景に壮絶な出来事がありそうなことは想像できますからね(笑)!
KURO:なかなか髪の毛切ったりなんてしないですもんね…(笑)。
──恋愛でうまくいかなかったことについてもそうですけど、自分の恥ずかしい部分までKUROさんだからこそ話せた、とITTOさんのモデルになった方がご自身のブログでおっしゃっていましたが、ITTOさんのモデルの方とはどのくらいの時間をかけてお話をされたんでしょう?
KURO:書いたのは2〜3か月だったんです、毎週KADOKAWAの方と会うことになっていたので何か持っていかなきゃと尻を叩かれながらでしたけども(笑)。
取材を入れると半年くらいでしたかね。そして残りの半年が手直しの期間でした。
1回の取材では8時間から10時間と、だいぶ時間を使っていただいたなという感じですね。
ITTOくんのモデルだけでなく周りの方にも取材をさせていただいたので、みんなに協力して頂いてできた小説です。
──私は小説読み終わってからマイケルの作品を見て、それからITTOさんのモデルになった方のパフォーマンスを見ようと決めていたので、読み終わってからITTOさんのモデルの方を知ったのですが、イメージよりイケメンでした(笑)!
KURO:いいですね!そうなんですよ、いい男なんです。今ブログやYouTubeのPV数が動いているそうなんですよ!
──小説のおかげですね!
KURO:そうだといいんですけど(照)。今後解禁されるライブの情報もあるようなので、注目して欲しいですね!