世の中の掟に準ずる生きづらさ
人は誰しも、何かに属している。家族、学校、会社、国といったそれぞれではあるが、人の生活の数だけ“社会"と呼ばれるコミュニティが存在している。
その中には、誰かが決めた、また自然発生的に生み出された規則やルールがある。
その規則は、法律などの明文化されたものとは別に、“常識"、“当たり前"といった目に見えない形で、世の中の“掟"として社会に流れているものだ。
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ああ うざったすぎる 街の濁流 HeyHeyHey HeyHeyHey
混沌を割く声がした HeyHeyHey HeyHeyHey
≪ミッドナイト・クローラー 歌詞より抜粋≫
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世の中に滔々と流れ続ける“掟"の波は、誰か一人が流したものではなく、不特定多数の意識によって生み出されるものである。
しかし、その意識は、全員がひとつひとつ具体的に示し合わせて作られたものではない。
それゆえに、その“掟"の正しさに疑問を感じてしまう時がある。
世の中から次々と発生した流れが、濁って見える時があるのだ。
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この世の掟に従っていたヒューマン
ビッグ・ブラザーズ・ビッグ・ウェイヴの中
掟に逆らえばエイリアン
≪ミッドナイト・クローラー 歌詞より抜粋≫
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世の中の“掟"にただ流されているときは、何も感じないが、“掟"に対して僅かな疑問が生まれると、その流れが明確に見えてくる。
そしてそのまま疑問に目を瞑ってしまえば、また流されるだけで楽だが、立ち止まって考え込んでしまうと、その流れの強さなり速さがわかってくるものである。
そしていざ、世の中の“掟"に逆らおうとすれば、周りから、まるで同じ人間ではないかのように、白い目で見られてしまうものだ。
そのまま周りを気にせず、自分を信じて逆らい続けることができればいいが、どうしても多数の意見は正しく聞こえてしまうものである。
その結果、どうしていいか身動きがとれなくなってしまい、そこから生きづらさが生じてしまう。
Hermann TraubによるPixabayからの画像
正しさの保証はない
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ストリーム グライド ストローク
滅茶苦茶なフォームでブチ込めキックを
逆立ちのあいつが正しかったのかも 後ろ歩きのあいつが正しかったのかも
正しさはいつもクソ簡単にひっくり返る そうだろ?
≪ミッドナイト・クローラー 歌詞より抜粋≫
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世界中の人間の数だけ、人生があり、まったく同じ道を辿ってきた人間は、ただ一人もいない。
その中に、“常識"や“当たり前"に逆らって、自分なりに世間の流れに逆らって泳いだ人間は少なからず存在している。
自分とは縁のない物語かもしれないが、そもそも自分以外誰も自分の物語を生きている人間はいない。
つまり自分の掟や価値観は、自分の物語でのみ生かすべきものなのだ。
それならば、自分以外の人間が流している“掟"は自分以外の世界のものであり、それが自分にとって正しいとは限らないのである。
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じゃあ掟はつまり邪魔だぜヒューマン
ビッグ・ブラザーズ・ビッグ・ウェイヴから
アウター・スペースへとエイリアン
埋もれるだけならゴミだって出来るぜ
≪ミッドナイト・クローラー 歌詞より抜粋≫
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世間の“掟"の正しさが崩れたとき、その“掟"に従い続ける意味はない。
その“掟"が煩わしければ、その流れに逆らって、世間の“掟"の及ばない場所へと向かえばいい。
それこそが、自分が自分らしく生きるために必要な正しさなのだ。
自分の意思と個性を抑えて、何もしないでいることこそ、人間とは別のものではないかと、この曲は示唆している。
反逆の精神こそロック
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お前は今夜ロックンローラー 冷え切った激流を
心のままロックンローラー 転げ上がれ
≪ミッドナイト・クローラー 歌詞より抜粋≫
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“自分の夢や理想を求め、世間が何を言おうとも、自分の信じるままに、転がりながらも世間に抗い続ける。
"その徹底した反逆の精神こそ、ロックンロールなのであると、この曲は言っているのである。
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泳ぎだせ ミッドナイト・クローラー 絶望を背負ったまんま
向こう岸 光を信じ抜け
その心を揺らすクロールで 波に抗え
止まるな 絶望を超えて 必ず 辿り着け
泳ぎだせ ミッドナイト・クローラー
≪ミッドナイト・クローラー 歌詞より抜粋≫
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“世間の正しさではなく、自分の正しさを信じ、押し通していけ"といってもそれは容易なことではない。
それでも生きづらい現状を変えるために、世の中の流れに逆らって、自分の心のままに突き進んでいくことが、自分が自分として存在するために必要なことなのである。
その波に抗って泳ぎ続けていけば、やがて世間の濁流は無くなり、自分が理想とする希望の地へと辿り着くことができる。
やがて必ずくる光を目指して、自分を見失わぬよう暗闇の中でも並みに逆らって泳ぎ続けていく。
そこに、ロックンロールの本質があるのだ。
TEXT 京極亮友
2006年結成。 佐々木亮介(Vo, Gu)、HISAYO(Ba)、渡邊一丘(Dr)、アオキテツ(Gt)の4人組。ブルース、ロックンロールをベースにしつつも、常にコンテンポラリーな音楽要素を吸収しそれをAFOC流のロックンロールとして昇華させたサウンドと、佐々木の強烈な歌声、観る者を圧倒するライブパフォ···