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■Suchmos 「VOLT-AGE」2018.11.25 Live at YOKOHAMA ARENA
サッカーと音楽
「サッカー」と言えば「サンバ」と、連想する人が多いように、サッカーにとって音楽は欠かせない存在です。四年に一度開催されるワールドカップでは、FIFAのオフィシャルソングが歴代大会を彩り、テレビ中継では、各局が選んだテーマソングが試合を盛り上げます。
2018年のワールドカップ・ロシア大会のテーマソングとして、Suchmos以上に相応しいアーティストはいませんでした。
日本代表がワールドカップに初出場した1998年フランス大会から20年、選手達が海外でプレーする事が当たり前になった現在の日本代表のプレースタイルを一言で表現すれば、その言葉は「クール」です。
2016年、『STAY TUNE』のヒットで大ブレイクしたSuchmos。
スーパークールな音楽で、一躍「今」を象徴する存在となった彼らの登場は、2018年のワールドカップと絶妙のタイミングでシンクロしました。
2018年ワールドカップ ロシア大会をプレイバック
Suchmosの『VOLT-AGE』がNHKのテーマソングとなったワールドカップ・ロシア大会での、日本代表の結果を少し振り返りましょう。この大会で、日本代表は2大会ぶりの決勝トーナメント進出を果たしました。しかし、日本代表のグループリーグ最終戦となったポーランド戦が、物議をかもします。同じグループのセネガル対コロンビアが0-1のまま終われば、フェアプレーポイントで上回り決勝トーナメントに進めた日本は、ポーランド戦の後半途中から負けているにも関わらず、ボールを回し始めたのです。
その結果、日本はポーランドに0-1で負けて決勝トーナメントに進出しますが、攻めなかった日本の姿勢に、国内外から賛否両論が沸き起こりました。そして、決勝トーナメントで日本は世界の壁を見せつけられます。日本はベルギーに0-2とリードしながらも、終了間際に逆転を許し、ベスト16で敗退となったのです。
サッカーファンだけが感じる「VOLT-AGE」の内に秘められた熱気
大のサッカーファンのヨンスを始め、サッカーと関わりの深いSuchmosが満を持して完成させた『VOLT-AGE』は、まるで日本代表のポーランド戦のように、予想外の賛否両論を呼びました。批判の主な理由は、“サビが盛り上がらない" “サッカーに合っていない"などです。
しかし、本当にそうでしょうか。真のサッカーファンになら解る、この曲の共感ポイントを見て行きましょう。
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感じ取り合うのさ 漂うリズム 譲れぬイズム
月さびの世界 ひとりで歩く人たちのオペラ
≪VOLT-AGE 歌詞より抜粋≫
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ソリッドなギターとヘヴィなベースで始まるこの曲のイントロは、試合が始まる前、ピッチに続く通路に並ぶ選手たちの、集中力を高めて行く姿を連想させます。
「Voltage」とは「電圧」や「熱気」という意味で、まさに自分の中のVoltageを上げて行く選手たちの姿です。
各国のリズムがある!
サッカーのプレースタイルには、それぞれの国のリズムがあります。ブラジル代表の軽々とした足技はサンバのリズム、ドイツ代表の直線的で正確なパスは勇ましい行進曲のよう。それは、絶対に譲れないそれぞれの母国のスピリットでもあります。
静かな月の光に照らされたピッチという名の舞台で、二つの異なるリズムが奏でる一つのショー、それがサッカーなのです。
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On the pitch 聞こえるだろう
You'll never walk alone
Across the space 星の数のように
≪VOLT-AGE 歌詞より抜粋≫
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「You'll never walk alone」は、イングランドのクラブチーム、リバプールFCのサポーターソングです。
この曲が後押しとなって幾度となくリバプールの窮地を救って来ました。大のリバプールファンのヨンスが、「You'll never walk alone」を『VOLT-AGE』の歌詞の一部に入れた理由は、「You'll never walk alone」がリバプールの魂であるように、Suchmosもこの曲を選手や、サポーターの魂に響く曲にしたかったからに違いありません。
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心つなぐのは そ の Heartbeat
置き去りにする そ の Heartbeat
≪VOLT-AGE 歌詞より抜粋≫
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ワールドカップに出るようなチームでは、ピッチに立つ選手たちは皆、“振り返ればヤツがいる"というレベルにまで意思の疎通を極めています。
まさに「You'll never walk alone」。
それは、言い換えればチームの鼓動が一つになっていると言う事です。鼓動が重なれば、パスを繋げる事も、敵を置き去りにする事も自由自在。言葉など必要ないのです。
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答えを出すのは そ の Heartbeat
The heartbeat by your side
≪VOLT-AGE 歌詞より抜粋≫
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クラブチームより明らかにお金にならない代表チームで戦うモチベーションは何でしょうか。
それは、“自分の国の威信をかけて戦う"という誇りです。誇りを持ち、チームの鼓動が一つになった国だけが、ワールドカップで結果が出せるのです。
そのためには“自分のそばで鳴る仲間の鼓動を信じろ"とこの歌詞は語っています。
『VOLT-AGE』が“サッカーに合わない"と批判された理由は、華やかさに欠ける曲調にありました。
しかし、華やかなゴールに至るまでの無言の駆け引きにこそ、サッカーの醍醐味はあります。
『VOLT-AGE』からは、その手に汗握る攻防戦の熱気がヒシヒシと伝わって来ます。『VOLT-AGE』は、“サッカーに合わない"のではなく“サッカーに合い過ぎた"のです。
なぜなら、テレビの前で白髪がドッと増えるような緊張感で試合を見ているサッカーファンには、フェードアウトして行くサウンドの向こうに、ゆっくりと弧を描きながらゴールネットに吸い込まれて行くボールの軌道が、はっきりと見えていたからです。
TEXT 岡倉綾子