ファンから寄せられた、奇妙な質問
ある朝、自分に岩が転がってきたらどうする?
この質問はASIAN KUNG-FU GENERATIONの公式サイトにある後藤正文の日記:ゴッチの日記にファンからあった質問。ほとんどの人が避ける・逃げると答えるように、後藤本人も「必至に避けます」とコメントしている。
こんな不思議な質問がファンから寄せられたのには、もちろん理由がある。彼らの4枚目のアルバムとなる『ワールドワールドワールド』に繋がる楽曲が先行販売されたからだ。
その楽曲こそ、『転がる岩、君に朝が降る』だ。
ロックな彼らには珍しいポップなメロディに乗って、「できれば世界を僕は塗り替えたい」というようなシンプルなメッセージを放つ。
今までにない仕上がりの曲となった為、新しいアジカンとも称される名曲で、じんわりと後からくる良さが持ち味。タイトル通り、「朝」の躍動感を感じさせるナンバーとなっている。
歌詞の中にも、「転がる岩」が登場する。これが何を指しているのか、と考えながら聴いてみるのも面白いかもしれない。
転がる岩、君に朝が降る
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出来れば世界を僕は塗り変えたい
戦争をなくすような大逸れたことじゃない
だけどちょっと それもあるよな
何を間違った?
それさえもわからないんだ
ローリング ローリング
初めから持ってないのに胸が痛んだ
≪転がる岩、君に朝が降る 歌詞より抜粋≫
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「出来れば世界を僕は塗り替えたい」
できないとわかっていて、望むことは沢山ある。人間、欲望にまみれているのだから大小さまざまな願いがあるだろう。
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俳優や映画スターには成れない
それどころか 君の前でさえも上手に笑えない
≪転がる岩、君に朝が降る 歌詞より抜粋≫
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日常でさえ上手く過ごせていないのに、叶うわけではないのだけれど。いや、普段からやっていけてないから、そんな事を願ってしまうのかもしれない。
世界を塗り替えれば、自分も生まれ変わることができる。
しかし、歌詞では上手に笑えない時点で、術はないと歌っている。たとえ周りが様変わりしても、自分が変わったことにはならないからだ。
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岩は転がって 僕たちを何処かに連れて行くように
≪転がる岩、君に朝が降る 歌詞より抜粋≫
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さて、そんな思考のループに迷いこんでいる時に役立つのが「転がる岩」。1人で悩んでローリングしてるより、と何処かへ連れて行ってくれる。ここでの岩は、大きい石の塊ではなくロックンロール。
岩のような力強さで、聴いた者を連れていく。それが、この楽曲でアジカンが贈ったロックなのだ。
転がる岩の先に、見える光を探して
心が絡まっていると、なかなか先へ進めないものである。そんな時に岩が転がってきたら避けたくもなるだろう。しかし、だからこそ岩を受け止める事も必要なのかもしれない。
一緒に転がりながら走り抜けた先に、輝く朝が見えてくるはずだから。
●転がる岩、君に朝が降る / MV
TEXT:空屋まひろ
1996年結成。後藤正文(vo.g)、喜多建介(g.vo)、山田貴洋(b.vo)、伊地知 潔(dr)による4人組ロックバンド。 03年メジャーデビュー。同年より新宿LOFTにてNANO-MUGEN FES.を立ち上げ、2004年からは海外アーティストも加わり会場も日本武道館、横浜アリーナと規模を拡大。 2016年にはバンド結成20···