Aimer 『STAND-ALONE』
歪んだ愛と苦悩
歌詞中には男女2人が登場するが、主に描かれているのは女性側の心情だ。
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重ねた夢の隙間 彷徨う
今もまだ 今もまだ
揺らいだ現実全て捨てて
これはまだ夢の中?
≪STAND-ALONE 歌詞より抜粋≫
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男女は恋愛関係にあり、最初は上手くいっていたのだが、だんだんと2人の関係は陰り始める。
彼女の方が今ある“幸せ"に対して不安に思い始めたのだ。
何もやましい事をしていない彼に対して、“浮気しているんじゃないか"“私の事を嫌いになってきているんじゃないか"などというような勝手な思い込みをしてしまう彼女。
このような脆く情緒不安定な感情になり、恋人に対してネガティブな妄想を膨らませてしまうことを「オセロ症候群」といい、現実でも起こり得る症状なのだ。
歌詞には、「オセロ症候群」にかかってしまった彼女の心情が描かれている。
冒頭の部分では、不安定な自分であることに辛くなってしまった彼女は、彼に別れを切り出すことを決心する。
彼と別れれば、ネガティブな感情によって消耗していく自分とさよならできると思ったからだ。
彼の気持ちは彼女へと届くのか?
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さよならって君が叫んでる
さよならって今も叫んでる
間違いだらけでも そのドアを開ければいいと
≪STAND-ALONE 歌詞より抜粋≫
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サビの3行に込められた彼の彼女への思い。
愛していた彼女から突然別れを切り出された彼のやり切れなさが表現されている。
「今も叫んでる」という歌詞から、別れて月日が経過しても、彼の中から彼女の存在が消えていないことが分かる。
彼女が自分に対して疑心があり、苦悩していたことは分かっていたが彼が潔白を何度証明したとしても、彼女の気持ちが変わることはなかった。
変わって欲しかった。
以前の様に純粋な気持ちで自分を見て欲しかった。
しかし、彼女を変えることができるのは彼女自身しかいないのだ。
「間違いだらけでもそのドアを開ければいい」という彼の思いに対する彼女の答えは、「何も変われないなら 哀しい歌ずっと歌ってもいいの?」だった。
2人が別れるまで、彼女の中のネガティブな感情のループが止まることはなかったのだ。
幸せだった過去
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最初に君がついた嘘
夜明けは来るよと囁き
泣きたいほど あの時間こそが幸せだった
星座すら逃げ出して
一人立ち尽くす 星も見えない夜
≪STAND-ALONE 歌詞より抜粋≫
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幸せに過ごせていた日々の中で、彼が落ち込んでいる時に彼女が励ましてくれた。
“悩みに苛まれ暗闇にいたとしても、いつか必ず光が見つけられる。"
そんな嬉しかった言葉さえ、1人なった今の彼には嘘であったかのように思えるのだ。
“あの頃に戻りたい"と強く願っても、叶うことはもうない。
別れた2人の心の行方
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{Stand:スタンド}{alone:アローン} 歪んだ世界で
{Stand:スタンド}{alone:アローン} 描いた世界へ
Bye-Bye 窓辺に月明りも届かない場所
何もかも投げ出して
暗闇に浮かぶ 星になりたい夜
≪STAND-ALONE 歌詞より抜粋≫
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彼と別れたことで、「オセロ症候群」の症状も落ち着き、徐々に心が回復に向かっていく彼女。
しかし、落ち着きを取り戻すにつれて彼のことをふと思い出し、今度は自分勝手な理由で彼と別れてしまったことに対する後悔の念が沸き上がってくるのだった。
そして彼の方は、“苦悩している彼女にしてあげられることはなかっただろうか"と自分自身を責め、別れを受け入れてしまったことを後悔している。
タイトルでもある『STAND-ALONE』は孤立を意味する。
彼と彼女が大切な人を失った後の喪失感、または空虚感のようなものをこの楽曲で表現したかったのではないだろうか。
TEXT 蓮実 あこ