印象的なウィスパーボイス
Uruの歌声はささやくような”ウィスパーボイス”です。
強い主張が声に反映されていない分、歌詞の世界観がダイレクトに心に突き刺さります。
彼女の声に聴き入りながら、自分の世界も自由に広がっていくような不思議な感覚…。
それはきっと、彼女の”押し付けない”語りかけるような優しい声のせいなんだと思えるのです。
ドラマ”中学聖日記”の主題歌「プロローグ」
自身7枚目のシングル『プロローグ』は2018年に放送され大変話題となった”中学聖日記”の主題歌でした。
この楽曲はドラマのために書き下ろされたものです。
中学生の男子生徒と女教師の”禁断の恋”を描いたドラマだったのですが、冷静に考えるとテーマはとてもショッキングなものです。
普通は絶対にあってはならない、生徒と教師の恋愛なのですから…。
でもそれを真っすぐに受け止められたのは、主人公の有村架純と岡田健史の汚れていないさわやかさ…もう一つにUruの歌う主題歌『プロローグ』の力が十分にあったのだと思えるのです。
むしろ、この『プロローグ』があったからこそこのドラマをれっきとした”純愛”として観ることができたのではないか?…そう思えてなりません。
プロローグ
----------------
目にかかる髪の毛と
かきわけた指
壊れそうでどこか
寂し気な背中
頼りない太陽を
滲ませながら
微笑んだ その横顔
見つめていた
≪プロローグ 歌詞より抜粋≫
----------------
冒頭の部分で、ぼんやりと恋する相手を見つめる主人公がいます。
「壊れそう」という言葉で若く幼い相手を、「頼りない太陽」で自分を想像させます。
『プロローグ』とは序章、または事の始まりを意味します。まさにこの部分は”始まり”の”始まり”です。
確実に変化し始めた自分の気持ちを冷静に受け止めようとしている主人公が感じ取れます。
----------------
いつの間にかその全て
視界に入ってくるの
心が波打つ痛みに
どうして気づいてしまったの
≪プロローグ 歌詞より抜粋≫
----------------
冷静を装って”見守っていた”つもりが、実は”見つめている”自分に気が付きます。
”見守る”と”見つめる”は大きく違いますよね。
見守るというのは、親心のような気持ちで遠くから見るということ。
でも見つめるとはそこに個人的な気持ちが含まれるのです。
気が付くと相手を見つめている自分がいる…。そうしているうちに、まるで冷静とは真逆のざわつく気持ちに気が付きます。
----------------
あなたを探してる
隠した瞳の奥で
誰にも見えぬように
行き場もなくて彷徨いながら
あなたと見る世界は
いつでも綺麗だった
空には一つだけ
淡く光る 小さな星が
残ってる
≪プロローグ 歌詞より抜粋≫
----------------
そんな自分の気持に気が付いた主人公は、その気持ちを必死で隠そうとしています。
誰かを好きになってしまっても、普通なら隠す必要なんてありません…。
なのでこれは、誰にも言うことができない悲しい恋なのでしょう。
「綺麗だった」とあるということは、今はその相手はそばにいないことが分かります。
二番では苦しい胸の内が吐き出される
----------------
風は冷たいのに
染まった心は赤いままで
あなたに触れたいと思ってしまった
どうして二人出会ったの
痛くて苦しくて
それなら見えないように
どこかへ飛んでいけ
そう思うのに
≪プロローグ 歌詞より抜粋≫
----------------
とても気持ちの高まりが表現される、二番のサビ部分です。
通常ですとこのように盛り上がる部分は歌声にも強弱がつき、もっとも心情を表したい部分がオーバーに伝わるものですが、Uruの歌い方は常に一定が保たれます。
だから余計に、その苦しくて切ない主人公の想いが感じとれるのです。
盛り上げるべきところであえて盛り上げない・押しつけない手法が、Uruの他にはない魅力といえます。
ヴォーカルに反比例し歌詞はとても情熱的
『プロローグ』はUruの作詞・作曲によるものですが、全体を通して解釈していくと分かることは、とても”情熱的”であるということ。感情をさらけ出さずに歌うUruの歌い方とはまるで正反対な印象を受けます。
特にこの楽曲でそれを強く感じたのがこの部分…
----------------
破れそうに膨らんで
真赤に熟れた果実は
誰かの摘む手を待っている
ねえ、それは 私だった
≪プロローグ 歌詞より抜粋≫
----------------
たったこの4行で、相手が年齢的に幼くてもどれだけ自分を強く思ってくれているのか、そしてその気持ちに自分は応えなければいけないのかという葛藤が痛いほど伝わります。
さらにUruの楽曲でもう一つ思うこと…それは感情表現が分かりづらくなくフワフワしたものでないということです。
彼女の楽曲が優しく感じながら、じっくり聴くと情熱的だと実感できるのはそんな回りくどくないストレートな歌詞のせいに他ならないのでしょう。
Uruのその他おすすめ曲!
奇蹟
----------------
柔らかく触れる髪と
時を止める魔法の微笑み
言葉にできない愛が
頬を伝って零れてた
何も特別な事など無くてもいい
ただあなたと歩むこの先に
笑顔満ちるように
≪奇蹟 歌詞より抜粋≫
----------------
ドラマ”コウノドリ”の第二シリーズ主題歌となりました。この楽曲もドラマのために書き下ろされたものです。
産婦人科を舞台に”命”を題材としたドラマにしっかりと寄り添った壮大なバラードとなっています。
優しく流れる時間と、生まれくる小さな命がまるで目にみえるかのような暖かい歌詞に注目して頂きたいです。
The last rain
----------------
私にはあなたを包むことができなかった
この涙を優しさに変えて
これで最後の さよなら
And our love shines forever, and I dream of you
I just wanna say,
I wish I would have met you earlier
もう会えなくても もう言えなくても 祈っている
この想いは
≪The last rain 歌詞より抜粋≫
----------------
別れのその日を”最後の雨”と題した『The last rain』です。この楽曲は歌詞の半分以上は英詞となっています。
悲恋の歌ですが、なぜかこの時期に聞きたくなるしっとりとしたバラードといえます。
ピアノの音色が雨音のように聴こえ、どういうわけか心落ち着くのです…。
二人の間にはなにか理由があります…悲しいけれど別れの日がやってくるのです。
なにか主人公に決意のようなものも感じられます。
私達の愛は永遠、もっと早く出会えていたら…。そして二人は離れていきます。
流れる涙と苦しい心を”雨”にたとえて、最後は「この想いは忘れない」と閉じられます。
心が疲れたらUruの一曲を
今回はUruの楽曲を3曲ご紹介してきましたが、世界観はそれぞれまったく違うものです。
彼女の歌は明るくアップテンポな歌かといえば、実際は違います。
歌詞を紐解いていきますと、どちらかといえば悲しい系の歌が多いのも事実です。
ですが、聴いた後にすっきりとした解放感が感じられるんです。
悲しい歌を聴いてどっぷり…という感じにはまったくもってならない、これとても不思議な感覚です。
Uruの持つ声の素晴らしさと、歌詞の静かでもストレートな表現が、見事なまでに気持ちを綺麗に掃除してくれます。
忙しい毎日にちょっと疲れたな…なんて思ったら、ぜひUruの一曲を処方してみてください!
TEXT 時雨