“僕”が音楽を続けられた理由
元々音楽好きだった“僕”は、ある時“君”と出逢い、“君”も音楽が好きだったということが分かる。“君”と音楽をやる中で、口には出さないが“僕”は“君”に惹かれていったのだろう。
“君”に直接言えないような思いを、歌詞の中に描き、“君”が好きなメロディを付けたりもした。
“君”という存在があるから、“僕”は音楽を続けられていたのだと思う。
“君”を失った後の喪失感
ある時、“君”は音楽を辞めてしまう。音楽で繋がれていた“君”と“僕”の距離は途端に遠くなってしまったことが分かる。
歌詞中の「これから僕だけ年老いて」は、年を取るのは“僕”だけで、“君”は年を取らないと言い換えることができる。一緒に音楽をやっていたから分かっていた“君”の様子が、分からなくなってしまったという表現なのだろう。
----------------“君”がいなくなり、悲しみに暮れた“僕”の心情が表現された歌詞の冒頭。
小さな穴が空いた
この胸の中心に一つ
夕陽の街を塗った
夜紛いの夕暮れ
忘れたいのだ
忘れたいのだ
忘れたい脳裏を埋め切った青空に君を描き出すだけ
≪心に穴が空いた 歌詞より抜粋≫
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悲しみから抜け出せず、何も手に付かない現状から抜け出すためにも“君”という存在を忘れようと試みてるが、月日がどれだけ経っても忘れることができないでいるのだろう。
“君”という存在が“僕”の中でとてつもなく大きな存在だったように思える。
“君”を失ってから気づく後悔
----------------心にぽっかりと穴が空いてしまったかのような、喪失感に日々駆られ続ける“僕”。
だから心に穴が空いた
埋めるように鼓動が鳴った
君への言葉も
口を開けば大体言い訳だった
≪心に穴が空いた 歌詞より抜粋≫
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“君”と音楽をやっていた時には、こんな日が来ることは思いもよらなかったのだろう。
----------------2人で音楽をやっていくのは、いつも楽しい事ばかりではなかった。
君の心に穴を開けた
音楽が何だって言うんだ
ただ口を開け
黙ったままなんて一生報われないよ
≪心に穴が空いた 歌詞より抜粋≫
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お互いの思いがぶつかり、反発しあって、“僕”が“君”の考えを否定して、“君”の心を傷つけてしまうこともあったのだろう。
“君”がいなくなってしまってから、“あの時こう言っていればよかった”というような後悔の念に苛まれる“僕”の心情が歌詞に表現されているように思う。
“僕”の心境の変化
長い間、“君”を失った喪失感と後悔で、音楽を作ることもしなくなっていた“僕”の心境が徐々に変化し始める。
----------------“僕”が“君”の分も音楽を好きでいようというような袈裟なことは言えないけれど、“君”が作っていく筈だった音楽を、“僕”は1人であろうと作っていく覚悟をしたことが伺える。
君の人生になりたい僕の、人生を書きたい
君の残した詩のせいだ
全部音楽のせいだ
≪心に穴が空いた 歌詞より抜粋≫
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「君の残した詩」とは、“君”が書いていた詩のことではなく、“君”が“僕”にくれたもののことを指しているのだろう。
“君“がいたから、毎日が楽しかった。
“君”がいたから、音楽を続けることができた。
“君”がいたから、“僕”が存在できていた。
----------------エイミーとは、“僕”が作る音楽の中に登場する“君”の詞中での名前だと推測する。
僕の心に穴が開いた
君の言葉で穴が開いた
今ならわかるよ
「君だけが僕の音楽」なんだよ、エイミー
≪心に穴が空いた 歌詞より抜粋≫
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“君”と一緒に音楽をやれていた日々のことを想像し、その想いを音楽で表現する“僕”。
この楽曲は、大切な人と音楽という好きなことをやれなくなるという悲しみだけではなく、悲しみを乗り越えてどう生きていくかという、一種の人生観が歌われているのだ。
TEXT 蓮実 あこ