「逆」に含まれる意味を探る
Base Ball Bearがスリーピースの新体制のもと2017年4月にリリースしたフルアルバム『光源』に収録されている『逆バタフライ・エフェクト』は、そのユニークなタイトルが目を引く。ベボベが示す、『バタフライ・エフェクト』の逆とは一体何を意味するのだろうか。積み重ねてきた先にある「運命」の正体を知る『逆バタフライ・エフェクト』とは。
Base Ball Bearとは?
Base Ball Bear、通称ベボベは小出祐介(Vo.Gt)、堀之内大介(Dr,Cho)、関根史織(Ba,Cho)の3名による3ピースロックバンドだ。
2016年3月、結成当初からのメンバーであった湯浅将平(G)が脱退し、その後2017年4月12日、7枚目のフルアルバム『光源』をリリースした。Base Ball Bearの楽曲は、疾走感のあるメロディーに重なる小出祐介(Vo.Gt)の少しハスキーな歌声が清々しい夏のような情景の想像を掻き立てられる。
しかし、ただ「爽やかな青春ソング」というわけではない。作詞も担当する小出祐介(Vo.Gt)の、時に心臓が痛むほど鮮烈なメッセージを孕む歌詞も、ベボベの楽曲の特徴の一つだ。
そんなBase Ball Bearが、現在のスリーピース体制になって初めて完成したフルアルバムである『光源』に収録されている『逆バタフライ・エフェクト』。これまでBase Ball Bearは、一曲一曲に込められた想いで多くの人の感情を揺さぶってきた。それは一種の「バタフライ・エフェクト」を楽曲の数だけ起こしてきた、とも言える。
そんなBase Ball Bearが示す「バタフライ・エフェクト」の「逆」とは、一体何を意味するのだろうか?歌詞を中心に考察していく。
今を形取る「花束」の一輪を知る
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摘み取って束ねて 抱えた 花束の
最初の一輪を いまでも おぼえていますか?
色取り取り 薫る花々が 風にゆれる
自分こそだよ 運命の正体は
≪逆バタフライ・エフェクト 歌詞より抜粋≫
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この曲は、いま自分を取り巻く状況や環境を「花束」と例え、今のあなたを形成しているものは全て、今まであなたが選びとってきたものたちの集合でできているということを教えてくれる。
「運命」というと、すでに決められていたり、自分ではどうすることもできないようなイメージを受けてしまう。しかし、そんな「運命」だって、自分が選びとってきたものが積み重なってたどり着いたものだ。
過去の選択の先に今があって、今選択したものの先に未来がある。その自分が積み重ねてきたものこそが、「運命」を作っているのだ。「自分こそだよ 運命の正体は」というフレーズには、そんなメッセージが感じられる。
「決められた並行世界」を決めるのは誰?
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僕ら好き嫌いをくりかえして
イエス・ノーを幾度 選び続け
右往左往 何万回目の今日にたどり着いて
まだ あの日あの時ああしてたらって
祈り呪いが尽きなくても
いま、この時こうしてること「も」鳴り響いて
決められたパラレルワールドへ
決められた並行世界へ
≪逆バタフライ・エフェクト 歌詞より抜粋≫
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一般に「バタフライ・エフェクト」とは、力学系の分野において、初期条件のわずかな差が、その結果に大きな違いを生む現象を、蝶が羽を動かすだけで遠くの気象が変化するという意味の気象学の用語から援用された言葉だ。要するに、ごく小さな動きが、のちに巨大なムーブメントを起こすことをいう。
Base Ball Bearが込めた『逆バタフライ・エフェクト』の意味とは、単純に巨大なムーブメントが、その先で小さな変化を生み出す、という意味ではない。これまで積み重ねてきた小さな決断や選択が大きな束としての今を作っていて、その大きな束が未来の小さな選択の糧になる、という意味での「逆」の「バタフライ・エフェクト」だ。
もしかしたら、「4人のBase Ball Bear」がどこかの可能性で存在したかもしれないし、「Base Ball Bearというバンドがない」ことも、これまでの選択の中でのifの可能性としてはあり得るものだ。
それはベボベに限った話ではなく、私たちも同様で、「あの日あの時ああしてたら」と、回顧し後悔することは、生きていればままあることだろう。そんな想いが時に足枷になったり、重荷になったりする。
しかし、小さな決断の違いで、選ばれなかった選択肢の先にある「パラレルワールド」は無数に存在するが、今選び取ったものだけが「未来」を作る。我々は、数え切れないほど多くの選択肢から影響を受けて、小さな決断を下して生きている。その先にある「運命」に正解も不正解もないのだ。
Base Ball Bearが、現在のスリーピース体制になって初めて完成したフルアルバムである『光源』に収録されている『逆バタフライ・エフェクト』というこの楽曲は、それを、実感を伴った力を持って我々に訴えかけてくるのだ。
TEXT DĀ
小出祐介(Vo.Gt) 1984年12月9日生まれ 関根史織(Ba,Cho) 1985年12月8日生まれ 堀之内大介(Dr,Cho) 1985年1月17日生まれ 2001年、同じ高校に通っていたメンバーが、学園祭に出演するためにバンドを結成したことがきっかけとなり、高校在学中から都内のライブハウスに出演。 その高い音楽性と···