あなたの背中を押してくれる優しい存在
ドラマ『わたし、定時で帰ります。』で人気を集めたSuperflyの「Ambitious」。
ドラマの内容は現代社会で働く人々の心の痛いところをチクチク刺すようなもので、毎週大きな話題を集めていた。
そんな中、この楽曲は柔らかい言葉で背中を押してくれる様な優しい存在であった。
ドラマの世界観を繊細に表現しつつ、それでいて少し落ち込んだ心をそっと支えてくれる様な歌詞。ここに描かれた、働く大人たちへ向けられた言葉を読み解いていきたい。
下ばかり見てちゃダメですよ?
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すれ違う スーツの群れは夜よりダーク
白い靴 踏まれそうになる駅のホーム
うつむいて 画面のリンク
スケートしながら
あの人の悪い噂を拡散中
≪Ambitious 歌詞より抜粋≫
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歌い出しに早速“ドキッ”とさせられた方も多いのではないだろうか。思い浮かぶのは職場から家へ向かう帰り道。電車に乗り込んでくる疲れ切った人々は、なんとなく緊張感のあるピリピリとした空気をまとっている。
周囲に目もくれず、唯一視線を落とすのはスマートフォンやタブレット。疲れて何もする気力はないが、大して興味のないニュースや話題のコラム、つまらないゴシップについ目を通してしまう。
そんな時に限って、誰かの不幸や失敗、過ちは目につきやすい。
自分に全く関係のない誰かへ悪意や怒りを向けた経験は、きっと誰でもあるだろう。
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ねぇ、今宵も夜空に月が綺麗ですよ?
≪Ambitious 歌詞より抜粋≫
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突然だが、私はこのフレーズが大好きだ。
なんとなく疲れて沈んでいる心にすっと染み込んでくるようなこの言葉。Superflyの歌声で語りかけられるとさらに説得力がある。
「下ばかり見るな」という命令でも、「上を向いてごらんよ!」という押し付けでもない。「綺麗ですよ?」でなければ駄目なのだ。人の心をそっと上向きにさせる、とっておきのフレーズである。
毎朝起きるのって、結構大変
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今はきらい oh yeah
でも私は生きている
簡単に手に入るほど未来は楽じゃない
心配ない oh yeah
明日も起きようね
憧れを手放さないでね
格好いい大人たち
≪Ambitious 歌詞より抜粋≫
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学校や仕事に行く前、朝目が覚めた時の小さな小さな絶望。おそらく誰もが経験したことがあるだろう。
今の生活に決して満足しているわけではない。しかし、現状を大きく変えるつもりはない。
ただ一日一日を乗り越え、こなしていく。その繰り返しの連続。そうした日々を送る人は多いのではないだろうか。
大人になると、その生活の一つひとつは自分の思い付きや気分の変化だけで何かを変えることが難しくなる。しかし、なんとなく“こんな大人でありたい”というような理想や憧れはきっと誰もが持っている。
実現することはなくとも、その希望はあなたの支えになるだろう。叶わぬ夢でも、あなたが過ごす現実に彩を与えているだろう。
だから、それを実現できないことに負い目を感じたり、出来ない自分を嫌悪する必要は全くないのだ。
“嫌々でもきちんと毎日起きて、日々を乗り越え懸命に働くあなたは偉いぞ!頑張っているぞ!明日も頑張ろうね!”というエールが込められている。
頑張れ、格好いい大人たち
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夢はきらい oh yeah
ほら、急かさないでちょうだい
憧れを手放さないでね
大変ね 大人たち
≪Ambitious 歌詞より抜粋≫
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ついつい現実主義になり、理想・夢・憧れなどという言葉が妙に青臭く暑苦しく聞こえてしまう人も多いだろう。だが、考えてみてほしい。あなたには今後の展望や、守りたい大切なもの、幼いころに抱えていた希望は本当に一つもないだろうか。そんなはずはない。
どんなに忙しくても、辛くても、自分の理想や憧れ、本当に大切なものは決して手放してはならないのだ。
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夢が見たい oh yeah
明日に行かなくちゃ
憧れは手放さないまま
格好いい私になれ
≪Ambitious 歌詞より抜粋≫
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なんだかんだで明日も今日と同じような一日を過ごすのだろう。でも大丈夫。本当に守るべきものを守り、見失わないあなたは「格好いい大人」へ近づけているはずだ。
だからどんなに忙しくても、苦しくても、どうかそれは絶対に手放さないで。きっとそれはいつか、あなたを輝かせてくれる。
TEXT 島田たま子