楽曲解説 前半
──では、アルバムに収録された新曲を1曲ずつ解説していただけますか? 1曲目「Continue」はあいみょん提供曲ですが、木村カエラが<おばさんになったこと>と歌ってるというインパクトが……。木村カエラ:それが一番大事なところですね(笑)。おばさんもおじさんも、歳をとるほどずっと若さを追いかけてるけど、絶対に自分のもとには来ないことはどこかでわかってるじゃないですか。だから、言っちゃえって思ったの。
──「虚勢を張らない」という発言を体現してる曲ですが、それでもこれを言えちゃうのがすごいすよね。しかも、アルバムの1曲目で。
木村カエラ:あははははは。やっぱりすっごい悩みましたけど、あいみょんちゃんとやろうって思ったのも、5年前にたくさんの新しいアーティストが出てきた時に、いいなって思う人がいっぱいいるのに、プライド的に頼めなかったんですよ。ずっと『だっせー、自分!』って思ってたけど、やっぱり頼めなかった。そういうのも全部取っ払ってやれる自分になるまでに5年かかったの。
その時には自分はもういわゆる中堅みたいなことになっていて、上の世代にはもっと活躍し続けているCharaさんとかがいて、下の世代にはあいみょんちゃんみたいな才能がある子がいて。今、私が真ん中にいるのならば、両方と一緒に作って、しかも自分が認めたくないことを認めてしまう。
それが今、必要なんじゃないかって。で、あいみょんちゃんと会って話をした時に、『おばさんになるってことをカエラさんが言ってたらカッコいい。』って言われて。おばさんっていうのが意外とカッコいいことになるんじゃないか、みたいな。
──僕もなかなか自分でおじさんになってることを認められないので、カエラさんが率先して言ってくれると救われる気がします。
木村カエラ:おじさんでーす、おばさんでーすっていうのが、めちゃカッコいい感じの雰囲気になったらいいなって思います。この言葉を歌うのはすごく勇気がいることだったけど、ひとつ人前で裸になった気分っていうか、おそらくそれをしたかったんだと思う。その感覚がすごく心地いい。で、これは1曲目にしようってずっと決めてたから。
──どうしてですか。
木村カエラ:こんなに衝撃的な歌ないから。で、人を認めるってことも自分が思うカッコいい人のひとつの条件っていうところがあって。カッコいいと思うものは1曲目で、自分の作った曲は最後って言うのも決めてたの。最後は私っていう。すごく大事な曲になりましたね。
──そんなあいみょん提供曲の『Continue』ですが、あいみょんの書く歌詞で"この表現はすごい!"と思ったようなフレーズを挙げていただけますか?
木村カエラ:あいみょんちゃんと初めて会った時に、「カエラさんがおばさんって歌ったらかっこいい」と言ってもらって、私もおばさんになっていくことを認めたいって両方の意見が一致して、おばさんという言葉をとりいれてはみたものの、ものすごくパンチがあって、この言葉とこの歌があるからこそ、かっこいいおばさんになれる、そんな気持ちにさせてもらえて、すごく二人の想いがぶつかって本当に名曲ができたと思っています。
──続く「セレンディピティ」は本人出演のダイハツのCMソングになってます。
木村カエラ:セレンディピティ=偶然の出会う幸せっていう言葉を歌にしたくて作りましたね。ダイハツに合いそうな歌詞にしようと思って浮かんだ言葉がサビに来ていて。
車が緑色で、外観がテントウムシみたいなの。クローバーとテントウムシは両方ともセレンディピティのラッキーアイテムだから、めっちゃぴったりだと思って。私は運があるからセレンディピティに出会える、未来へ未来へレッツゴー!みたいな曲。これは新木村カエラが歌ってる。
──映画『ペット2』日本語版イメージソングになっている「BREAKER」はまさに<壊せ!>っていう曲ですね。
木村カエラ:そう。この曲を書いてる時は積み木をぶっ壊す人になってた。壊してゼロにして、また新しい形になればいいじゃん、みたいな。これが私の今のモードなんだけど、『ペット2』も主人公が自分の殻を破る話だったの。
──マイナーチェンジではなく、スクラップ&ビルド、死と再生なんですよね。
木村カエラ:うん。1回、なくすっていう。積み上げてきたものにとらわれるなっていうことかな。積み木っていうのは、要は木村カエラ像だけど、それを壊してぐちゃぐちゃにしないと、スタートできないなっていうイメージがありましたね。また新しくやり直そうよ、楽しくやろうよっていう感じがありますね。
──ノルウェーのアートロックバンド、PomPoko提供の「MUSIC ON, WORLD Off」は自由で楽しい曲になってます。
木村カエラ:J-WAVEのラジオを聴いてて出会って。変態感とアートっぽさっていうのかな。絵で表すならピカソみたいな音作りだなって思って。で、聴いてたら、バンド名がポンポコで、日本のアニメ『平成たぬき合戦ポンポコ』からとってるって言ってて。
じゃあ、日本から頼んだらやってくれるかもしれないって思ってオファーをさせてもらったんだけど、一発目に送られてきたデモでOKでした。ギターの動き方とかすごいよね。
──エレキの音自体が変でカッコいいですね。
木村カエラ:そうそう。音がとにかく気持ち良くて。歌詞の中にもミュージックっていう言葉を入れたいと思って。他は言葉遊びで、もちろん自分のモードもあるけれども、音がとにかく面白いからどうしても音楽を聴きたくなるっていうか、オケを聴きたくなる。そこで自分のテンションが上がってくっていう感覚が素晴らしいなって思って、こういう歌詞になってるんですよね。