大人になるにつれて失うもの
この世界で私達が生きることのできる時間は限られている。
長いようで短い一生の中で、辛さや苦しみを乗り越え、生きがいになるような喜びをたまに見つけるような、そんな日々を送っている。
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諦めた者と 賢い者だけが
勝者の時代に どこで息を吸う
支配者も神も どこか他人顔
だけど本当は 分かっているはず
≪愛にできることはまだあるかい 歌詞より抜粋≫
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ここでいう勝者とは、富や名声を獲得した者のこと。
そして諦めた者は、富や名声が欲しいという望みが叶わなかった者、賢い者は富や名声には興味はないが、知識が豊富で頭がキレる者のことを言っているのだろう。
そして、世間は富や名声を獲得したものに羨望の目を向ける。このような人間の格差社会をこの歌詞で表現しているのだろう。
「支配者や神」は、世界や多くの人間を動かせる偉大な力のある者のこと。
しかし、その力で格差社会をどうにかしようという気はなく、自分の居場所や権力の保持のことしか考えていないといったような皮肉を歌っている。
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勇気や希望や 絆とかの魔法
使い道もなく オトナは眼を背ける
≪愛にできることはまだあるかい 歌詞より抜粋≫
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子供の頃は、勇気を持った行動や希望を抱いたり、人との絆を大切にするということを何の曇りもない純粋な気持ちでできていた。
大人になるにつれて、周りの目を気にしてやりたいことを躊躇し、希望を抱く前に諦めて、人のことより自分のことで精一杯になってくるのだ。
それは、大人になると社会的責任がのしかかってくることにもあるかもしれない。
“君”の正体とは?
歌詞中に登場するのは“僕”と“君”の2人。“僕”は主人公的存在であると歌詞から読み取れるが、“君”はどういった存在なのだろうか?
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それでもあの日の 君が今もまだ
僕の全正義の ど真ん中にいる
世界が背中を 向けてもまだなお
立ち向かう君が 今もここにいる
≪愛にできることはまだあるかい 歌詞より抜粋≫
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「あの日の君が今もまだ」「君が今もここにいる」という歌詞から、今は傍にいない“君”だけど、“僕”は“君”のことを忘れることができずにいる。
臆病だった“僕”に何かに立ち向かうことの勇気を教えてくれた“君”。
自分が正しいと思うことを貫き通す意志の強さを持った“君”。
友人だったのか恋人だったのか、“君”が“僕”にとっての何だったのかは明確には分からないが、“僕”の今後の人生を左右するくらいの影響を及ぼした人物であったということが推測できる。
“愛にできること”を探す旅
“お金があればできることは?”と問われれば、すぐにいくつかの答えを出すことができるが、“愛にできることは何か?”と問われたら、すぐに答えを出すことはできない。
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君がくれた勇気だから 君のために使いたいんだ
君と育てた愛だから 君とじゃなきゃ意味がないんだ
≪愛にできることはまだあるかい 歌詞より抜粋≫
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この歌詞では、愛をもらった人が愛を自分に与えてくれた人に愛のお返しをすることを
表現している。
愛は目には見えないもので、愛自体が不明確なものではあるが、この楽曲では、“人のことを大切に思う心”が1つの愛の形であることを言っているのだ。
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何もない僕たちに なぜ夢を見させたか
終わりある人生に なぜ希望を持たせたか
なぜこの手をすり抜ける ものばかり与えたか
それでもなおしがみつく 僕らは醜いかい
それとも、きれいかい
≪愛にできることはまだあるかい 歌詞より抜粋≫
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人生には、いつか必ず終わりが来る。
終わりが来ることを知っていながら、夢を見たり希望を持ったりすることで人生を少しでも有意義なものにしようとする。
でも終わりには何も残りはしない。
ではなぜそんな人生を人は懸命に生きようとするのだろうか?
その問いに対する1つの答えは“愛し愛されたいから”だ。
人は生まれてから、親や周りの大人に愛をもらいながら育ち、いつしか愛する人を見つけて自分が愛を与える存在になっていく。
『愛にできることはまだあるかい』は、1人1人の人生に与える愛の影響力について歌われた楽曲なのだ。
TEXT 蓮実 あこ