早く聴きたい!桑田のオリンピック・ソング
民放各局が共同でオリンピックを盛り上げるプロジェクト、「一緒にやろう2020」の応援ソングを、桑田佳祐が担当することが大きく報道されています。嬉しいですね!桑田佳祐の作る音楽は、ときに「昭和の歌謡曲」の要素が入っていたり、アップテンポの曲なのに、ドゥーワップ・コーラスが入っていたり。感涙物の正統派ラブソングもあれば、カラッとしたエロスを歌った曲もある。日本では楽曲の中に取り入れにくい、社会問題を正面から取り扱った曲もあります。
音楽性の幅がとても広いですよね。
そして、その広い音楽性を持つ曲、一曲一曲が鮮やかな桑田色に染められていて、決して「○○風」の曲にはなっていない。誰からも愛されるポップ・ロックなのに、唯一無二の色をしています。
歌詞も、曲のリズムに溶け込んでいて、日本語でもなく英語でもない、「桑田語」で書かれているように感じますよね。
そんな桑田佳祐が作るオリンピックの応援ソングを聴くのが、本当に楽しみです。きっと、オリンピックが終わっても、ずっとずっとみんなから愛される曲が出来上がることでしょう。
桑田佳祐の魅力をもっと掘り下げてみたくて、調べました。
サザンオールスターズのフロントマン
桑田佳祐といえば、やはりサザンオールスターズのフロントマン!サザンオールスターズは、2019年6月で、デビュー41周年の記念日を迎え、デビュー当時は大学生だった桑田も、還暦を超えました。デビュー曲「勝手にシンドバッド」は、著名パーカッショニスト、斉藤ノヴがリズムアレンジを担い、今までのJ-POPにはなかったラテン系のリズムで、新鮮な驚きを与えましたね。
あのデビューの日から41年後の今でも、桑田の作る曲は新鮮で、キラッキラに輝いています。そして、一度発表した曲は、時代が変わっても色あせない。
桑田佳祐は稀有な才能を持ったアーティストなのだと、深く感じますよね。
歌詞もみていきましょう。
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波の音が遠くでCaution 鳴らす
消えゆく陽を待って涙ぐむ
もう一度だけSuperstition 廻れ
悲しい事も愛に変わるように
≪YOU 歌詞より抜粋≫
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アルバム「海のYeah!」に収録されている「YOU」です。去っていった女性を想う切ない男心を歌う正統派ラブソングですよね。
波の音に注意(Caution)を引かれつつ、海岸で夕日を待ちながら涙ぐむ。迷信(Superstition)が廻って、悲しいことが愛に変わるように願う。
失恋を歌いながらも、決して重くはなっていませんよね。
去っていった女の人に、「彼を傷つけてしまった」と罪悪感を抱かせるようなウェットなところが全くない。ここが桑田佳祐の楽曲らしさですよね。失恋の曲なのに何故こんなにも爽やかに感じるのでしょう?
それは…桑田の楽曲では、「誰のことも否定していない」からではないでしょうか。
普通は失恋すると、”もっとあぁすればよかった”と後悔したり、”どうして僕を捨てたのか”と相手を責めたりしてしまいがちですよね。だけどこの楽曲では決して自分や相手のことを否定しないんです。
「失恋」という出来事そのものも否定しておらず、”そういうこともあるさ”と言わんばかりに受け止めている。自分の人生も相手の人生も肯定していますよね。だから「悲しみも愛に変わっていく」。
「誰のことも否定していない」爽やかさ、自分の人生に起こったことを受け止める度量の大きさが、みんなに愛される曲を作り続けることのできる、桑田佳祐の魅力の一つなのでしょう。
音楽を通しての社会活動
桑田佳祐の活動はサザンオールスターズのフロントマンだけに留まりません。25年ほど前から、音楽を通しての社会活動にも力を入れています。歌詞を見ながら、その活動に触れていきましょう。
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熱い鼓動で
涙が止まらない
悲しい友の声は
何を憂う
≪奇跡の地球 歌詞より抜粋≫
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桑田佳祐とMr.Childrenの「奇跡の地球(ほし)」。エイズ撲滅のための「AAA運動(Act Against AIDS=音楽業界を中心に展開しているエイズ啓発活動)」の一環として、1995年1月に発売されました。このシングルの収益金は、エイズ感染者の治療や感染者の増加防止に使われました。
歌詞の冒頭から、桑田佳祐の熱くて強い想いが伝わってきます。冒頭部分で桑田はAAA活動における自分の立ち位置を「友」という言葉で、はっきりと表現しています。
つまり自分は、エイズで苦しんでいる人たちやエイズ撲滅のために闘う人たちの「友」だと。歌詞を読み進めていくと「brother(兄弟)」や「sister(姉妹)」と呼び掛けている部分もあります。
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Wow… 冷たい風に
たなびく Flag
≪奇跡の地球 歌詞より抜粋≫
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例え風が冷たくとも、「エイズに関心を持とう」とFlag(旗)を立てている、強い気持ちが伝わってきますね。
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奇跡の地球
振り返れば
誰かが泣いている
鏡の中の瞳が
我を憂い
恋する日を
待たずに消えてゆく
子供達の歌は
何を祈る
≪奇跡の地球 歌詞より抜粋≫
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「恋をする日」は子どもの頃にも来ますよね。「幼い初恋」は誰にでも経験があることだと思うんです。でも、病のために、それすら出来ずに消えてしまう命…。自分の状況すら、しっかりと把握できないような年頃の子どもたちの命が消えていく。
歌詞から、強い悲しみが伝わってきます。一度聴いたら忘れられない歌詞ですね。
「AAA活動」の他にも、被災地を支援するライブなど、他者に寄り添う活動をしている桑田佳祐とサザンオールスターズ。その活動からは、熱い気持ちと温かな雰囲気が伝わってきます。
他のアーティストとのコラボレーション
ソロとして、多くの楽曲を発表し、たくさんのアーティストとコラボレーションしている桑田佳祐。ここでは、その一つとして、2018年の夏に亡くなられた、さくらももことのコラボレーション、「100万年の幸せ」を紹介します。
この曲は、フジテレビ系のアニメ、「ちびまる子ちゃん」のエンディングテーマ曲。さくらももこが作詞をし、桑田佳祐が作曲して歌も歌っています。
さくらももこの描いた桑田佳祐、”そうそう!”と思いますよね。私たちがイメージする桑田佳祐は、このアニメーションと同じ、優しさ溢れる人。まるちゃんファミリーと一緒に、お花見しているなんて感激です。
歌詞も見てみましょう。
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今 感じるは愛しさが宇宙にいっぱい
雲の流れ 星の瞬き
見上げてごらん
たった100万年ほどの幸せを掴もう
輝くこの地球に
Oh, 愛を刻み込もうよ
≪100万年の幸せ!! 歌詞より抜粋≫
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末長い幸せを祈る愛いっぱいの歌詞。優しい桑田の声や、かわいいまるちゃんのアニメーションとマッチして、長く心に残ります。まるちゃんが、幸せそうな様子に癒されますね。
オリンピック・イヤーの活躍も楽しみ
そして、オリンピック・イヤーには桑田佳祐の応援ソングが街にあふれるでしょう。これからの活躍も楽しみですね。
TEXT 三田綾子