THE HIGH-LOWSらしいワードセンスが光る
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百年ぶりの世紀末
泣けといわれて
僕は笑った
≪胸がドキドキ 歌詞より抜粋≫
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子どものころにはきっと誰もが持っていた、些細な反抗心。あのころは、人と同じでない自分を貫くことが出来た。いつまでも少年の心を忘れない、THE HIGH-LOWSらしい歌詞だ。
いつから、まわりと同じであることに安心を覚えたのだろう。
いつから、些細な反抗やいたずらさえできなくなったのだろう。
そういえば、当時は世紀末が近づいていた。
リアルタイムで聴いていた我々はもう、次の世紀末を迎えることはないのだろう。人生でたった一度の、百年ぶりの世紀末…もっとわくわくすればよかったとも思う。
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宇宙の果てに
旗を立てたとしても
宇宙の謎は
わからないまま
≪胸がドキドキ 歌詞より抜粋≫
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宇宙は広い。そのすべてを知るには、人の一生はあまりに短い。けれどそれで良い。
すべてが分かってしまえば面白くないというものだ。
知らないことを知りたいと思う、その心があるうちは、生きることはおもしろい。
一方で、どこか皮肉にも思える歌詞だ。なんだか壮大なことを成し遂げているようで、そこに中身はない。
どこへ向かっているのかも分からないまま、敷かれたレールに乗ってせかせかと働く日々、歯車のように回る社会に「意味はあるのか?」と問われているような気がしてギクリとする。
ときには胸のドキドキに従ってみよう
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子どものころに
わかりかけてたことが
大人になって
わからないまま
えらくもないし
りっぱでもない
わかってるのは
胸のドキドキ
≪胸がドキドキ 歌詞より抜粋≫
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子どものころは、なんだってもっとシンプルに考えることができた。
人に優しくするのは良いことで、好きなものは好きで、嫌いなものは嫌い。それで良かった。胸のドキドキに従って、思うままに生きていられた。
大人になるにつれ、ドキドキやときめきを見失う。どうしてか、胸のドキドキに素直に従えなくなる。
あのころ信じた正義や、なりたかった大人の姿…いつのまに見失ってしまってしまったのだろう。
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答えでもない
本当でもない
信じてるのは
胸のドキドキ
胸のドキドキだけ
≪胸がドキドキ 歌詞より抜粋≫
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いつからか、ドキドキする道よりも正しそうな道を選ぶようになった。それが大人になったということならば、なんだかとても虚しくもある。
けれど、ときには胸のドキドキに従ってみたい。正しくなんかなくても良い、答えが分からなくったって良い。
心の思うままに、思うほうに向かってみたい。
『胸がドキドキ』を聴くと、子どものころに置いてきたまっさらな気持ちを想い出す。心の奥底から、なんだかアツい気持ちが湧いてくる。
繰り返す毎日に疲れ、頑張る気力がどうしても湧いてこない日はある。そんな日は『胸がドキドキ』を聴こう。そしてひとたび、無邪気だったあのころに戻ろう。
胸のドキドキに耳を傾け、思うままに歩いてみよう。そんな日も、たまには良いもんだ。
頑張れ、いつか子どもだった大人たち。
TEXT シンアキコ