エルトン・ジョン
イギリスが生んだ偉大なポップ・シンガーであるエルトン・ジョン。そのエルトン・ジョンの半生を描いた伝記映画『ロケットマン』が日本でも公開となります。画像引用元 (Amazon)
『僕の歌は君の歌(Your Song)』は映画の中でも使用されているエルトン・ジョンの代表曲のひとつです。
最高のラブソングとして長年愛されてきた曲ですが、それだけではない、隠されたストーリーもあるのです。
映画公開前の予習として、歌詞を読み解いていきましょう。
エルトン・ジョンの出世作
『僕の歌は君の歌』は1970年にリリースされたアルバム『僕の歌は君の歌』に収録されています。元々はシングル『パイロットにつれていって』のB面としてリリースされましたが、『僕の歌は君の歌』の方が人気が出たために改めてA面曲としてシングルになりました。
イギリスとアメリカでチャートのトップ10に入り、エルトン・ジョンにとって初の大ヒット曲となったのです。
至上のラブソング
----------------【歌詞和訳】
It's a little bit funny This feeling inside
I'm not one of those who can easily hide
I don't have much money but boy if I did
I'd buy a big house Where we both could live
≪Your Song 歌詞より抜粋≫
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ちょっとヘンだよね 胸の奥で感じていたことなんだけど
僕は簡単に隠し事ができる人間じゃない
お金持ちでもないけど、もしそうだったら、
僕たちが2人で暮らせる大きな家を買うよ
日本ではCMにも使われた冒頭のフレーズです。はっきりと結論を言うわけではなく、しかし嘘のない正直な告白。
もし自分がこうだったら、と仮定の話でいかに自分が相手を大切に想っているかを伝える。とても真摯なラブソングです。
----------------【歌詞和訳】
If I was a sculptor but then again no
Or a man who makes potions in a travelling show
I know It's not much but It's the best I can do
My gift is my song and This one's for you
≪Your Song 歌詞より抜粋≫
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僕が彫刻家だったら、なんて、そんなわけないけど
不思議な薬を売って旅する大道芸人とかね
そんな大それたものじゃないけれど、これが僕にできる精一杯
僕の贈りものはこの歌 君のための歌なんだ
ここでももし自分がこうだったら、と想いを伝えます。しかしあくまで仮定の話です。
今の自分にできることは限られています。それはこの曲を君に贈ることなんだよ、というのです。
シンガーソングライターらしい、そして非の打ちどころのないラブソングです。長年世界中で愛されてきた理由がわかりますね。
「僕」とは誰か?
----------------【歌詞和訳】
And you can tell every body
This is your song
It may be quite simple but now that It's done
I hope you don't mind
I hope you don't mind
That I put down in words
How wonderful life is while you're in the world
≪Your Song 歌詞より抜粋≫
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この歌を君の歌だってみんなに言っていいよ
すごくシンプルな歌だけど、今できたばかりなんだ
どうか気にしないでほしい 気にしないで
僕が詞に込めた想いを
なんて素晴らしい人生なんだろう
君がこの世に生きているって
曲の原題『Your Song』が出てくる有名なサビです。僕が贈るこの歌を「君の歌」にしてもいいよ、と歌っています。君が生きているこの世界はなんて素晴らしいんだろうと。完璧なラブソングですね。
この曲を歌っているのはエルトン・ジョンですから、当然聞いている側はエルトン・ジョンの一人称の歌だと思うでしょう。エルトン・ジョンから誰かに、もしくはファンに対してのラブソングなのだと。しかし、実はこの曲の歌詞を書いたのはエルトン・ジョンではないのです。
『僕の歌は君の歌』に限らず、エルトン・ジョンの曲の多くはバーニー・トーピンという作詞家が手掛けています。エルトン・ジョンは優れた曲を書くシンガーですが、歌詞はほとんど自分では書かないのです。
『僕の歌は君の歌』は、当時一緒に暮らしていたエルトン・ジョンに対し、バーニー・トーピンが書いた歌詞です。デビュー前から2人は作詞・作曲コンビとして曲を作っていました。
まだバーニー・トーピンは作詞家として実績も自信もなく、こんな曲でいいのかと書いたのが『僕の歌は君の歌』だそうです。エルトン・ジョンは一読して詞の素晴らしさに気づき、10分足らずで曲を書いたと言われています。
歌詞の一人称がエルトン・ジョンではなくバーニー・トーピンだと思って改めて読み返してみると、全く違った風景が生まれてくるのではないでしょうか。
エルトン・ジョンの秘められた想い
おそらく映画『ロケットマン』でも描かれているでしょうが、エルトン・ジョンは両性愛者であることをカミングアウトしています。そして、エルトン・ジョンは出会った当初からバーニー・トーピンのことを愛していたのです。
残念ながらバーニー・トーピンは同性愛者ではないため、エルトン・ジョンの想いは実ることはありませんでした。
しかし彼らのソングライター・コンビとしての活動は一時中断したものの数十年に渡り続いています。
エルトン・ジョンはバーニー・トーピンの作詞家としての才能に惚れこみ、またバーニー・トーピンも自分の詞に最も優れた曲をつけてくれるのはエルトン・ジョンだという想いがあったのでしょう。
エルトン・ジョンとバーニートーピン、2つの才能による愛と友情が生んだ至高のラブソング。それが『僕の歌は君の歌』なのです。
TEXT まぐろ
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