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ASKA「L&R」に込められた意味。今は近くて遠い210cm

2019年8月25日。デビュー40周年という節目の日にASKAの脱退が発表され、CHAGE&ASKAは事実上の解散を迎えた。個と個が混ざり合わないことを美とし「&」であることにこだわり続けた唯一無二のデュオ。彼らが残した数々の名曲は、永遠に輝きを失わない。
2009年、CHAGE&ASKAは互いのソロ活動を充実させるべく無期限活動休止を宣言した。

『L&R』は、同年にリリースされたASKAのソロシングル『あなたが泣くことはない』のカップリング曲だ。

歌詞からは、長らく連れ添った相棒・CHAGEへの、そしてCHAGE&ASKAへのまっすぐな想いが感じられるのだ。

CHAGEとASKA

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人のこと笑えるか オマエだって同じだ
つま先で転がった未来を見てただろ
≪L&R 歌詞より抜粋≫
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気の置けない友人同士が、互いをからかい合う。

そんな光景が浮かぶような歌い出しだ。

ASKAにとっての「オマエ」はいつだってCHAGEであり、CHAGEにとっての「オマエ」はASKA。

ほかの誰でもない。代わりはいない。それがデュオの宿命。

ずっとそうして30年、ともに歩んできたのだろう。


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素直に混ざらなかった "LとR"で守った
何のために守った…
守らなきゃ混ざり合う
≪L&R 歌詞より抜粋≫
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CHAGE&ASKAはあくまで「CHAGE」と「ASKA」だった。

溶け合うほどの美しいハーモニーを紡ぎながらも、根底には「個」と「個」がある。

「&」であることを選び、貫いてきた二人のミュージシャン。それがCHAGE&ASKAだ。

現に、これまで何百という楽曲をともに歌ってきた彼らだが、CHAGE&ASKAとして発表した作品において二人の共作はごくわずかだ。

高校時代から友人関係であった二人。

1978年のポプコン(ヤマハポピュラーソングコンテスト)ではCHAGEがグランプリを、ASKAが最優秀歌唱賞を獲得した。

それをきっかけとして、ディレクターから「2人で組んでみないか」と誘われた日から、それとも「チャゲ&飛鳥」を名乗った日から、あるいはデビューした日から…

「CHAGE&ASKA」はいつのときでも、あくまでも「CHAGE」と「ASKA」だった。

CHAGEが欠けても、ASKAが欠けてもCHAGE&ASKAにはならない。代わりのきかない天才が二人揃ってしまったことを、今では悔しいとさえ思う。


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"時間は過ぎて行く"って 少し違う気がする
"時間は消えて行く" ここから先は
≪L&R 歌詞より抜粋≫
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無期限活動休止を決めたのは、二人がともに50歳を迎えた年だった。

アーティストとして、男として、なによりも人間としての“これから”を真剣に考え始めた時期だったのだろう。

「時間は消えていく」…人生に限りはある。

だからこそ、それぞれのやりたい方向へと進んでいくことを決めたのだと思う。CHAGE&ASKAというホームを残して。

互いの才能を認め合ったライバル

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かかわりのない月が 半分で浮かんでる
思い切り矢を引いた 冬の弓張り月だ
≪L&R 歌詞より抜粋≫
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かつてCHAGEは、自分たちを「月と太陽」と例えたことがあった。「月」はCHAGEのことを指す。ファンならば分かるメッセージだ。

かかわりのない月とは「CHAGE&ASKAのCHAGE」ではない、ソロアーティスト「CHAGE」のことだろう。

思いきり矢を引いた弓張り月…CHAGEの才能を、活躍を認め、負けてはいられないというASKAのライバル心を感じるフレーズだ。


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見通しは悪くはない 風は吹いている
オレがわかる オマエをわかる
ちっぽけな言葉の刺は 歩けば落ちる
≪L&R 歌詞より抜粋≫
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不仲だとか、格差だとか、うるさい外野の言葉など関係ない。オレはオマエを分かるし、オマエはオレを分かる。オレたちを見ていれば、いずれまわりも黙る。
二人はシンプルに分かり合える関係だった。

長い時間をともにした相棒、さらに長い時間を過ごした友人。当時のCHAGE&ASKAの間に、ややこしい言葉など不要だったのだろう。

LとR。いつかまた並んだら…

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オマエはLを行く オレはRを行く
いつかまた並んだら Love & Rollさ
≪L&R 歌詞より抜粋≫
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LとR。言うまでもなく二人の立ち位置(LeftとRight)を指している。

二人はずっと、210cmのスペースを守ってステージに立ち続けてきた。

手を伸ばしてもぶつからないが、三歩足を踏み出せばお互いの肩に触れることができる。

それが、CHAGE&ASKAが守ってきた210㎝。

近からず遠からず、絶妙な距離を保ち、歩き続けてきた二人。


この2009年を機に、CHAGEはCHAGEの道を、ASKAはASKAの道をゆくと決めた。いつかまた「&」として並ぶ日のことを、心の奥底にしまって。

“LOVE&ROLL”、ラブソングとロックンロールをかけ合わせた造語であろう。

演歌フォークと呼ばれた独特のスタイルから始まったチャゲアスが、これまで歩んできた道、作り上げた音楽、誰にも真似できない二人だけのハーモニー。

それらすべてが、どんなジャンルにも属さない“LOVE&ROLL”だ。

“いつかまた”が来る日を信じていた。心がざわつくようなニュースに落ち着かない日があっても、それでも二人なら、いつかまた、と。

夢見たステージは叶わなくなってしまったが、CHAGE&ASKAが残した音楽はいつまでも色褪せない。

築いた記録も、歴史も、消えてなくなりはしない。記憶のなかで、ずっとずっと大切に、愛し続けていきたいと思う。

ただひとつ願うとするならば…。

今の二人を隔てる210㎝が「遠く遠く何処までも遠く流れる河」でないことを、いつかどこかで地続きであることを、心静かに願っている。

TEXT シンアキコ

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