眠った情熱を呼び覚ます存在
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錆び付いて 開かずにいた
情熱の扉を
キミなら 風を吹き込み
生き返らせる
≪Fight for your heart 歌詞より抜粋≫
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歌い出しの歌詞は、心の奥に閉じ込めていた情熱が、娘の存在を知り、それまで投げやりな人生を生きてきた結城大地が、父性に目覚める場面とリンクしています。
自分一人なら、どうなっても自由。何事にもやる気を出せずに堕落した生活を送っていた結城ですが、娘のドナーとなることにより状況は一変します。
堕ろしたはずの娘の存在や、自分に向けられる笑顔、そして命を脅かす病気の存在に、結城は何とかして娘だけは助けたいと願います。長いこと自堕落な生活を送ってきた忘れていたはずの情熱を、娘の存在はいとも簡単に蘇らせました。
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燃え尽き 崩れ堕ちてく
景色は見て来たよ
この運命は やっと見つけた
新たな夜明け
≪Fight for your heart 歌詞より抜粋≫
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何をやっても上手くいかず、諦めていた人生に光をくれた存在。しかし、光明が差した所で、再び結城はどん底へ叩き落とされます。
無実の罪を着せられ、誰も自分を信じてくれないという現実。娘である青柳はなの手術を二週間後に控えていた結城にとって、娘の命を助けられないというのは絶望とも等しいものです。
8年前にも、柴崎に脅され、無実の罪をかぶった結城が、娘を守るために命がけで奔走する姿と重なる歌詞です。
通じ合える二人
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Give me a try
Don't need a lie
Give me a sign
僕だけは信じて
Fighting for your heart
I'm fighting for your heart
Tonight
≪Fight for your heart 歌詞より抜粋≫
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「僕だけは信じて」という歌詞に、祈るような思いを感じます。四面楚歌になりながらも信じられる人を頼り、無謀な逃走を続ける姿が印象的なドラマ。
「分かち合える二人」は、はなと結城を彷彿させます。夢の中でだけ会える二人はまさに、秘密も心も共有できる秘密の関係。
さらにはなは、結城が父親だと見抜いている上で彼に接しています。母親にはそのことを明かさず、心の中で父親である結城を思い続ける様はまさに、「分かち合える二人」なのです。
守りたい人を苦しめるという矛盾
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綺麗で どこか冷たい
君の瞳の色
大丈夫 もう泣かさない
僕が守るよ
≪Fight for your heart 歌詞より抜粋≫
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「もう泣かさない」は、病気と闘い、命の終わりを感じながら怯えながら生きてきた、はなに向けたものでしょう。それはまた、母親である青柳すみれに向けたものでもあるのです。
自分と関わったせいで、愛する娘との生活もままならない、不憫な女性。結城を許せず、たった一人ではなを守ろうと奔走する、たくましくも悲しみを湛えた女性です。
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Give me a try
Don't need a lie
Give me a sign
まだ遅くはないさ
≪Fight for your heart 歌詞より抜粋≫
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「まだ遅くはないさ」という言葉には、どうか間に合ってくれという祈りが込められています。結城は二週間、警察からも柴崎たちからも逃げ延びなくてはなりません。どんなに無謀でも、愛娘を守るためには、絶対に捕まるわけにはいかない。
結城の必死さと、一日ずつシールを貼って手術の日を心待ちにしているはなの姿を思うと、胸が締め付けられるような歌詞です。純粋無垢な心に応えようと、結城は度重なる困難にも負けず、大切な人を失ってもなお、前に突き進んでいきます。以前には見られなかった「生きてやる」という意識が、痛いほどに伝わってくるのです。
愛しい人に許しを請う
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Fighting for your heart
I'm fighting for your heart
Tonight
傷ついた心のまま 抱き締めたい
許し合える二人は 世界を変えるから
君のすべて受け入れよう
Tonight, tonight
≪Fight for your heart 歌詞より抜粋≫
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「許し合える二人」は、結城とすみれの姿に重なります。すみれからしてみれば結城は、宿った命を捨てようとした男であり、その後の逮捕や殺人容疑など、彼女の中で父親失格の烙印を押された男です。
さらに、結城の代わりに彼女たちを支えてくれた有馬の存在があります。辛い時、そばにいて力になってくれたのは、父親である結城ではなく有馬でした。だからこそ、すみれにとって、はなの父親は結城ではなく有馬なのです。
結城がすみれに本当のことを話せないように、すみれも有馬に本当のことを話せていません。はなのドナーが実の父親である結城であること。有馬に対して感謝している分、死んだものとしていた結城の存在を、いまだに伝えられないすみれの心情を思うと、胸に迫るものがあります。
夫婦なのに許し合えない結城とすみれ。これから家族になろうというのに結城の存在を伝えられないすみれと、それを問いただすことができない有馬。
異なるそれぞれの歪んだ関係が、結城の逃走や行く末にも影を落とすことを予感させます。すみれが結城を許せば、有馬が結城の存在を許し、すみれのウソを許せば、きっと物事はよい方へ進むのに。それができない難しさを、見事に表現した歌詞が秀逸です。
その先に光はあるか
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Feel my love
Fighting for your heart
I'm fighting for your heart
Tonight
傷ついた心ならば 癒してあげる
分かち合える二人は 世界を変えるから
すべて捨てて 駆け抜けよう
Tonight
≪Fight for your heart 歌詞より抜粋≫
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たとえ世界が敵だらけだとしても、結城がはなのために、その一心でどんな困難にも立ち向かえるように、人はかけがえのないものを守るためなら戦うことができます。
『Fight for your heart』は、そんな人間の強さを歌っていながら、絶望的な状況で光を探す、祈りのような歌でもあります。結城は果たして愛する人の命を守ることはできるのか、悪に屈してしまうのか。
緊迫感漂う旋律と、透明で突き抜ける三浦春馬の歌声が、ドラマと上手くリンクして、作品の世界観を見事に作り上げています。
主演としてしっかりと存在感を示しながら、歌手としての魅力にも溢れる三浦春馬。その歌声をしっかりと刻むことで、ドラマもより一層深みを増すことでしょう。
この機会に、三浦春馬の美声に酔いしれてみてはいかがでしょうか。
TEXT 岡野ケイ