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ガンダム史上最高にカッコイイ主題歌「哀・戦士」に描かれた愛と哀

1979年の放映開始から現在に至るまで、世代を超えて愛され続ける人気アニメシリーズ「機動戦士ガンダム」。中でも、社会現象にまでなったファーストガンダムから、アニメソングとして異例のヒットを記録した「哀・戦士」の歌詞の世界に迫ります。
「機動戦士ガンダム」は、なぜこれほどまでに人々の心を掴むのでしょうか。

その答えを、ガンダム伝説の始まりとなったファーストガンダムの功績と、劇場版「哀・戦士編」の主題歌『哀・戦士』のヒットの理由から考察します。

日本アニメを変えたファーストガンダム


日本アニメの歴史は「ガンダム以前」と「ガンダム以後」で分けられると言っても過言ではありません。

「機動戦士ガンダム」の物語は、地球人が移民したスペースコロニーの一つが、「ジオン公国」を名乗り、地球連邦軍に挑んだ独立戦争を背景に始まります。

主人公アムロの住むコロニー「サイド7」がジオン軍の攻撃に会い、アムロたち住人は、宇宙船「ホワイトベース」に乗り込み脱出します。

そして、ジオンの攻撃をかわすため、父が開発した「ガンダム」に乗り込み戦闘に加わるアムロ。

「ガンダム」が登場するまで、日本のロボットアニメは、正義が悪を倒す勧善懲悪ものが主流でしたが、ガンダムで描かれる戦争では、地球連邦軍とジオン軍、そこに善と悪の境界線はありませんでした。

そして、ガンダムを「モビルスーツ」と呼び、「ロボット」という幼稚さを払拭した事で、ガンダムは従来のロボットアニメと完全に一線を画します。

また、戦争ドラマであると同時に登場人物たちの心理を丁寧に描く人間ドラマであり、その後、アムロたちが「ニュータイプ」としての能力に目覚める哲学的ドラマへと続く展開も、これまでにない新しい試みでした。

ガンダム以前、アニメは子供のための娯楽でしたが、ガンダム以後、アニメは大人をも満足させる芸術へと進化したのです。

アニメの枠を超えたガンダムの音楽


ガンダムは、テレビシリーズだけでなく3部作として映画化もされ、劇場版ガンダムでは、音楽もまた話題を呼びました。

その中で、谷村新司、やしきたかじんがタッグを組んだ第1作の主題歌『砂の十字架』を超えるヒットとなった曲が、第2作「機動戦士ガンダムⅡ 哀・戦士編」の主題歌『哀・戦士』です。

フィンガー5の『学園天国』、シャネルズの『ランナウェイ』などのヒット曲を量産していた作曲家、井上大輔が自ら歌うパワフルなロックナンバー『哀・戦士』は、オリコン最高9位を記録。夜の歌番組にも登場し、純粋なアニメソングとしては異例のビッグヒットとなりました。

今もガンダムファンの心揺さぶる「哀・戦士」

及川光博らガンダムファンを自負するアーティストから、今もなおリスペクトされる井上大輔の『哀・戦士』。

その理由は、楽曲の素晴らしさだけでなく、この曲の中に「哀・戦士編」の世界が凝縮されていたからです。

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哀 ふるえる哀
それは 別れ唄
≪哀・戦士 歌詞より抜粋≫
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「機動戦士ガンダムⅡ 哀・戦士編」は、アムロたちがホワイトベースでサイド7を脱出し、シャアとジオン軍の追撃を受けながら、地球に辿り着いてからの物語です。

戦争で故郷を捨て、父や母を失い、主人公の少年少女たちは哀しみに震えながら、すでにたくさんの別れを経験していました。


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ひろう骨も 燃えつきて
ぬれる肌も 土にかえる
≪哀・戦士 歌詞より抜粋≫
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「哀・戦士編」は、宇宙での戦いを繰り広げる前後の2作と違い、完全に地球での地上戦を描いています。

無重力で戦う宇宙とは逆に、引力のある地球上では、死者の骨と肉体は燃え尽きて土に帰る。

他の2作では感じられない、戦争のリアリティが表現されています。


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荒野をはしる 死神の列
黒くゆがんで
真赤に燃える
≪哀・戦士 歌詞より抜粋≫
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地球に降りてから、アムロたちを乗せたホワイトベースは、北米、中央アジア、ヨーロッパ、南米と旅して行きます。

ジオン軍の攻撃により荒れ果てた大地。そこに容赦無く迫り来るジオンのモビルスーツ、ザク、グフ、ドムはまさに死神です。

それを迎え撃つガンダム。ガンダムが撃破したジオンのモビルスーツの爆発で、大地が真っ赤に燃え上がる。

映像なしでも、「哀・戦士編」のスピード感溢れる地上戦が眼に浮かぶような歌詞です。


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新たな 時をひらくか
生き残る 哀 戦士たち
≪哀・戦士 歌詞より抜粋≫
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アムロたちホワイトベースの乗組員のほとんどは、行きがかり上、戦わざるを得なくなった民間人です。

彼らは、なぜ自分たちが戦わなければならないのか、それでも戦わなければ次の瞬間には死んでしまうかもしれない、だから生き残るために戦い続ける、という矛盾を、常に抱えていました。

戦場では、哀しみと無縁の戦士などいませんが、彼らは地球連邦軍の中で、最も哀しい「哀戦士たち」だったのです。


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名を知らぬ 戦士を討ち
生きのびて 血へど吐く
≪哀・戦士 歌詞より抜粋≫
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ついこの間まで普通の暮らしをしていたアムロたちは、もちろん、人を殺した事などありません。戦争に巻き込まれ、最初はがむしゃらに戦ったいたアムロたち。

しかし、モビルスーツではない生身の敵と対峙した時、それが殺人である事に気づき、次第に心が病んで行きます。

「哀・戦士編」は、そんな様々な葛藤の末、アムロたちが兵士としての自覚に目覚め、宇宙での戦いに向かって行くまでの、成長の物語でもありました。


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死にゆく男たちは
守るべき女たちに
死にゆく女たちは
愛する男たちへ
≪哀・戦士 歌詞より抜粋≫
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「哀・戦士編」では、男女を問わず、多くの戦士たちが命を落とします。

地球連邦軍では、アムロを救うために特攻したリュウ、ガンダムを守るために犠牲となった補給部隊のマチルダ。

ジオン軍では、部下たちの生活の安定を思って戦ったランバ・ラルとその妻ハモン、そして、幼い弟たちを養うため、ジオンのスパイとなった民間人のミハル。

人は皆、守るべきものたちへの「愛」のために戦い、命を落とし、後には「哀」だけが残る。

『哀・戦士』には、たとえ宇宙戦争の時代になっても、戦争という行為が生み出す悲劇と虚しさは何も変わらない、というメッセージが込められていたのです。

2019年、「機動戦士ガンダム」は、誕生から40周年を迎えました。

戦争の中の「愛」と「哀」という不変のテーマを唄った『哀・戦士』は、日本アニメ史の金字塔「機動戦士ガンダム」を象徴する主題歌として、これからも歌い継がれて行きます。

TEXT 岡倉綾子

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