京都アニメーション大賞・受賞作
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※本記事は、一部アニメのネタバレを含む箇所がありますのでご注意ください。
『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は、2014年に開催された「第5回京都アニメーション大賞・小説部門」にて大賞を受賞している作品である。
2010年の第1回目から「京都アニメーション大賞」は開催されているが、大賞を受賞しているのは、2019年までで本作だけなのだ。
主人公のヴァイオレット・エヴァーガーデンという少女は、戦争で「武器」として戦っていた。
戦場で両腕を失い、義手を付けることになる。後見人である、クラウディア・ホッジンズの会社・C.H郵便社で働くようになった。
ギルベルト少佐が、ヴァイオレットに残した「アイシテル」の言葉の意味を探すため、「自動手記人形」として様々な人と触れ合うようになる。
ヴァイオレットが初めて出逢う言葉ばかり
----------------ヴァイオレットにとって、C.H郵便社の自動手記人形として駆け出しだったころは、知らない言葉ばかりで、いろいろな人の思いをたくさん聞いて覚えるしかなかった。
知らない言葉を 覚えていくたび
おもかげのなか 手を伸ばすの
だけど一人では 分からない言葉も
あるのかもしれない
≪Sincerely 歌詞より抜粋≫
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幼い頃に、ギルベルト少佐に拾われ、言葉・文字などを教えてもらったヴァイオレット。
しかし、ヴァイオレットは戦場で戦う「道具」だと思っていた為、戦場以外で使うことの無い言葉の意味は理解できていなかったのだ。
手探りの中で、知らない言葉の答えを探していくうちに、ギルベルト少佐と過ごした戦場の記憶が思い出されるのだろう。
「一人では 分からない言葉」=ギルベルトが、ヴァイオレットに残した「アイシテル」という言葉の意味。
----------------ヴァイオレットは、ギルベルトと離れてしまったので、さよならは苦い経験となってしまった。
さよならは 苦くて
アイシテルは 遠いにおいがした
例えようのない この想いは
とても怖くて だけど とても愛おしくて
≪Sincerely 歌詞より抜粋≫
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「アイシテル」とギルベルトがくれた言葉と共に、愛をくれた人も遠い距離になっていることが分かる。
ヴァイオレットにとって「アイシテル」の意味が分からず、心の中にある“感情”が何かを探している葛藤のようなものを感じる。
不器用なヴァイオレットの気持ちが現れているようだ。
サビはヴァイオレットの心の中を表現している
----------------たくさんの人と出逢い、触れ合うことで、ヴァイオレットは、自身の感情が理解できなくなってきているから泣いているのだろう。
わたし なんで 泣いているんだろう
心になんて 答えたらいい?
言葉はいつでも 語るでもなくて
そこにあるばかり つのるばかり
わたしは あなたに 会いたくなる
≪Sincerely 歌詞より抜粋≫
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自身の思いは、人に語るものではなく、心の中につのっていくばかりだ。
会うことができないギルベルトに会いたい気持ちが強くなっていることが分かる。
これまでしてきたことに気づいた
----------------自動手記人形として、たくさんの人の代筆を行うヴァイオレットは、徐々に仕事にも慣れてきているようだ。
きれいな言葉を 覚えていくたび
自分のことが 嫌になりそう
だけど背を向けちゃ いけない言葉も
あるのかもしれない
≪Sincerely 歌詞より抜粋≫
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その中で、きれいな言葉を覚えていくことも増え、戦場で生きてきたヴァイオレットは、「武器」として、戦争でたくさんの命を奪ってきた過去と向き合う決意をしていることが分かる。
人々の言葉に触れて気づく感情
----------------戦争で失った命は、悲しく、冷たいものもあったことだろう。
かなしみは 冷たく
ありがとうは ぬくもりに色づく
形のないもの 触れるたびに
あなたの声が 胸のおくで 響いているの
≪Sincerely 歌詞より抜粋≫
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自動手記人形としての代筆によって依頼者・手紙を受け取った人物から「ありがとう」と言ってもらえて、ひとの心の温かさを知ったヴァイオレット。
「形のないもの」=人の感情を指している。
形のない人の思いを代筆を通して伝えることで、ギルベルト少佐の声が、ヴァイオレットの胸の奥から聞こえてきているようだ。
代筆をする中で、ヴァイオレットが、他人の気持ちを少しずつ理解し、成長をしていることが分かる。
「アイシテル」には、家族の愛、恋人への愛などたくさんの愛があった。
手紙を通して代筆をしてきたヴァイオレットは、自身の探す「アイシテル」の意味も理解しつつあるのかもしれない。
ギルベルト少佐に届きますか?
----------------ヴァイオレットは、他人の手紙を代筆していたけれど、自身の手紙は書いたことがありませんでした。
書きかけてはやめた
あて先のない手紙は
風に揺れる
届けたい人の街まで
始まりの 終わりを 伝えるために
生きること やめないこと
あなたに 今日を 誇れるように
≪Sincerely 歌詞より抜粋≫
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代筆を経験し、ヴァイオレットは、ギルベルトに手紙を書こうとしているのだ。
自身の気持ちは、上手く伝えられないことが分かる。
ギルベルトがどこにいるか分からないため、手紙を書いても届くことはない。
「アイシテル」の意味を理解しつつあるヴァイオレットは、「アイシテル」の意味を探すのだ。
そして、いつか会えることを信じて、ギルベルトに「武器」ではないヴァイオレットを見てもらうために今日も誰かの代筆を行い、生きていく。
タイトル「Sincerely」の意味とは?
タイトルの『Sincerely』は、“心から“や“真心を込めて”という意味になっている。
海外で「Sincerely」は、ビジネスのメールなどの結びとして最も一般的に使われている言葉だそうだ。
『ヴァイオレット・ガーデン』は、手紙を通して人と人が繋がる物語である。
口で言いづらい言葉であっても「手紙」でなら、相手に伝えることができる。
だけど、自分では上手く伝えられないから、「自動手記人形」であるヴァイオレットたちが代わりに手紙を代筆し思いを伝えるのだ。
『Sincerely』は、代筆をする人と依頼者、届けたい相手を繋ぐ言葉である。
真心を込めて書かれた手紙は、届けたい相手に思いが伝わることだろう。
作詞:唐沢美帆 作曲:堀江晶太がYouTubeにて MV Full Sizeが公開中。
是非、聴いてみて欲しい。
TEXT pooh_nm77