最強の4人組GLAYとは?
GLAYは、TAKURO(G)、TERU(VO)、JIRO(B)、HISASHI(G)の4人からなるツインギターのロックバンド。
北海道出身。1994年にシングル「RAIN」でデビューし、2019年で25周年を迎えた。
日本を代表するロックバンドであり、特に1990年代にはミリオンヒットを次々と飛ばし、J-POP界を牽引した。
今でも最もライブ・チケットの取りづらいバンドの一つとして名前が挙がっている。
一時期、JIROとHISASHIが妖艶なメイクと華やかな衣装でパフォーマンスして、ヴィジュアル系と呼ばれたこともあった。
二人とも素でのイケメンぶりとはまた違った妖艶さでオーディエンスを魅了していた。
特にJIROは少年のような要素を持った素顔とメイクしたときの時の妖艶さは別人のようであった。
なんといっても、GLAYのパフォーマンスで特筆すべきなのは、1999年の7月31日に幕張の野外特設会場で行われたライブだ。
そう、20万人ライブだ。
このライブは、20万人ものオーディエンスを動員し、記録にも記憶にも残っている伝説的なライブなのである。
20万人ってどのくらいの規模か想像がつかない人が多いと思う。
なので、例えをあげると、2019年9月20日、ラグビーワールドカップ2019日本大会の日本対ロシアの開幕戦が行われたのが東京スタジアム。
この会場の総座席数が49,970席。つまり超満員の東京スタジアム4つ分もの人数がGLAYのライブに集まったのだ。
そもそもこの規模感は、日本の音楽史上初。
ということは、事前の参考資料もないわけだ。
そんな中で、どのようにしてこれだけの人数を幕張まで輸送し、ライブを運営したのか?
その疑問を紐解きながら、日本の音楽史を変え、20万人ものオーディエンスを熱狂させた伝説のライブを紹介したい。
午前10時半開場 午後4時半開演
まず20万人ものオーディエンスが会場に入るだけでも一大事だ。
午後4時半に開演するライブだったが、会場は午前10時半~11時だったとされている。
本番のおよそ6時間前の開場だったのだ。
6時間前の開場。これだけの人が動くなら無理もない。
当然だ。しかし、同時に疑問に思う人が居るだろう…。
最初の方に入場したファンは、いったい現場で6時間も何をしていたのか? と。
ここがGLAYらしさなのだが、この空白の6時間を楽しんでもらうために、粋な心遣いをしたのだ。
その心遣いとは、会場近くのホテルに作られたスタジオから、GLAYのメンバーが生放送で登場するトークライブが流されていたのだ。
なんというサービスぶり!
GLAYの4人は日本の音楽界の歴史を塗り替えるライブを前にして緊張でガチガチになっていたのではなかった。
むしろ、わくわくして嬉しくて仕方がないと感じている雰囲気が開演前から伝わってくるエピソードだ。
開演前から「わくわくする時間」をオーディエンスと共有しようという気持ちも、開演前から大いに会場を盛り上げていたことだろう。
臨時シャトルバス600本!
20万人のオーディエンスは桁違いの輸送体制で開場まで行った。
JRの臨時便は39本、最寄りの海浜幕張駅では通常10人の駅員を150人に増員して対応したそうだ。
また臨時シャトルバスは600本に及び、ツアーバスも500台。
幕張の街は大混雑だ。
また、LALとタイアップして、GLAYの4人が機体に描かれたGLAYジャンボが羽田と札幌、羽田と函館間を飛んだ。(時期によって発着空港が違う)。
20万人ライブの時期には羽田と函館間で運航されていたから、GLAYジャンボでライブに来た人も多かっただろう。
GLAYジャンボに乗ると記念のGLAYグッズがプレゼントされ、機内ではGLAYのオリジナルビデオが流されたので、ファンは大喜びだ。
スタッフ総数7500人で運営
当日のスタッフは7500人。
7か所の救護施設に配置された看護師だけでも104人もいた。
警備員は3000人である。
警察官320人と消防士80人が待機していた。
まるで映画のような話だ。
ライブの進行を振り返りながら、すべての曲でオーディエンスを熱狂させたのはいうまでもないが、特に印象的な3曲をライブの模様を交えて紹介してゆく。
歴史が変わる瞬間に「サバイバル」
ライブでは最初の数曲を、会場の中央に作られた円形の小さなステージで演奏したが、この『サバイバル』から会場前面のステージで演奏した。
TERUが「思いっきり激しいナンバーで行きたいと思います!この暑さをぶっとばぜ!」と叫んだと同時に始まった『サバイバル』。
----------------この歌詞のように、空は蒼く澄み渡っていて(GLAYマジックでこの天気だった)、光がさしていた。
どこまでも広がる
空に光がさして、
地球の最後の日になって
欲望のタガが外れたら、
アダムとイヴになれる
≪SURVIVAL 歌詞より抜粋≫
----------------
オーディエンスは歴史の変わる瞬間にいた。
今までは、誰もが「ひとつのバンドが、ひとつの会場で20万人オーディエンスを集めてライブをするなんてできっこない」と思われていた。
そして、GLAYがそれを成し遂げたことによって歴史が変わる。世界が変わる。新しい世界。
新しい世界の最初の瞬間に立ち会っているなんて、まるで人間の存在する世界の最初の瞬間に立ち会っていたアダムとイブのようではないか。
”どこまでもGLAYの音楽、GLAYの世界を極めていきたい”という欲望のタガが外れたかのように熱狂するGLAYとオーディエンス。
冒頭からライブは激しく熱を帯びていた。
究極の復縁応援ソング「HOWEVER」
このライブのステージは全長145メートルで、40メートルの高さの鉄骨で組まれた、幕張の高層ビル群を模したかと思われる舞台装置を背にして演奏する演出になっていた。
まるで近未来の街を切り取ったかのようだ。
そんな近未来の街の中、GLAYの4人は楽しそうに、幸せそうに音楽をやっていた。
TERUとTAKUROは顔を見合わせて何度も笑顔を交わした。いつもはクールなJIROも、思わず笑顔がこぼれている。
”この日を起点に新たな一歩を踏み出そう”と決意に満ちたHISASHIだけがクールさを保っていた、ライブ前半…。
「今日という日をこの曲を聴いて思い出して欲しい」というTERUのMCから始まった『HOWEVER』。
美しいハイトーンボイス。
その輝きが最高潮に達したとき、TERUの後ろの舞台装置の隙間から、急に太陽の光が差し込んできて、放射線状の大きな光を放った。
まさに、TERUの歌に、文字通りの輝きを添えた瞬間。奇跡のようだった。
このライブでは後半、「天国で見守ってくれている先輩」に曲がささげられた。
その先輩とはhideだ。演奏された楽曲は『MISERY』だ。GLAYにとっての歴史的な一日にふさわしい一曲だ。
「天国で見守ってくれている先輩」は彼らのすぐ近くまで来ていたのかもしれない。
オレンジ色の太陽の光を浴びながら歌うTERUを見ながら、そう感じたファンは多かっただろう。
そして、尊敬してやまないhideから生前に褒められた楽曲『HOWEVER』が披露された。
----------------この歌は復縁を応援する歌としても人気なのだそうだ。
やわらかな風が吹く この場所で
今二人ゆっくりと歩き出す
≪HOWEVER 歌詞より抜粋≫
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今二人でゆっくりと歩き出しているのならば、仲の良い恋人同士のようにも思えるが…。
しかし、曲のタイトルが『HOWEVER(けれども)』なのだ。
二人は「それぞれが別の方向」に歩き出しているのかもしれない。
----------------言葉ではどうしても伝えられなかった愛しい想い。
絶え間なく注ぐ愛の名を 永遠と呼ぶ事ができたなら
言葉では伝える事が どうしてもできなかった 愛しさの意味を知る
あなたを幸せにしたい… 胸に宿る未来図を
悲しみの涙に濡らさぬ様 紡ぎ合い生きてる
≪HOWEVER 歌詞より抜粋≫
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”あなたを幸せにする未来図を涙でぬらさないようにしよう”と決意しているのなら、やっぱり二人は別れてしまったようだ。
それでも「あなたを幸せにする未来図」を胸に宿していて、「あなたへの愛」は今も絶え間なく注がれているのだ、永遠に注ごうとしているのだ。
----------------「やっぱり二人がいいね」というシンプルだけどストレートに強いメッセージを伝えてくる言葉がいい。
愛の始まりに心戸惑い 背を向けた夏の午後
今思えば頼りなく揺れてた 若すぎた日々の罪
それでもどんなに離れていても あなたを感じてるよ
今度戻ったら一緒に暮らそう やっぱり二人がいいね いつも
≪HOWEVER 歌詞より抜粋≫
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人気の復縁応援ソングであることにも充分うなづける。
20万人ライブでは、TERUは目を閉じてこの曲を熱唱した。
「心を込めて」などという表現では足りない。魂がこもっていた。
このライブで最も印象的なシーンの一つといえるだろう。
愛に溺れる二人の情熱「誘惑」
----------------いつしか日は傾き、オレンジ色の夕日を浴びながら演奏された「誘惑」。
嘘も真実も駆け引きさえも いらない
今はオマエが誘うままに Oh 溺れてみたい
≪誘惑 歌詞より抜粋≫
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DVDを見ているだけで、すっかり「20万人が一つになった世界」に溺れてしまった。
----------------恋の相手は結婚指輪を外して愛し合う既婚者なのかもしれない。
薄情な恋と Oh 指輪の跡が消えるまで
闇に 加速する 俺を酔わす
≪誘惑 歌詞より抜粋≫
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でも、それさえもどうでもよくなるくらい恋愛に溺れる加速する感情が描かれている。
ライブではツインギターのかっこよさがオーディエンスを煽って、まさに最高潮だ。
GLAYの輝きは変わらない
伝説のライブは1500本の花火で終わった。
終演時間が午後7時半のライブ会場から最後のオーディエンスが出ることができたとき、既に日づけが変わっていたという。
あの日から20年以上が経った。
しかし、GLAYの輝きは少しも変わっていない。
11月からデビュー25周年を記念した大型アリーナツアーが始まる。
TEXT 三田綾子