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RHYMESTER「Future is born」に刻まれたヒップホップの過去と未来

結成から30年にわたり日本のヒップホップシーンをリードしてきたRHYMESTER。『Future is born』はヒップホップの過去から始まり、未来への希望を歌った曲です。その想いを歌詞から読み取りたいと思います。
RHYMESTERの『Future is born』は2017年リリースのアルバム『ダンサブル』のリード曲です。

そして、この曲にはヒップホップの生まれた瞬間と未来への希望が実に見事なライム(韻)で紡がれているのです。

その歌詞の世界に迫ってみましょう。

アルバムのリード曲


『Future is born』は2017年にリリースされたRHYMESTERのアルバム『ダンサブル』に収録されています。

アルバムのリード曲としてYouTubeでMVが公開されました。

人気プロデューサーのmabanuaをフィーチャリングし、アルバムタイトル通りポップなダンスビートが特徴の曲です。

RHYMESTERの曲は緻密に練り込まれた歌詞とライムが大きな魅力です。

そして『Future is born』はヒップホップの歴史から未来を見据えた壮大な曲なのです。

ヒップホップが生まれた瞬間


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バック・トゥ・1973年夏 まさしく闇に灯った松明
人々が忘れ去っていた街の片隅で…… 誰かが歌い出す
壁に残されたでっかいタグ
まるでケンカ腰の危ないダンス
大人のガイダンス抜きで生き残った
異端児たちの媚びないスタンス
≪Future Is Born feat. mabanua 歌詞より抜粋≫
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「1973年の夏」。この年って一体何があったのでしょうか??

実は1973年はヒップホップにとって非常に重要な年なのです。

この年の夏、あるパーティーでクール・ハークというDJが同じレコードを2枚使ってビートを繋ぐというプレイを開発します。

これが、今に至るDJの元祖と言われています。

ヒップホップのビートは基本的にファンクやR&Bなどの曲からドラム部分を抜き出し、繋ぐことで作られています。

クール・ハークによるこの発想やアイディアがヒップホップの基礎となったのです。

この冒頭の歌詞では、ヒップホップ黎明期のDJたちによる新しい音楽の創造について歌われているのです。

新しいアイディアが未来を創る


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レコードプレイヤー2台がタイムマシン
めぼしいブレイクは二、三倍増し
歌は台無し!でもお構いなし
やがてその空き地に花開いたシーン
マイクを通した新たなメディア
ライムで書き足してくウィキペディア
近い将来世界を変えるアイディア
握られていたその手には そして未来は今さ 今が未来!
≪Future Is Born feat. mabanua 歌詞より抜粋≫
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「皆が盛り上がる部分だけを繰り返しプレイすればずっと盛り上がりが続くじゃないか」

クール・ハークが同じレコードを2枚使ったのは、このように考えたからだそうです。

盛り上がるカッコいいフレーズは何度も繰り返し聞くことができる。

でも、元々のレコードにあったボーカルは寸断され、プレイされなかったりもする。

しかしそれが聞いたことのないビートやグルーヴを生み出したのです。

そしてそのビートにMCによる言葉が乗ることで、ヒップホップという新しい音楽が産まれることになったのです。


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例えば今日のパーティナイト
一見していつもと変わりない 一晩にも高まっちまう期待
あの若者たちみたいに 何を残せるか次の時代に
どんな夜明けが来るっていうんだ一体
この目で見・て・み・た・い!
≪Future Is Born feat. mabanua 歌詞より抜粋≫
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当時のクール・ハークや他のDJたちに、果たしてこれが数十年後も続く新しい音楽だという意識があったでしょうか。おそらくそんなつもりはなかったのだろうと思います。今が楽しい、面白い。そんな気持ちでやったことが時代を変えてしまったのではないでしょうか。

それでは、今盛り上がっているパーティーの中から新しい音楽が生まれないとは限りません。現在を生きる我々も、1973年の彼らのように何かを生み出すことができるんじゃないか?そこから未来が生まれる(Future is born!)こともあると信じてみようじゃないか!

そんな覚悟が歌われているのです。

過去と現在、未来を繋ぐ


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Future is born (Future is born)
今日のぼくらが明日の創造主かもね
Future is born (Future is born)
今もどこかで奇跡が進行中かもね

憂鬱な日々 繰り返すTroubles
もう 抑えきれない このBeat
夢にまで見た世界 まだ見ぬその先
Future is born
≪Future Is Born feat. mabanua 歌詞より抜粋≫
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1973年の夏からすべてが始まりました。

そこから生まれた全く新しい音楽であるヒップホップを聞き、影響を受けたアーティストたちが世界中に溢れています。

もちろんRHYMESTERもそのひとつです。

そして、結成から30年を迎えようというRHYMESTERにとって、自分たちがまた次の新しい世代に文化や音楽を伝えていくことは大きな使命だと考えているはずです。

『Future is born』はヒップホップの伝道者として、RHYMESTERが未来を見据え、未来を担う世代に対する希望を歌う曲でもあるのだと思います。

1973年の夏に思いを馳せながら、踊りまくりましょう。

TEXT まぐろ

宇多丸(Rap)、Mummy-D(Rap / Total Direction / Produce、作曲家としての名義は「Mr. Drunk」、また別参加ユニットに竹内朋康との「マボロシ」がある)、DJ JIN(DJ / Produce、別参加ユニットにDJ集合体「breakthrough」、インストゥルメンタルバンドCro-magnonとの「Cro-Magnon- Jin」がある)···

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