映画「ボヘミアン・ラプソディー」の劇中歌
Queenのボーカルであった故フレディマーキュリーにスポットを当て、グループ内の友情、どのようにして彼らの歌が出来上がったのか、また彼自身のセクシャリティに関することまで詳しく描かれていた映画「ボヘミアン・ラプソディー」はまだ記憶に新しい方も多いハズだ。
今回の記事では、劇中の中でも歌われていた『Radio ga ga』の歌詞の世界感・そしてフレディ・マーキュリーの生き方を照らし合わせることでみえてきた、人生の中で最も大切なことについて紹介していきたい。
ラジオは秘密を共有してくれる秘密兵器
----------------【和訳】
I'd sit alone and watch your light
My only friend through teenage nights
And everything
I had to know
I heard it on my radio
≪Radio Ga Ga 歌詞より抜粋≫
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いつも一人で君のライトを見ていた
10代の僕の唯一の友よ
知らなければいけないことはすべて
僕はラジオから教わった
ラジオよ
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同曲は、ドラムのロジャー・テイラーが作詞作曲をしているのだ。
テレビのように何人かで囲み賑やかな印象とは対照的に、一人でいる時に聞くことが多いラジオ。
特に限られた娯楽しかない10代にとってラジオは、内緒話しを聞くような自分だけに語ってくれるような、秘密を共有しているような存在ではなかっただろうか。
しかしここだけ聞くと、ただラジオが好きだという歌にしか聞こえないかもしれないがそうではない。
メンバーだからこそ、フレディがわかる
----------------【和訳】
So don't become some background noise
A backdrop for the girls and boys
Who just don't know or just don't care
And just complain when you're not there
You had your time, you had the power
You've yet to have your finest hour
Radio.
≪Radio Ga Ga 歌詞より抜粋≫
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だからただの背景のノイズにはならないで
少年少女のBGMに
何も知らない何も感じない
なくなって初めて文句言う連中の
輝いたときも力を持っていたときも
終わりじゃないまだまだこれからも
ラジオよ
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ラジオは孤独だ。
いつも一方通行の思いから始まり、沢山のことを伝えようとしているのにこちらから周波数を合わせないとただのノイズになってしまう。
それはミュージシャンに対しても同じだ。
どれだけ叫び気持ちを伝えようとしても、受けとる側が何も感じなければ、「ただの背景のノイズ」だ。
そして、ここで出てくる「ラジオ」に注目して欲しい。
この「ラジオ」を、「フレディ・マーキュリー」と置き換えるとさらに歌詞に深みが出てくるのだ。
フレディは、愛を求め愛に裏切られたことがあった。
それは、自身の元恋人からも、ゲイであることを世間に暴露されてしまった。
それでも諦めず真実の愛を求めていたフレディ。
そんな彼を誰よりも長く見守り、一番側にいたのはまちがいなくメンバーだ。だからこそ、わかることがある。
作詞を担ったドラムのロジャー・テイラーは、この「ラジオ」に彼の姿を投影させつつも作ったように思えてならないのだ。
----------------【和訳】
Let's hope you never leave old friend
Like all good things on you we depend
So stick around cos we might miss you
When we grow tired of all this visual
You had your time you had the power
You've yet to have your finest hour
Radio
≪Radio Ga Ga 歌詞より抜粋≫
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君だけは旧友を忘れたりしないで
今でも懐かしく思う時間のように
いつもそばにいて恋しくなるから
映像に疲れる時がきたら
輝いた時も力を持っていた時も
終わりじゃないまだまだこれからも
ラジオよラジオよ
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時代は巡っても…
新しいものが持て囃され、古いものが置き去りにされていくようなそんな時代だが、それでもなくならないのは、必要としている人間がいるから。“映像に疲れる時がきたら”というのは、受けとる側と与える側どちらともいえるだろう。MVを見てみると、小さな飛行船にメンバー全員で乗り未来へ訪れているようにとれる映像がある。そこにはちゃんとラジオもある。
もし今MVのように、未来に行ける飛行船に乗ることができ、少し先の未来を覗くことができたなら、「QUEEN」の歌はまだそこにあるはずだ。
ひっそりと、けれどもそこにいることが使命であるかのように置かれたラジオのように。
TEXT 紺 うめこ