未知の感情に戸惑う少女たち
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愛から生まれた一冊の本には
まだ書かれていない"恋"という一文字
退屈な 15 ページだった
次をめくると息が詰まり溺れた
文字にできないこの感情に
今日も理不尽に打ちのめされた
≪乙女どもよ。 歌詞より抜粋≫
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「愛から生まれた一冊の本」とは、まさに新たな生命=乙女たちそのものだ。
人生という名の本を一ページずつめくっていくと、ある日、まだ見たこともない「恋」というページに遭遇する。
未だかつてない感情に、どうやって向き合ったらよいのか、どんな風に接したらよいのか分からない不安や戸惑いに「溺れ」「打ちのめされた」少女たち。青春の幕開けだ。
恋も異性も知らない、少女だった自分から、大人の女性へと、一つ階段を上る。誰もが通る道を、瑞々しく描かれた部分だ。
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潔癖だった知りたくなかった
この苦しさの正体とか
だけど
キズついても 読むことをやめない
キレイじゃいられない
君を知るページ
荒ぶれ乙女たち 抗え乙女たち
痛みを知ってゆけ
栞はいらない
≪乙女どもよ。 歌詞より抜粋≫
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恋や異性を知る前の自分とは明らかに違う自分になっていく。
誰かを思って胸が苦しくなったり、悶々としたり。
そんな感情が、汚らわしく感じてしまうのも、少女特有のものだ。
戸惑いながらでもいいから一歩進む。そうして一つずつ、傷つきながら大人になっていくのが、健全な道なのだ。
「痛みを知ってゆけ」という言葉に、少女たちへのエールが詰まっている。
清純であるが故の苦悩
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付き合ったとして何をすればいいの?
"あれ"もしなきゃダメなの?嫌だよ無理だよ
純情という正義に悩み
今日も"異性"に振り回されてる
≪乙女どもよ。 歌詞より抜粋≫
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体は徐々になってゆくのに、心はまだ純情で、汚れを知らない。
だからこそ、男女の交際にも恥じらいや抵抗が生じてしまう。
純情を正義と歌っているところが非常に面白い。たしかに、恋も知らない少女にとって、汚れは悪で、清純は正義であろう。
自分とは違う体、考えを持ち、心がざわつく「異性」という存在に興味を引かれつつ、男女の関係が怖くて踏みとどまっている様が目に浮かぶ。
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それでもきっと誰かを愛して
次のページをめくるのだろう
決して
悪ではない 変化を恐れない
過去に笑われても中指立てろ
胸張れ乙女たち 戦え乙女たち
涙ばかりじゃない
ハートは温かい
≪乙女どもよ。 歌詞より抜粋≫
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誰しも、最初は怖いものだ。そして、清純を脱ぎ捨てる時こそ慎重にしなくてはならない。
褪せることはないけれど、汚れることは決して悪いことではなく、大人になるための必要な変化なのだと、優しく少女たちを諭すような歌詞が印象的だ。
周りから何をいわれようと、恐れながら立ち向かえばいい。
「戦え」といいながら、未知の世界へ足を踏み出そうとする少女たちの背中をそっと押すような、温もり溢れる歌詞だ。
成長する限り、苦悩はある
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読み進めればまた違う痛み
慣れないけれど楽しめそう
今日も乙女たちは恋に落ちてゆく
すれ違いをしたり見つめ合えたり
今はまだ知らない出会ってすらいない
誰かと結ばれる明日があるかも
だから
キズついても 読むことをやめない
キレイじゃいられない
"恋"を知るページ
荒ぶれ乙女たち 抗え乙女たち
痛みを知ってゆけ
栞はいらない
さあ次のページへ
≪乙女どもよ。 歌詞より抜粋≫
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『乙女どもよ。』の中で、汚れを知らない少女たちは殻を壊し、大人の女性への階段を上がっていく。
異性や恋、性など、思春期の少女たちには刺激が強く、恐れおののいてしまうことばかりが待ち構えている。
しかし、人生は長い。生きていれば、思わず逃げ出したくなるようなことはたくさんあるのだ。
ページをめくる度に新しい刺激に出会い、新しい自分に生まれ変わってゆく。
そんな、変わることのない人生という普遍的なものまでも、一曲の中に込めてしまうところに、とてつもない才能を感じる。
TEXT 岡野ケイ
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